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ヲタッキーズ121 月夜のエスパー

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第121話「月夜のエスパー」。さて、今回は満月の夜に超能力者の犯罪が頻発、予知能力のあるセラピストが殺されます。


クリニックに集う妄想性患者の中から、想定外の繋がりが次々と明らかになる中、超天才まで動員した科学捜査の末に明らかになったのは…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 妄想科学小説(MF)の騎手


2月6日は満月。


「我は預言者なり!今こそ、汝らヲタクに神田明神より授かりし御言葉を…」

「バンパイア!コレ、ハロウィンのコスプレじゃナイから!」

「甲賀の黒魔女にトドメ!伊賀流の白魔術を喰らえ!」


満月の夜。万世橋警察署では、ハイテンションに預言が語られ、生き血が吸われ、魔法対決が行われる。

"リアルの裂け目"からの電波を受信した腐女子が覚醒し、次々と超能力に目醒めて凶行におよぶのだw


「なぜ満月の夜だと腐女子が覚醒スルのかな?」

「コッチが教えて欲しいわ!テリィたん、抑えて!」

「わぉ!こんな感じ?」


魔女対決に敗れた甲賀のクノイチが服を剥がれ赤ブラ姿でラギィ警部に組み伏せられて…僕のコーヒーをコボす。


「ラギィ、調子は?」

「相変わらズょ。テリィたんは?」

「ボチボチさ」

「ソレは良かったわね」


まるで、初級"日本語会話"の例文みたいだw

この光景は、次のSF小説の何処かで使えそう。


無秩序、暴力、混沌。あと必要なのは…


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


殺人現場だw


「ミユリ姉様。被害者は、アシュ・コズリ。32才。心療内科クリニックのセラピスト。正午(午前0時)過ぎ、ランジェリーフットボール観戦帰りの夫が発見。"blood type BLUE"。超能力者なので、SATO経由でヲタッキーズに合同捜査のリクエストがありました。」

「目撃者は?」

「いません。でも、テイクアウトした夕食のレシートがあります…2人分ね」


ミユリさんは、僕の推しでスーパーヒロインの"ムーンライトセレナーダー"に変身スル。

南秋葉原条約機構(SATO)は"リアルの裂け目"からの脅威に対抗スル首相官邸直属の防衛組織だ。


ヲタッキーズはミユリさん率いるスーパーヒロイン集団だ。


「姉様。このカード番号は被害者のモノではありません」

「エアリ、誰が払ったか調べて。支払いは6時2分。死亡推定時刻は8時。食事した相手が怪しいわ」

「コレが海外ドラマの"supernatural"なら、水槽の熱帯魚の脳に電極をつけて、魚が見た光景を再現するのにな」


SF作家らしい斬新な発想だが、ミユリさんは無視w


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ルイナ、どーしたの?!…確かにリモートだからドレスコードとか無いけど」

「あ。ミユリ姉様、気になさらないで。"盛れる!寄せ上げブラ"をネットで買ってみたら…テリィたん!胸ばかり見ないでウフフ」

了解(ROG)…」


ルイナは、史上最年少で官邸の最高アドバイザーになった超天才だ。車椅子にゴスロリがトレードマーク。今回は、自分のラボからリモートで検視結果を教えてくれる。


「音波銃による銃槍は複数。おそらく22口径㎐で撃たれてるわ。顔面に"下劣セラピストお前の終わりだ"の落書きがアル」

「崖っぷちにいた患者が崖から落ちて犯行におよんだ線ね」

「"てにをは"が微妙だな。"お前の"ではなく"お前は"だ。whoとwhomの違いより簡単なのに」


死体の顔面に残された落書きを前に文法論議w


「テリィ様。ソレって今、おっしゃるコト?」

「ミユリさん。犯人は"言葉の誤用"って罪も犯してるってコトだ。SFとは逝え、作家として指摘しておきたい」

「はいはい…で、ルイナ。抵抗の痕は?」


モニターの中で"胸の谷間"強調のポーズをとる超天才。


「両腕に痣」

「犯人の毛髪や繊維が残ってないか調べて」

了解(ROG)


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「妻のアシュは、プロ意識が高く、家では余り患者の話はしませんでした」

「帰宅は遅かったですか?」

「カルテを描くため、月に何度か残業するコトはありました。だから、妻が残業の日は、私は友人と外出を」


被害者アシュ・コズリの夫、ジェイ氏を訪ねる。


「ジェイさん。彼女は誰かとクリニックで食事をしていました。お相手が誰か、御存知ですか?」

「さぁ。私が電話した時は何も言ってなかった」

「当日、電話を?何時頃ですか?」


ムーンライトセレナーダーに変身してるミユリさんの質問。

因みにメイド服にレオタードと逝う作者の妄想満載コスだ←


「6時頃だ。ランジェリーフットボールの観戦に行く前だ。"練塀町パンティースvs佐久間町フロントホックス"。見逃せないカードだ」

「何の話を?」

「他愛もないコトだ…愛してると伝えれば良かった」


フト泣きそうになるジェイ・コズリ氏。


「ありがとうございました」

「いいんだ」

「お気の毒です」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)に捜査本部が立ち上がる。ソコへ…


「ミユリ、また死体ょ!神田山本町に音波銃殺体」

「え。ソレも"blood type BLUE"?さすが満月の夜ね」

「ヲタッキーズで見て来てくれる?音波銃で撃たれたならスーパーヒロインだわ。どーせ合同捜査ょ」


ラギィ警部からフラれたミユリさんは、ヲタッキーズの妖精担当ルイナとロケットガールのマリレの方を向く。


「2人で見て来て。テリィ様と私はコッチを片付ける」

「夕食支払いのカード決済は、夫が電話した直後だった。つまり、彼女は夫に内緒で誰かと会った。で、ソイツは恐らく文法が苦手」←

「あーあ元カレとホットミルク飲んでイチャイチャするハズだったのに…あ、今の何で言っちゃったのかしら」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「マリレ、元カレとホットミルクデート?うぅ気持ち悪」

