白に堕ちる〜筆者の性癖と糖分を混ぜた恋愛短編〜
……外出するか……
俺は浩二、高校卒業後何もしていない。所謂ニートというものだ……
ただ俺は、もう父も母もいない、どうしようもなく辛い……生きたくない……友達もいない、だから俺が死んでも誰も悲しみやしない、ただせめて誰かの為に、意味を持ってから死にたい……死ねる理由を抱えながら今日もふらついていた
そんな中歩いていると横断歩道にゆらゆらと立っている少女が見えた、そして左から車が迫る……
『浩二……!危ない!』
頭痛が走る程の嫌な思い出が蘇る……そして同時に頭にこんな言葉が刻まれる
……次は……俺が死ぬ番だ……
「がぁぉおぁ"あ"あ"っ!」
普段動かさない足のリミッターを外し、恐怖を振り払う為に叫び、腕を空気をかき分けるように動かして少女に迫る!
がばっ!
俺は少女を抱き留め歩道に転がり込んだ
◇
「とても悲しいことを伝えなくてはなりません……父さんは……」
医師が俯きながらそういうと……
「浩二……あなたのせいで……!」
癇癪を起こした母さんは僕に右腕を振り上げ……
◇
「お兄さん!お兄さん!」
「びぁぅっ!」
クッソ情けない声を上げて目を覚ます
さっきのは……思い出したくない夢だ……
自分の体の上にまたがる少女が居た……
それと同時に
死にきれなかったな……
と頭によぎる
一人の少女の為に命を捨てればどれほどいい死に様だっただろうか……かっこよく楽になれたのに……
「大丈夫?顔色が悪いよ?」
「大丈……」
久しぶりに心配されてドキリと胸が鳴るそして目線を少女の顔に向けると
「ぅっ……」
あまりにも……可愛らしかった……あどけない可愛さ、いやあどけなさの暴力と言って良いほどの幼い顔立ちと美しい黒髪、そして宝石のような瞳を向けられ大丈夫の「夫」の部分がおかしくなってしまうほど取り乱してしまった
「そ……その……そろそろ離れてっ!恥ずかしい!」
俺は少女を取り敢えず離れてもらうことにした
「立てる?大丈夫……?」
「うん、なんとか……」
この程度の運動で全身に痛みが走る……情けない……
「……私の事……見えるの?」
「……?見えるけど?」
「その……私!何でもします!だからお兄さんの家に住まわせて下さい!」
急な事を言い出して頭を下げる
「ええっ!いや……その……」
美少女とは言えこんな幼い子をましては赤の他人を家に入れるのは……!
「いきなりでごめんなさい……私……今まで誰ともこうやって向き合えなくて寂しかったんです……だからぁっ……!」
可愛い顔を歪ませ綺麗な瞳がゆらゆらと日光を反射する
「良いよっ!目をうるうるさせながら俺を見ないでくれ……!」
折れた。ポキリと。アッサリと。だってこんなに可愛い子にこんな目をさせられたら……
「それと……名前は?俺は浩二」
「私は真白、これからよろしく!」
もう真白は何やらとても嬉しそうだ……どうしてこんな事に……俺はもう終わりたいのに……これでは終われなくなってしまうじゃないか……あぁ……今日は厄日だ……
◇
「どうぞ上がって」
「ここが兄さんの家?」
「浩二で良いんだぞ?」
「いや……お兄さんで定着しちゃって……」
すまん。性癖に刺さる。「お兄ちゃん」にされたらもうヤバい気しかしない。
取り敢えず家に入った
俺の家はpcとキッチン、そして最低限の水回りとベット以外何も無い、ただ不自然な空きスペースが幾つもある。
「……その……」
「俺の家の感想なんていらないよ」
そう、全てはこの家の記憶を呼び起こさない為に全て片付けた。
「その……私!何かさせて!」
真白は健気に自分に何かを要求してくる……ダメ……ふんすって感じが可愛い……
「取り敢えず、料理出来る?サラダ作ろうか」
「……がんばる!」
冷蔵庫からキャベツを取り出す
過去にいい加減な食生活で体調不良を起こしたからな。野菜。肉。これが無いと俺はゆっくりと苦しんで死ぬ。そんな無様な死に方はしたくない
「包丁使える?」
「……うん!」
真白は元気の良い了承と不安な手つきで渡された包丁を構える……
「いたっ!」
「大丈夫か?!」
案の定指を切った
俺は絆創膏を取り出す
「全く……慣れない事はするもんじゃ無いよ……」
「ごめんね……すぐ慣れるから!」
真白は笑って手を出した
随分と働き者だな……とても良い子なのに何故……
◇
「あとは……ご飯は冷蔵庫にあるしサラダチキンもある、それを付けて朝ご飯にしよう」
「うん!」
食卓を並べ二人で向かい合い
「いただきます!」
「……」
「いただきます」を言ったのは真白だけ
「ちゃんと『いただきます』って言わなきゃっ!めっ!だよ!」
可愛い子にかわいく叱られた、どうやら俺の人生、まだまだ捨てたもんじゃないな……もう捨てたくてたまらないのだが。
「あ、ごめん……一人暮らしが長いとつい忘れてしまってね……いただきますっと……」
「うん!使ってくれた人達への感謝は忘れちゃいけないよ!」
「はい……それはそうと、聞きたいことがあって……」
「何?」
「なんで君が一人で?家出?」
正直こんな顔も心も良い子が家出なんてよっぽどの毒親でない限り無いだろう……
「……それはね……私、透明人間でね……誰からも私を認識できないの……」
「……透明人間……?」
突拍子もない非現実的なことだ、しかし出会った時、すぐに見えるかどうかの確認をしたりとか……色々納得できる節がある
