必然の物語
あまりにありふれているが、確率を考えれば、どこまでも不思議なこと。
「出会うこと」
例えば、交差点ですれ違うだけでも、本当は奇跡的なこと。
朝5時、あなたは会社員で渋谷のスクランブル交差点にいる。あなたの前からは如何にも徹夜明けで酔っている若者達が、始発の話をしながら交差点を渡ってきた。
夜中まではしゃいでいた「彼」と今から出勤する「あなた」。本来なら出会うはずのない知らない人が、交差点ですれ違う。
「移動すること」
2023年のクリスマスに生きており、日本に存在して、同時刻に渋谷のスクランブル交差点ですれ違った「君たち」。
生きてきた時間も、場所も、人種をも飛び越えて今、あなたとすれ違う人も、きっと、あなたと同じように、素晴らしいことも、嫌なことも、いっぱい抱えているはず。
そう、今この瞬間、世界には70億人存在しており、親和性の高い人もいれば、相反する人もいる。
それすらわからないまま、人はすれ違う。
地球が生まれてから、幾たびも繰り返された奇跡の夜のさらに特別な「とき」。
今宵、移動という人の持つ根源的な権利を使い、移りゆく街で「彼女」が「映しだした彼ら」。
その瞳に映し出された「名もなき彼ら」。「彼ら」はその持てる時間、移ろいゆく季節の中でどのように過ごしてきたのか。
そんな美しくて愛おしい「時間」を切り取った「一枚」。これから一緒にめくる「アルバム」のプロローグをあなたに。