ひとつの仕事、ひとつの魂
『キーンコーン、カーンコーン』
「お疲れ様でした」
「ああ、本当に疲れた」
1分を残して会議終了。
昼休みだー!腹減ったー!
「議事メモ、課長に送ってあります。あと、印刷はこっちです」。
「助かる。ありがとな。飯前にタバコしに行くけど、行くか?」
「あ、行きます」←長いものに巻かれます。
飯食ってからだと、混んでて吸えないしな、と話しながら、エレベーターに乗り、屋上に出る。肩身が狭い喫煙者の秘密基地は、今日もヤニ臭い。
あれ?明日、タバコ室の片付け当番、課長だ。明日、この人、出張だから「あ、明日俺、当番か」だよね。
「俺、代わりますよ」
「悪い。交換してくれ」
さらさら髪&イケメンスマイルに、くたびれた作業着&作業靴。エンジンオイルとヤニの匂い漂うイケメン課長は、身長も185ある僕と変わらない。←あ、僕、爽やか系高身長イケメンです。作業着も香り付き柔軟剤で洗ってます。
「さっきはやってくれたな」
「お前んとこ、何してんだよ。あれ、わかってただろ?」
「やっこさんが定年退職まで、てー付けられなかったんだよ」
「そういうのが会社をダメにすんだって!」
「わかてっけんど、やれねーのも分かれよ!」
「わかっけど!」
調達部の課長、うちの課長と一緒にサーキット行くし、同好会作るぐらいに仲が良い。←車の趣味自体は全く違う。
あ、当番変更って掃除当番ボードに書いておこう。忘れそう。
「ほんと、疲れた」
「な。だりー。戻りたくねー」
「うちの若いのの前で弱音吐かないでくれよ」
「今更だろうが。な、我らヤニ友よ、今日中に議事録、発行出来そう?」
「あ、はい。今、課長確認中です」
あっぶない。会議中に準備しといてよかった。
ため息ともつかない煙を空に吐き出す。3人のタイミングぴったりで煙がひとつになった。
「あっはは。煙たなびく秋の空」
「そのまま、空に昇って、雲になったりしてな」
「ヤニ臭い雨を降らせるとか、いいな。それよりは、空に昇る龍になってほしいね」
「洗濯もん、全滅か。厭煙家が恐ろしいな」
「厭煙家がドラゴンスレイヤーを振り翳そうと、我ら愛煙家は死ぬまでタバコを口に咥えているのが誇りです」
生産技術の課長は左胸を指して、電子タバコを咥えているけど、普通に奥さんに怒られると思う。
「じゃ、メシ行くか」
「はい」
さあ、メシ食ってあと半日。
あー、空が青い。