「だって、酔うと彼は眠れなくなるのょ」

「私の場合、姉様とテリィたんの会話で眠くなるわ」


もう1つの殺人現場。しかし、何てコト逝うんだエアリw


「スピア!どんな感じ?」

「しっ!静かに…今、遺体と話してるのょ」

「…で、何と言ってるの?」


スピアはルイナの相棒のハッカーだ。車椅子で何かと不自由なルイナに代わり、よく現場に顔を出す。


「音波銃で胴体中央を1発。38〜45口径Hz。至近距離で背後から撃たれてる。"blood type BLUE"」

「冷酷ね。IDは?」

「ヲタクだって、ある意味冷酷ょ…所持品はナイ。犯人は、財布も時計も奪って逃走」


因みに、ヲタッキーズのエアリ&マリレはメイド服。スピアはジャージ姿だが、恐らく下はトレードマークのスク水だ。


「あら。強盗なの?」

「ソコんトコ、被害者の顔見知りが何チャラって警官に話してるわ」

「何チャラ?スピア、万世橋(アキバポリス)とは仲良くしてょ。特に制服のおまわりさんとは」


ソッポを向くストリート育ちのハッカー。


「嫌ょ」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)に立ち上がった捜査本部。


「"帰りにパンを買うのを忘れずに"なんてメモとは違う。殺したての遺体の顔面に描き殴るメッセージだ。殺した上に残したメッセージなのに、間違った文法で描くか?」

「被害者は元数学教諭のフラン・アンダ。"blood type BLUE"です。姉様、どーします?」

「マリレと組んで貴女達でお願い。コッチは手一杯ょ」


仕事を割り振るムーンライトセレナーダー。

どーやら僕は彼女のチームメンバーらしい。


「で、遺体はどんな状態だったの?」

「倒れてたわ」←

「何だソレ?奇妙な体勢だったとか?」


興味本位で聞く僕に、ヲタッキーズは塩対応だw


「撃たれたような体勢…だったカモ」

「じゃあよくありがちな強盗殺人だな?」

「あのね、テリィたん。ありがちな強盗殺人が1番厄介なの。ランダムに獲物を選ぶから複雑。腕が試されるわ」


僕は、上から目線キープで一言。


「そっか。ま、手伝いが必要だったら呼んでくれ」

「テリィたんの手伝い?要るわけないでしょ不要だわ」

「テリィたんの事件より先に解決してみせる」


攻撃的な言葉をぶつけてくるw


「ホント?ココはひとつ面白いコトをしてみないか?」

「あら?ソレって、どっちが先に事件を解決するか賭けるってコト?そんなの不謹慎過ぎるでしょ?」

「1万円」


え。高めの相場で仕掛ける。


のった(mine)!」

「待て待て待て。姉様には絶対内緒ょ。知られたら殺されるわ」

「秘密、殺人、賭博。全部僕の好物だ。正々堂々と戦おう」


僕とヲタッキーズは、拳をぶつけ合うw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンクに改装したら居心地良く常連達が沈殿、回転率は急降下。メイド長(ミユリさん)は渋い顔だ。


「テリィたん。賭けナンて不謹慎だわ」

「もう死んでるんだょ?ソレに捜査のインセンティブとして悪いコトじゃナイ…スピア、勝負ジャージだけど今宵はデート?」

「今からハッカークラブ。その後で元カレのルオンをお持ち帰りでスイーツを食べに行くわ。最近ギクシャクしてたから、何か特別なコトをしてあげたくて」


スピアは、デートを前に明らかに上気してるw


「スイーツは恋の特効薬だ。楽しんで」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)に女弁護士が呼ばれる。

ラギィ警部自らの事情聴取だ。


「ええ。確かに私のカードで払った。彼女は、私の親友で私が帰るまでは生きてたわ」

「ロッシ・ナッシさん。貴女は、亡くなったアシュ・コズリさんのクリニックを何時に帰ったの?」

「7時頃ょ」


明快な回答w


「その後は?」

「同僚と"ガンズボード"で11時まで飲んでた」

「アシュとは、前から夕食の約束を?」


首を振る女弁護士。


「話したいって電話があったの。その時は知らなかった」

「何を?」

「警告スルとか、出来るコトはあったハズょ」


話は核心に入る。


「彼女の用とは何だったのかしら」

「弁護士の私からアドバイスが欲しいと。先週の金曜、何かが起きたのね」

「何?」

「彼女は言わなかったけど、きっと患者の誰かのコトょ。接近禁止命令を出したいと言っていたわ」

「初耳ね」


女弁護士ロッシ・ナッシは悲しげに首を振る。


「私も、ちゃんと話を聞けば良かった。彼女を1人にさせるんじゃなかったわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部でラギィと意見交換。