「お父さんお母さんにも見えなくなって……近くにいるのに居ないもの扱いされて……私……少しおかしくなっちゃったの……」
「真白も……ひとりぼっちだったんだな……」
可哀想だな、こんな良い子が……そしてどうしてそんな子がよりにもよって俺なんかに……
「ううん、もうわたしはひとりぼっちじゃないよ?お兄さんがいるんだもん」
「……そうか……」
何だかとても眩しいものを見ている気分だった、ただ常に独りで閉じこもっていた俺には眩しすぎて何が何だかわからなかった
◇
「「ごちそうさま」」
二人とも手を合わせて食事の終わりの挨拶をする
「その……私からも聞いていい?」
「何だ?」
真白は恐る恐ると……
「この家に……家族がいたんじゃ無いのかな……?」
「……言わなきゃダメか……」
俺の脳に亀裂が入るような頭痛が走る
本当はずっと忘れておきたかった、墓の底まで秘めておきたかった事を……
「父さんはね……俺の不注意での交通事故から助ける為に亡くして……父さんが亡くなったショックでお母さんは精神を病んだ……俺はそれを……母さんに償いたかった……だけどお母さんは精神を病んだままこの家のベランダから身を投げた……」
「そんな……」
「もう……もう……いない……母さんも……父さんも……居ない……俺だ……全て俺のせいだ……俺が起こした事だ……俺が両親を殺したんだ……」
残ったのは押しつぶされそうな程の罪悪感と孤独感。
「……俺は……愛していた家族を殺してしまって……生きるのが辛いんだ……だけどこのまま何もせずには死にたくない、死に場所を探していたんだ……だからあの時は真白を助けて死ぬつもりだったが……死にきれなかった……」
俺は自害したい思いを吐き出してしまった……俺は情けなく涙を流していた……
「……ねぇ……父さんお母さんへの償いもせずに自分勝手に死んじゃうのは違うと思う……それに父さんが助けてくれた命なんだからそれを粗末にしちゃうのが罪なんじゃないの?」
真白の優しい雰囲気とは一変しキッパリとした言葉のメスが入る
「真白……やめてくれ……」
俺は殺した両親に向き合う事なんて……嫌だ……怖い……!そんなの……俺には……!
「……気持ちは分かるよ……私は浩二に助けてもらった時は自害しようとしていたの……だって誰も悲しまないと思った……だけど私を見つけて助けて、そして助けてくれる人が居た……だからその人と一緒に生きたいの!だから……お願い……!それに!私は……浩二のことが……好きなの!」
ぎゅぅぅっ……!
俺は真白に力一杯の抱擁を受けた……
真白の腕の中は柔らかくずっと居たくなってしまうような安心感を覚えてくる……
もう独りじゃない。久しぶりに自覚した、その事を全身で受け取れた、心の底から救われた感覚がした……
俺は抱き返した、もう安心感のあまり震えながら泣いてしまう……
真白と一緒に居たい、死んだら独りになってしまう、だから独りから救ってくれた人からもう離れたくないそんな思いに駆られてしまう
今更分かった、本当は……誰かに自分を求められたかったんだ。眩しくて分からなかったものは、自分を求めてくれる人だったんだ。
「……真白……ごめん……もう死のうだなんて考えない、それと……真白……俺も……大好きだ……ずっと一緒でいてくれ……もう独りになりたくない……だから離れないで……」
「浩二……ずっと一緒にいようね、寂しがり屋さんの浩二の為に……ずっと……一緒にいてあげるからね……」
真白は俺の後頭部に手をやり自分の耳元まで引き寄せた……
俺と真白は互いに沈むように抱き合った……
ただ決して親を殺した罪悪感は消えはしない、ただ自分を求めてくれる人がいる、その為に俺は前を向くんだ……
◇
おまけ
この騒動の後……
「……その……私と抱き合いながら……『大好き』って言って欲しいな……」
「っ?!」
真白は何だか妖しげな息遣いで俺を抱き留めて言い出す
真白は浩二に「大好き」と言われながら甘えられた感覚が忘れられなくなっていた
「あっ……あぁ……真白……」
一方俺は真白に抱きつかれる感触の虜にされてしまっていた、だって……これで命を救われてしまったのだから……
「嫌だったらいいんだけど……」
もう俺は拒否なんてできない、だって俺にはもう真白しか居ない、だからこそ、真白に沈んでしまいたい……もう甘えたくてたまらない……
「大好き……大好きぃ……」
「浩二……私も大好き……だからもっと言って……私に甘えて……!」
真白は浩二を自分の胸に埋め頭を撫でて甘やかし尽くす……
「まっ……真白ぉ……っ……」
意外と……いや相当でかい……ダメ……こんなのに埋まったら……
真白にはそっちの方向の才能があった、あってしまったのだ……
「真白……大好き、ずっと好き……ずっと一緒……ぁあっ……なでなでしてぇ……あうあっ……大好き……」
……俺は理性を蕩され、真白に甘えながらたくさん『大好き』と言わされてしまった。当時は幸せそのものだったが、冷静になった途端に恥ずかしすぎて少しの間死にたくなってしまった。
R18の派生作品を考えてしまっています。浩二が真白にズブズブに堕とされるプチM向けになりそう。
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のでぶっちゃけしない方が心の平静を保てます。(建前)
どうしてもしたいのなら止めはしないさ。(本音)