猫か肉か。
吾輩は、肉である。
吾輩は食材、肉である、何の肉なのかは、吾輩にもわからん
「肉です」
吾輩の推理を聞いた白い毛皮を着たさんが、きっぱりと言ってのけた。
「え?」という顔をしたら、補足してくれた。
「ですから、その猫は牛肉だと思っていますよ。おそらくは高級なサーロインでしょう」
「ほーん……」
とは言うものの、吾輩が牛肉だと信じているんだから、それでいいではないか。
「この肉は生後何ヵ月ですか?」
唐突な質問に面喰らったが、これは答えられそうだ。
「二ヶ月くらいであろうか」
「じゃあまだ歯が揃っていませんね」
探偵さんによればその猫は生後二ヶ月半らしい。
「じゃあ、その猫は生後何ヵ月ですか?」
……むう。同じ質問である。この探偵さんは吾輩の推理を根底から覆そうとしている。しかし考えてみると、探偵さんが間違っていたとしても、何の不都合もないことに気づく。
「生後二週間、牛だったら美味しい肉の子牛のテリーヌなどができるがこの子は、可愛い猫です、お肉ではありません」
白い毛皮を着た人間の少女が言う
「ふむ。その猫は生後何ヵ月ですか?」
むう。探偵さん、食い下がるな……。
「……生後一ヶ月半くらいであろうか?」
「まだ歯が生えそろっていないから、離乳食ですね」
吾輩が確信を持って牛肉というのを断言させなくした。
「ふむー。その猫は生後何ヵ月ですか?」
「生後三ヶ月半くらいだ」
吾輩にはこのくらいの年齢の子が、まだ歯が生えそろわない時期だということくらい知っているのだ! ……むむ?この白い毛皮を着た人間の少女はいつごろ生まれたのだろうか?
「ふむー。その猫は生後何ヵ月ですか?」
「うむ」と吾輩は探偵さんに頷いてから答えた
「生後三週間くらいであろう」
白い毛皮を着た人間の少女がとても驚いているのが、良くわかった。
「では最後にその猫は何ですが?」
「可愛い猫です」
吾輩は自信を持って答えた。
「ふむー。その猫は何ですか?」
むにゃ?何なのですかって、何だ?何か動物を聞かれているのだろうか?……いや違うな……、この質問の意図は何だ?!これは本当に謎かけなのだ! 吾輩が考えていると、少女がさらに質問をしてきた。
「その猫は、今何をしているのですか?」
む?むむ?これはどういう意味だ?吾輩は何と答えたら良いのだ?……わからん!この質問には答えようがない!
「……それは……」と言ったまま黙ってしまった。すると白い毛皮を着た人間の少女はとても残念そうな顔で、
「わかりませんか……」と言った。
「ああ……わからない」
と答えながら吾輩は内心ホッとしていた。こんな質問に正解なんてない、おそらく探偵さんはこの猫が何なのかという謎を出題したのではなかろうか?だとすればこの質問には答えようがないのである!
(反語)。
じつは寝ている猫をながめるボケ爺と孫の話でした。w