「金曜夜のクリニックでの会食のコトは、夫も知らない。彼女は口が固かったのね」

「結局、患者との守秘義務が災いしてる」

「親友の女弁護士は、確かに11時まで同僚と飲んでた。被害者の夫も間違いなくランジェリーフットボールを観戦してる」


みんなで頭をヒネる。


「残るは金曜夜にセラピーを受けた患者か」

「アシュのカルテを見ようょ」

「無理。令状がナイ。患者の中から前歴者を探すぐらいね」


ソコへ隣室から夫婦モノが出て来るw


「お悔やみ申し上げますわ」


夫妻を見送るヲタッキーズは自信満々って顔だw


「あら、テリィたん。何だか不安丸出しって顔ね」

「エアリ。誰だょあの夫婦。何か手がかりか?」

「そぅよ。被害者は、毎晩散歩してた。で、現場にタムロしてるのが…」


待ち切れズ口を挟む僕w


「クール宅急便?」

「いいえ。ストリートギャング。彼等の溜り場だったの」

「連中は、いつもそこに溜まってるの?」


うなずくエアリ。


「そぉよ」

「ナーンだ。ソレなら犯人じゃない。溜り場で殺したら絶対、捕まるからね。悪さをスルなら別の場所だ」

「フン。私達を自信喪失させようとしてるわね?」


警戒するエアリ。既に身構えてるw


「自信喪失ならコレはどうだ?コッチの被害者は、弁護士に相談してるぞ。接近禁止命令を出そうとしてさ」

「え。接近禁止命令?!誰に?」

「ソレは捜査中。でもさ、良い響きだと思わないか?接近、禁止、命令…」


僕は、踊るような仕草でその場を去ろうとして…ぶつかるw


「げ。ミユリさん…あの、今、ちょっち、エアリに…」

「テリィ様、ラギィが見つけました」

「え。何を?」


ミユリさんは、既にエレベーターに向かって走り出してる。


「ハルラ・ロシス。複数の暴行歴アリ。毎週金曜日に夫婦でセラピーを受けてます」


現場へ駆け出すミユリさんに釣られ、僕はともかくヲタッキーズも立ち上がる。コッチの捜査状況を偵察スル気だw

慌てて"閉"ボタンを推すと、やたらユックリとエレベーターのドアは閉まって逝き、エアリの目の前でピシャリ←


「卑怯ょテリィたん…マリレ、階段ょ!」

「テリィ様、今のは何ですか?」

「え。ナンのコト?」


第2章 陽気な妄想患者達


ムーンライトセレナーダーは、コスプレ(ロケットパンツ)に仕込んだイオンクラフト効果で空を飛ぶ。現場への展開もひとっ飛びだ。


「よっしゃミユリさん!宣言スルょ確実に良い予感がスル!コイツが犯人だ!」


神田相生町の精肉店。上野の地下駅へ潜る新幹線のハデな騒音に楯突くように、ナタで肉を叩き切る音が響き渡るw


「ハルラ・ロシスさん?ムーンライトセレナーダーです」


メイド服にレオタード。ウサ耳をつければ"愛の水中花"になりそうだが…あ、誰も知らないかw


「ムーンライトセレナーダー?ホントにいたンだな。アキバで肉屋をやって3代目だが、初めて会ったな。裏に捨てた萌えないゴミの話か?出来心です。ゴメンナサイ」

「あ、はい。ソレから出来ればソレ、置いてくれます?」

「あ、ごめんごめん」


手にしたナタを指差され頭をかくオヤジ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕とミユリさんは、店の裏に通され、お茶が出るw


「アシュ・コズリを御存知?」

「モチロンだ。俺のセラピストだからな」

「昨晩、殺されました」


すると、大袈裟に天を仰ぐオヤジ。


「神田明神も照覧あれ!ウソだろ?センセが殺された?」

「念のため7時半から9時まで、どこにいたか教えてくださいませんか?」

「10時まで肉屋にいたさ」


市場時代から深夜営業の精肉店なのだ。


「証人はいますか?」

「従業員に聞いてくれ」

「オヤジさん。随分身近な証人だな。簡単に口裏合わせが出来ちゃうじゃナイか」


嫌な奴を演じる僕。果たして、オヤジは激昂←


「なぜ俺を犯人だと決めつけルンだ」

「アンタにゃ脅迫や暴行の犯罪歴がアルからな」

「だから、俺は!…セラピーに通ってルンだ。センセに教わった。俺を傷つけてるのは、俺自身ナンだと」


なかなか良いアドバイスだ。だが、コッチも先を急ぐw


「良いから!金曜の夜、何があったかを逝え!」


デスクを拳で叩いたら、オヤジもミユリさんも目を白黒w


「確かに何かがあった。だが、俺の診察の時じゃナイ。俺の前の患者の時だ」

「どーゆーコト?」

「妻と待合室にいると、いきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ怒鳴り声が聞こえて来たンだ」


怒鳴り声?


「何を怒鳴ってたの?内容は?」

「わからんが、男はヒドく興奮してた。怖くなって様子を見ようとしたが、男は去った後だった」

「顔を見た?」


オヤジは、悲しそうに首を振る。


「いや。別のドアから出て行った。その後、夫婦でセッションを受けたが、センセはかなーり動揺してた」


どーやら、このオヤジは犯人じゃなさそうだw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「ハルラ・ロシスの前の患者は…エヴン・ヒンクね。2年間、毎週通院してる。ヒンクに犯罪歴は無いわ」

「2年通って、突然キレたとか」

「私、コーヒー淹れてくる」


ギャレーに立つミユリさん。僕も無駄話?しがてら、席を立とうとスルと、ラギィ警部に袖を摘まれるw


「賭けのコト、ヲタッキーズから聞いたわ。私、こっちの事件に賭けるから」


折り畳んだ万札を渡されるw


「参戦は大歓迎だ。他にもいたら教えてくれ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「さぁ行くわょ」


巨漢に手錠をかけ連行するヲタッキーズ。余裕の笑みだw


「おい、待てょエアリ。ストリートギャングじゃなかったのか?ティーンエイジャーだろ普通」

「テリィたんが言ってた通り、奴等にはアリバイがあった。コイツはあの晩、偶然に現場付近にいた泥棒ょ」

「え。何?偶然?」


しかし、エアリは自信満々だw


「YES。しかも、偶然に被害者の銃槍と同じ、ちょうど45口径㎐の音波銃を所持してる。もしかしたら、偶然、弾道分析の前に自白するカモしれないわ」

「弁護士は?」

「ソレが偶然、不要だと言うのょ」


くそ。強行突破の構えだw


「わかった。僕が腕の立つ弁護士を紹介するょ!」

「あーら。どーしたのテリィたん。心配なの?」

「ウルサイ。じゃ倍だ。倍賭けにスル」


マズい。ココは熱くなった方が負けだw


「じゃお金じゃなくて恥にしましょ?どーせ"半島動乱ユギオ2.5"の"光の爆撃"で、テリィたんは第3新東京電力と宇宙作戦群からガッポリ退職金をゲットしたンでしょ?」

「そもそもプライドの高いヲタクにとって"恥"は通貨ょ。負けたら1週間メイド服を着て出社するの。コレでどう?私達のメイド服が見られるカモょ?」

「待て。今だって君達はメイド服じゃナイか!コレはどう考えても僕に不利…」


最後まで話させズ、鼻と鼻を突き合わせるようにして挑発するエアリ。くそ。僕は君のパンツを見たコトあるんだぞ!


