表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Guys with the Dragon Tattoo   作者: Coppélia
2月 A Flower is not Flower
29/64

唐紅のレクイエム

薄っすらと笑っている感覚が、変わらずにある。

触れると「理解」させられそうで、頬に伸びる手が止まる。


お前の死に顔なんて見たくないのに。

まだ、まだ話し足りないし、聞き足りない。なんか、言えよ。


P.S. please if you get a chanse put some flowrs on Algernons grave in the bak yard.


胸に置かれた本には、付箋紙が貼られていた。


付箋紙があるページの最後に、ただ、らしくない、ブレたシャーペンの線が引かれている。


このベッドがひとつ置かれた病室内は、開いた窓から流れ込む、むせ返る河津桜の匂いと梅の香りで満たされていて、こいつはただ、眠くて寝てる。


そうとしか、見えなかった。


この本の主人公は知的障害者。何も知らない幸せな日々を過ごしていた。ある日、マウス実験の次の実験台として知力増強手術を受け、成功する。


主人公は、誰よりも賢くなり、そして全てを知り、不幸になった。賢くなった主人公は、自分の前の成功例である友達のネズミが死んで、自分がまた何もわからなくなるとわかった。


「知る」と「わかる」は別のこと。

知的レベルとは「わかる」ことが増えること。


主人公は最期の知力、間違いだらけのメッセージで亡き友への追慕を頼む。かつて愛し、尊敬していた先生に書き残した一文に線が引かれていた。


「ごめん」


あの日。


ライブの最中に呂律が回らなくなっていったのはわかっていたが、今、演奏中の曲はたかが5分。この曲で危なければ今回は中止にしようと続行した。


そして、こいつが倒れた。この曲を最後まで歌い切ってから、動かなくなった。もっと前に、止めればよかった。ライブなんて元気になればまたできるのだから。


時間が戻らないのは知っている。

戻らない時間が、余裕を奪うことがわかる。


悲劇の本を抱えたまま、寝ているこいつの手にキスをする。もう一度、笑えよ、お前。いっつもお笑い番組とか見て、笑うのが堪えきれてないだろ?キャラに合わないからって我慢しないで、笑えよ、今こそ。


「なあ」


風が強く吹いて、一枚の唐紅が、舞い降りた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