神田リバーのふれあい橋で←


「やってやる。このパンチラメイド!」

「初耳wエアリ、テリィたんに何処でパンチラしたの?」

「ふん。何ょ!姉様の腰巾着!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


続いて万世橋(アキバポリス)の取調室にヒョロ長い男が現れる。


「エヴン・ヒンクさん。アンタは、毎週アシュのセラピーを受けてた。認めるね?」

「YES。だが、初めて会った時から、俺は捨てられるとわかってた。ナゼなら、みんな最後は僕を捨てるから」

「彼女は、殺されたのです」


全く動じないエヴン。


「そぉか。前の妻と同じだな」

「前の奥さんは殺されたのか?」

「YES。俺が窒息死させた。そう。彼女に言われた。"貴方の愛で窒息しそうょ"と。だから、妻は俺を捨てた」


堂々と殺人を認めるエヴン。何処まで正気なのか?


「最後のセラピーはどうでしたか?」

「やっと効果が出て来たのに皮肉だょ全く。今が1番センセが必要なのに彼女はいない」

「…先週貴方のセラピーの時に怒鳴り声がしたそうですが」


探りを入れるムーンライトセレナーダー。


「怒鳴り声?先週の金曜日は行ってない」

「でも、アンタは予約してルンだ!」

「キャンセルしたょ1時間前に」


え。キャンセル?


「胸が痛くて緊急治療室(er)に行ったんだ。150万も払ったのに結局パニック発作だった。原因は母さんだ。腹が立って仕方がない」

「…もう結構です。ありがと、さよなら」

「キャンセル料がかからなかっただけ、未だマシだ」


ん?キャンセル料ナシ?何で?


「夫とランチするからちょうど良いわと言われた」

「…今度こそ、ありがと」

「因みに!センセの死は皮肉じゃなく単なる悲劇だ。よく聞く間違いさ。彼女の手で君が治れば皮肉となるけどな」


作家として言葉の誤用は許せないw


「テリィ様!」

「もう逝って良いょ」

「テリィ様。ナンでソンなに萌えてるの?」


僕は遠い目だ。


「さて、ナンのコトでしょう?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「アンタ達はどーするの?私は賭けたわ。万札をテリィたんに預けたわょ」


捜査本部のアチコチで賭けの話が盛り上がってるw

と逝うかラギィ警部が若い刑事達に声かけしてる。


ムーンライトセレナーダーが現れるとサッと解散←


「アシュのカード履歴から、彼女、クリニックの隣のビルのビストロでランチしてたコトがわかりました。従業員が彼女と夫のジェイが喧嘩スル姿を目撃してます」

「その従業員、よく覚えてたな」

「2人の喧嘩が大喧嘩だったから。帰り道も怒鳴り合いだったそうです」


ムーンライトセレナーダーは、周囲のおかしな雰囲気を訝りながらも、僕と情報を共有スル。


「接近禁止命令は夫に出すつもりだったのかな?」

「こーなると、ランジェリーフットボールを観戦してたと逝う彼のアリバイも怪しくなります」

「臭うね」←


ミユリさんは、SATO司令部とオンラインのモニターに話しかける。


「スピア?夫のジェイを調べて。仕事や経済状況。宿泊状況とかね。好きにハッキングして」

「了解ょ姉様」

「ミユリさん、コーヒー飲む?」

「いいえ。結構です」


僕は、ギャレーに立つフリして、捜査本部のアチコチから集金して回る。みんな目立たないように万札を僕に見せるw


「私も参戦スルわ」

「金はテリィたんに渡すンだな?」

「君が胴元か?」


タイヘンだ。万世橋警察署を挙げての"賭け"になってるw

ホワイトボードの前で考え込むミユリさんをみんなが注目。


「あら。ラギィ、何か新たな進展が?」

「え。いえ、貴女のホワイトボードの使い方が参考になると思って…」

「貴女の推理を聞かせてょ」 

「今、ファイリングが忙しくて…」


怪訝な顔のミユリさんが捜査本部を見渡す。蜘蛛の子を散らすようにアタフタ歩き去るみんな。その中で僕だけが…


「万札は僕が喜んで預かっておく…あわわ!」

「テリィ様?誰も動くな!全く…何ょコレ?」

「コレは…ガールスカウトのクッキーだ」


咄嗟の思いつきだが、本部の全員が激しく同意←


「ガールスカウトクッキー?」

「そうだ。注文を集めてるトコロさ」

「ガールスカウト?誰が?スピアならスク水だけどアラサーですょ?」


ソコへ脳天気なヲタッキーズのメイド2人が…


「最悪だわ!弾道分析の結果はハズレ!」

「例の泥棒の音波銃と一致しなかった」

「ざまあ…」


と逝いかけ、慌てて唇に指を当てる。


「エアリ!マリレ!貴女達、捜査で賭博してるのね?」

「まさか!姉様、ソンな…」

「ミユリさん、だからアレはガールスカウトだ」


振り向きザマの鋭い視線が僕の眼底を貫くw


「テリィ様。ガールスカウトがクッキーを売るのは12月です。エアリ!マリレ!恥ずかしいと思わないの?さぁ仕事に戻って!」


エアリとマリレが僕に向かって喉を掻き切るジェスチャw


「ミユリさん!僕が悪かった。自分でも信じられナイょ」


光速でワビを入れる僕。ところが…


「ミユリ!驚くべき情報ょ!」

「ヤメてょラギィ。今の私は、そんじょそこらのコトじゃ驚かないわ」

「ジェイは先月、妻に3億円の生命保険をかけてるわ!」


ミユリさんは、僕にツカツカ歩み寄り…万札を押し付けるw


「テリィ様!私も1口お願いします」


第3章 大好きだょNIMO


万世橋(アキバポリス)の取調室。


「生命保険は妻が言い出したコトだ!」

「あらあら。でも、ソレを証明出来る人はいるの?」

「彼女の友人なら聞いてるカモ」


ムーンライトセレナーダー自ら事情聴取。気合い入ってるw


「彼女の親友(ベストフレンド)が聞いたのは、彼女は貴方に接近禁止命令を出したかったって話だけょ。生命保険のセの字も聞いてナイわ」

「絶対にあり得ない。そもそも彼女には、親友と呼べる相手はいない。同性からも嫌われてた女だ!」←

「貴方の妻でしょ?同性でない貴方がソコまで逝う?で、先週の金曜日だけど」


身構えるジェイ・コズリ。


「な、何だょ」

「クリニック近くのビストロで夫婦喧嘩したでしょ。大勢が目撃してる。怒鳴り合いながら帰ったわょね?」

「ソレは…夫婦だから、喧嘩ぐらいはスル。結婚してルンだから当然だ。ムーンライトセレナーダー、アンタは結婚しないのか?」


グッと堪えるミユリさん。まぁ仕掛けたのは自分だし←


「余計なお世話ょ。で、夫婦喧嘩の原因は?」

「覚えてナイ」

「信じられナイわ」


同席してる僕は、ムーンライトセレナーダーの異様?な熱量に(ジェイ同様w)圧倒されつつ、要点をメモして鏡に示す。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"ミユリさんも賭けた。君達は破滅だ"


もちろん、古今東西あらゆる取調室の鏡はマジックミラーになってて隣室で取調べの模様が見られるようになっている。


「何で私達が見てるとわかったの?」

「どーりでミユリ姉様も(リキ)が入ってるワケね」

「エアリ、私達も負けてらんないわ」


隣室でメイド達は赤い気炎を上げるがソレはコッチも同じw


「とにかく!俺は、犯行時刻にはランジェリーフットボールの地下コロシアムにいた。親友のスキプがチケットを取ってくれたんだ!」

「どーせ口裏を合わせれば、みんな親友ナンでしょ。男の親友ナンてソンなモンょ」

「じゃホットドック屋台のオヤジにも聞いてくれ」


地下コロシアムのホットドッグ屋台はウマくて有名だ。

実は僕達の溜まり場"マイガイダ"が覆面出店してるw


「あのオヤジは認知だ。シート番号は?」

「テリィたんまで…ちゃんと捜査してくれょ」

「時間がナイの。最近のコトだから覚えてるでしょ?」


同席の僕も参戦しヤイノヤイノ責め立てる←


「チケットは"大親友"のスキプがとった。彼に聞け」

「あのさ。シート番号を知らなきゃ退屈なハーフタイムのショーで席を立てナイじゃないか!」

ホームチーム(練塀町パンティース)のベンチ近くの席だ」


そりゃプレミアムシートだ!高かったろ?


「ねぇ離婚を考えたコトは?」

「ナイょ。死別なら神田明神に祈願したが」←

「全く強情な人ね!」


いや。既にジェイ・コズリは泣き顔になってるw


「俺は、離婚は考えてナイし、妻も殺してナイ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


結局、半泣きしてジェイは逃げ切る←


「ミユリさん、奴を逮捕出来るかな?」

「ムリです。証拠がありません。気は進みませんが、テリィ様の元カノのミクス次長検事に頼んで家宅捜索の令状を…あら?エアリ達だわ。ギャレーでTVを見てるw」

「おぉ!きっと諦めたんだ。白旗で降伏だな?」


万世橋(アキバポリス)のギャレーは、パーコレーターのコーヒーや自販機に囲まれた、テーブルがいくつかある窓のない休憩スペース。


「お疲れ様。調子どう?」

「あ、姉様。捜査が"一段落"したので、昨日のランジェリーフットボールを見てるトコロです。オンデマンドで」

「好プレー続出ですょ。あら?またタイムアウト?コレで3度目だわ。ねぇマリレ?」


ミユリさんもエアリもマリレも、全員メイド服の眼福パターンだが、空気中に立ち込める険悪な空気が予断を許さないw


「まぁ貴女達もランジェリーフットボールなんか見るのね?意外だわ」

「最近セクシースポーツは流行りですから…しかし、未だ試合が半分も終わってないのに3度目のタイムアウトなんて」

「つまり、コレは時刻8時前の画像ってコトね?」


エアリがリモコンで画像をSTOP。ちょうどスケベそうな顔してアングリ口を開けてるジェイ・コズリがUPで収まるw


「あら?ジェイ・コズリだわ!何て偶然なの?!」

「でも、コレって、もしかしたら、完全なアリバイって奴かしら。いいえ。これ以上のアリバイは存在しないわ。どーしましょう!」

「テリィたん、メイド服のサイズは6?8?ソレとも16?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


勝手に常連は沈殿してるが、もともとバックヤードなので、仕入れやクリーニングなんかはココに届く。

で、ミユリさんのクリーニングが仕上がったメイド服がカウンターに出てて…コッソリ当てて鏡を覗く…


「テリィたん!」

「コ、コレには深いワケが…」

「問答無用!」


思い切り不審な顔で入って来たのは、スピア。

自称だけど、僕の"元カノ会"会長でもアルw


気を取り直し?、話しかけて来る。


「テリィたんは、ズッと大事に思っていたコトが、ある日突然、意味が無くなってしまったコトってある?」

「モチロンある…元カレか?」

「最悪だった」


ハッカーは意気消沈してるw


「何があった?」

「タリア」

「誰ソレ?美味しいの?」


スピアは一気にまくし立てる。


「ド派手な女ょでっかい…前歯の。スイーツの店で、昔、キャンプでルオンと一緒だったって話しかけて来た。初恋の人だったって。その後2人で盛り上がっちゃって…」

「そりゃ残念だったな」

「でも、不思議なのは、ルオンは彼女のコト、覚えてなかったの。でも、興奮しちゃって。帰りのタクシーの中でも、こんな偶然スゴいって、ずっとはしゃいでた。まるで…」

「運命だって」


最後は、僕とスピアは異口同音。思いがけない偶然に、2人は自然と笑みをコボすが、フト悲しげな表情になるスピア。


「私に勝ち目はナイわ」


僕は、両手を広げ、無言で抱きしめる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋警察署(アキバP.D.)。


「テリィ様!どちらに?」

「今、ちょうどエレベーターで着いたトコロ」

「あ…」


ドアが開くとスマホ片手にちょっち怖い顔のミユリさんw


「どちらに逝っておられたの?」

「男の愚かさを嘆いてたトコロさ。何か進展が?」

「向こうに」


珍しいコトに、ミユリさんは明らかにイラだってるw


「また泥棒でも捕まえたのかな?」

「さぁ。でも、かなーり熱くなってました」

「ひゃっほー!」


なるほど。捜査本部でメイド2人がハイタッチしてるw


「おいおい。何だょ進展か?」

「サワリだけでも教えてあげたら?ねぇマリレ」

「姉様とテリィたん(順番が逆w)、被害者のアパートだけど賃貸料が固定だった。家族の手に渡ってもソレは変わらナイ。3部屋で月6万円」


驚く僕達。


「破格だわ!事故物件じゃナイの?」

「被害者は、娘の夫に何度も金の無心をされてる。余りにしつこくて最近は無視してたそうょ」

「古今東西、義理の息子ってのは厄介の種だな」←


ココでエアリのスマホが鳴動。


「え。ホント?やったー。直ぐ行くわ」

「ちょっち待って。エアリ、何なの?マリレも」

「姉様、知りたいですか?」


余裕の笑顔を残して出掛けるエアリ&マリレw


「なーんか嫌な予感がスルな」

「事件を解決して欲しく無いナンてヘンですょね」

「ミユリさん。僕がメイド服を着せられても良いのか?」


あれ?何か考え込むミユリさんw


「その時は、私のメイド服にしてくださいね。他の子のメイド服は困ります…あら、ルイナだわ。もしもし?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「え。本人って確かなの?…あ、そう。そうなの」

「嫌ょエアリ。聞きたくナイわ」

「バーテンダー2人とマネージャーが証言してる。被害者フラク・アンダの娘の夫エリクは、事件当夜、9:15から0時過ぎまでバーにいた。しかも、自分のお誕生日会で主役だったそうょ」


会議室で頭を抱えるエアリ&マリレ。ソコへ…


「あら?貴女達、何でソコにいるの?」

「え。ミユリ姉様。ルイナに呼ばれたんですが」

「ふーん私とテリィ様もょ?」


ココで全員のスマホにルイナの画像が映る。


「私がみんなを呼んだの。2つの事件は繋がってるわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「被害者フラク・アンダの検視結果を読んでたら、遺体にある物質が付着してると描いてあってビックリしたの。"オルト珪酸"ょ」

「オルト何?彗星の巣だっけ?」

「ううん。塩水に含まれる成分ょ」


スマホの小さな画面の中で首を振るルイナだが…ヤタラと大きく見える胸がブルンブルンと一緒に揺れる。盛ってるなw


「ソ、ソ、ソレで(あれ?意外に隠れ巨乳?)?」

「(やった!寄せブラ大成功だわw)塩水に混在する微細な藻まで調べれば、塩水にも特徴が見られるの。つまり、被害者が何処に行ったかを特定出来るワケ」

「え。ソレって被害者が何処で泳いだかがワカルって話?」


エアリのもっともな質問。


「微量だからモチロン泳いではいないと思うけど、全く同じ藻類を含む塩水がアシュの遺体に付着してた塩水と一致したの」

「え。同じ場所の同じ塩水に接触した?」

「YES」


そう答えるルイナは、見上げる系の画像を送って来るンだけど、その角度だと胸の谷間が深々クッキリだょ!


「同じ藻類を含む塩水が付着スル確率は?」

「まぁ同一人物の指紋がついてたようなモノね」

「で、ルイナ。どこの塩水かワカル?」


期待は高まるがルイナは首を横に振る。


「比較する塩水のサンプルがナイと…はい、テリィたん」


挙手した僕を差しつつ、盛った谷間をアピールするルイナw


「センセ。少量の水でもアリですか?」

「良い質問ね、テリィたん。塩水ならアリょ」

「ミユリさん。コレ、アシュのクリニックの水槽の画像ナンだけど、ニモでお馴染みのクマノミが泳いでる。あの水槽は恐らく海水魚専用だぜ」


たちまち、エアリから反論が出るw


「待ってょ。両方の遺体から同じ藻類?そのクマノミの水槽に死体が手でも入れない限り、塩水の付着は無いンじゃナイの?」

「エアリ、塩が水槽の上にこびりついてるのがワカル?ポンプで空気中に放出されてるのね。クリニックにいた人なら、その塩水の成分が微量でも付着してるハズだわ」

「(さすがルイナだ盛ってるだけのコトはアルw)つまり、

フランは殺害前にアシュのクリニックにいたってコトか?」

「テリィ様。でも、アシュの殺害の方が先ですょ?というコトは…」


僕とミユリさんは異口同音。


「ソコに犯人がいた!」


コレは、もう2人の世界。"萌え"がシンクロする。


「アシュには、クリニックで塩水の成分が付着」

「一方、犯人についた塩水の成分は、犯人を通してフランにも付着」

「つまり、2人の被害者は、同一人物に殺された?」


僕とミユリさんの推理のキャッチボールに感心しながらも、その場の全員は、ナゼだかシラケた顔をしている←


第4章 賭けの行方


翌日、殺されたアシュ・コズリの夫と、同じく殺されたフラク・アンダの娘夫婦は、求めに応じて捜査本部に出頭スル。


「え。強盗じゃなかったの?」

「ランダムに殺されたと聞いたぞ!」

「ソレが違ったようです。コチラの奥様も同じ日に殺されています。一見ランダムのように演出されてますが、どうやら同一犯の仕業のようです」


ラギィ警部の説明に夫も娘夫婦も驚いた様子だ。

それぞれに相手?の大判の顔写真を見せる警部。


「コチラがアシュ夫人。そして、コチラがフラクさんです。それぞれ見覚えはありませんか?」

「すまないが、全く面識はナイな」

「お父様は、セラピーに通っておられませんでしたか?」


首を振る娘夫婦。


「パパが?ナイです。奥様には失礼ですが、パパは心療内科って全く信用してナイので」

「コレがクリニックに通ってた患者のリストです。見覚えのある名前がナイか、御確認を願えますか?」

「…いないみたい。ダメだわ」


首を振る娘。食い下がるラギィ。


「ゆっくり見て」

「ホントにつながりはあると思うか?住む場所も違うし、仕事も違うし…」

「言えば良いさ。コッチは医者だぞって」


娘夫婦の夫、エリク・ダンガが噛みつく。


「ソンなコトは言ってナイ。私は、ただ違い過ぎると言いたかっただけだ」

「私達は、この秋葉原では、お2人をつなげる可能性は無限にアルと考えています」

「2人がUFOを目撃したり"闇の政府"の極秘情報を偶然知ってしまった可能性も否定出来ナイ」


僕のわかりやすい例示は、全員から無視されるw


「…待って。グロヴ。この名前に聞き覚えがアルわ。貴方、覚えてナイ?数年前、パパがモンスターペアレントに暴力を振るわれたコト」

「あ!あったなw区の教育委員会を巻き込む事態になった」

「その時のモンスターペアレントが確かグロヴだったわ」


ラギィ警部が飛びつく。


「ありがとう。早速令状をとってカルテを見てみます」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


3時間後の捜査本部。


「フラクは、グロヴ夫妻が子供を虐待してると警察に密告。ソレがバレてグロヴ氏に殴打された。結果、グロヴ氏は夫婦でセラピー通いとなるが離婚。その時の裁判で、グロヴ氏に不利な証言をしたのがDr.アシュです!」

「つまり、グロヴ氏は殺された2人に対し、それぞれ敵意を抱いてたワケね?今、彼は?」

「家庭内暴力で5年服役、先月から出所してます」


ラギィは感慨深い。


「スゴい偶然ね。2人の被害者が卑劣な男でつながった!」

「この街では、誰もが必ず何かに繋がってる」

「…こりゃ今回の賭けはナシだな」


最後のは、僕の脳内つぶやき←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ヤバい警察だ」


東秋葉原の路地裏に赤い警告灯を回転させたパトカーが突っ込む。蜘蛛の子を散らすように走り去るのは自動車泥棒←


東秋葉原の日常的な光景だw


「2つの事件が一気に解決スル記念日だな」

「クリスマスとお正月が合体したよーなモノね」

「ツリーなら、この前しまったばかりだょ」


ラギィ警部以下の警官隊がパトカーから降り立ち、次々に自動小銃、音波銃、防弾チョッキなどで武装スル。

因みに、同行した僕にも専用の防弾チョッキが用意されているが、背中に大きく"SF作家"と描いてアルw


「テリィたんは、いつもマイナス思考ね。現場のテンションが下がるばかり。ヤメてょ」

「東秋葉原に偶然は無いって言ってるだけだ。僕のSF小説とも共通スル理念」

「はいはい、了解。偶然はあり得ない」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「いたわ!グロヴょ。GO!」


ゴミ箱に腰掛け、恐らく拾った古新聞を読んでいた男は、瞬時にして完全武装の警官隊に包囲されるw


万世橋警察署(アキバP.D.)万世橋警察署(アキバP.D.)!」

「警部のベケットょ!グロヴさんね?」

「何だ?俺が何をした?仮出所のミーティングをサボっただけで武装警官が出動か?」


大して驚いた風もナイ。


「火曜の夜、何処にいた?」

「これドッキリか?」

「お前を殺人容疑で逮捕するトコロだ」


ますます驚いた風はナイw


「火曜の晩に俺が殺人を?」

「ソレも2人ょ!」

「神妙にお縄を頂戴しろ!」


男は爆笑スル。


「俺は魔術師かょ?姐さん、コレかっこ良いだろ?」


ズボンをめくると足首に輪っか型の追跡装置←


「見てろ」


男の足が見えない線を越えると装置がピーピー鳴る。


「マジメに仮出所中さ。ミーティングはサボってるがな。とにかく、GPSで見張られてる俺の世界はココまでだ」

「そーなの?」

「何の事件か知らんが、他を当たってくれ。今夜は楽しかったょ姐さん」


ラギィ警部は捨てゼリフ。


「わかったから近づかないで。アンタ臭いわ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


潜り酒場(スピークイージー)"でヤケ酒←


「捜査で確信があったのに"偶然"だった。被害者達は繋がってるのに、肝心の事件が繋がってなかった」

「もっと良く調べれば?秋葉原なら、誰もが何処かで繋がってる。ソレがこの街の良いトコロだから」

「繋がってる"フリ"も出来るしね」


最後はリモート呑みのルイナだ。またも"寄せブラ"←


「テリィたん。ソッチにお邪魔してるスピアのドラマも聞いてあげて。胸ばかり見ないで」

「え。あ、ルオン、だっけ?」

「YES。キャンプで一緒だったタリアのドラマ」


デカい…前歯の?


「彼女ったら、キャンプに行ってさえなかった。全部デッチ上げ。ルオンに近づきたくて、全て捏造したんだって」

「見事な演出家だな。将来が楽しみだ」

「ヘンだと思ってたわ。だって"偶然"が過ぎるモノ」


スピアはプイとソッポを向くが、その瞬間、何かが閃く。


「そーだょな。"偶然"が過ぎるょな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


夜明け前。カウンターを挟み僕とミユリさんだけの時間。


「グロヴはハズレですね。ラギィがGPSの確認が取れたって…ナゼか今回の事件は、私の母星を思い出すのです。フランの娘さんは、パパが死んだだけでもショックのハズ。なのに、捜査は二転三転。遺族は、なぜ殺されたかを知りたいのに」


ソコへ捜査本部からヲタッキーズが引き上げて来る。


「姉様、bud newsです。"水槽"はハズレ」

「まぁ」

「遺体に付着してた塩水と"水槽"の海水の成分は一致しませんでした」


エアリとマリレから交互に聞かされるw


「あらあら。どういうコト?エアリ達の方は、義理の息子が怪しかったんだっけ」

「臭い以外に、何かが繋がってるハズでしたが」

「うーん考え過ぎてわからなくなったわ。新たな視点で必要ね。ねぇお互いの事件を交換しない?」


げ。ミユリさん、スゴいコトを逝い出すな。でも…


「ミユリさん、待って。今、何と?」

「お互いの事件を交換しましょう、と申し上げました」

「ソンなコト、可能なのか?お互いの事件を交換?」


メイド3人の視線が集まる。萌える展開。何か逝わなきゃw


「"見知らぬ乗客"だっけ?」

「ヒッチコックですか?」

「ソレはリメイク。僕は、小説で読んだ。容疑者の2人には完全なアリバイがアルんだけど…この事件で繋がってるのは被害者じゃ無い。犯人達だ」


真っ先にミユリさんが反応。またも"萌え"がシンクロ←


「ジェイ・ソンハとエリク・ダンガですね?」

「YES。彼等は、お互い殺したい相手を交換して殺した。だから、アリバイが成立出来た」

「犯人が入れ替わったのですか?」


みんなで時系列を整理スル。


「ジェイは10時に地下コロシアムを出てます。クリニックから妻の死を通報したのは11時47分」

「地下コロシアムからフラン殺害現場の神田山本町は20分で着く。空白の2時間の間にフランを殺したんだ」

「なるほど。11時にフランを殺し、47分後にクリニックには到着ですね!」


"萌え"シンクロ率は、目下120%←


「エリクは6時3分退社。殺害は8時頃かな」

「アシュ殺害後9時15分にバーに現れ、お誕生会を楽しむ」

「事件を交換すれば、2人のアリバイは成立だ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ジェイ・ソンハは、投資銀行勤務だ。


「ジェイさん、お時間良いかしら?」

「ムーンライトセレナーダー?何か事件に進展が?例のアシュの患者が犯人だったのでは?」

「いいえ。別の線で捜査してます」


ジェイの銀行は、電気街口に近い神田花田町にアル。

界隈のビラ配りメイドに紛れ声をかけるミユリさん。


「別の線?ソレで?」

「事件当日のコトで質問よろしいかしら」

「ソレより容疑者は?」


明らかにソワソワし出すジェイ・ソンハ。


「今、確認中です。ね?テリィ様」

「そーだね。確認中だ」

「悪いが急いでいる。歩きながらでもOK?」


中央通りを万世橋方面へ早脚で急ぐ。


「モチロンOKです…ランジェリーフットボール観戦の後、何をなさいましたか?」

「え。なぜソンなコトを聞くんだ」

「単なる時系列の確認です」


見てて滑稽なくらい動揺してるw


「未だ僕を疑ってるのか?!」

「いいえ。アシュ殺害は120%疑ってません。ただ観戦の直後にクリニックに逝ったのですょね?」

「YES」


急に口数が少なくなる。


「クリニックまで2時間もかかった理由は?」

「彼女は、未だ仕事中だと思って暇を潰してた」

「ブ、ブー。ウソね?」


クイズ番組のマネをするムーンライトセレナーダー。


「ウソなモノか!ホットドッグの屋台に寄った!」

「どこ?」

「神田仲町の"マチガイダ"だ。チリドッグがウマい」


あぁ可哀想にw


「"元祖マチガイダ"だね?"マチガイダ"はアキバに"元祖"やら"本家"やら数軒アルけど、全部ニセモノだ。モノホンのチリドッグは別次元の美味しさだぞ」

「…おい。俺は未だ疑われている気分ナンだが」

「あ。あくまで確認ですから」


艶然と微笑むムーンライトセレナーダー。


「あ。その後、一旦家に戻った。今、思い出した」←

「証明出来る人は?」

「えっと…お隣サンかな。鼻歌を歌いながら帰ったので」


メチャクチャ怪しい。墓穴掘りまくりのジェイ。


「以上です。御協力ありがとうございました」

「え。終わりか?…コチラこそ」

「今からドチラへ?」


答えズ、万世橋下の旅客桟橋に駆け降りるジェイ。

お台場逝きフェリーに飛び乗る。ギリギリセーフ。


神田リバーを下るフェリーから大きく手を振るジェイ。


「コレだったのか」

「YES。リバーを下れば塩分はもっと濃くなります」

「塩水の正体がわかった」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ラギィ警部も加わって、捜査本部で緊急会議←


「警部!エリク・ダンガもフェリーで通勤でしてます」

「鑑識から報告です!遺体の塩水と神田リバーの塩水が一致しました!」

「エリクは、毎朝ZOZOタウン、ジェイは、万世橋からの乗船です」


ココで僕の豊かな空想(妄想?)力が翼を広げる。


「毎朝、同じフェリーに乗り合わせる2人は、いつしか話をスルようになる。きっかけは"佐久間町フロントホックス"の新しいクォーターバックの話だったりする。次第に、自分の妻や義父の愚痴をこぼし合い、慰め合うようになって…」

「テリィたん!その計画は、人気のないフェリーのオープンデッキで立てられたに違いないわ!」

「YES。ソレで全てに塩水が付着スル説明もつく」


満足げにうなずく現場の刑事達。

僕は常に彼等と一心同体なのだ。


「そして、その塩分はエリクからアシュのカラダに移る。同様にジェイからもアシュに…」

「テリィたん、解決だ!ヲタッキーズすげぇ」

「待って。でも、全部状況証拠ょ。自白がナイとテリィたんの元カノの次長検事様が納得しないわ」


え。ラギィは煽るけど…何で?


「さぁココから自白バトルのゴングょ!先に自白を引き出した方が勝ちだわ!」

「姉様には悪いけど、自白は私達が先ょ!」

「じゃ賭けは再開ね?」


あれ。コレがラギィの狙いだったか?


「わかったわ。再開しようじゃないの!」


え。ミユリさんまでw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌日。既に後ろ手に手錠をかけられてるジェイ・ソンハとエリク・ダンガがすれ違う。

その瞬間、ジェイはエリクに目配せ。大丈夫だ。俺達のアリバイは完璧だ。黙秘しろ…


先攻は、僕達チーム・ムーンライト。


「交換殺人?ソンなフザけたホラ話、裁判員は信じないぞ!」

「あーら裁判員って案外賢いのょ?」

「そーだろーょ。でも、裁判はそれぞれ行われる。私は、何のつながりも、殺す動機もない人を殺した罪で裁かれルンだ。そんな話、裁判員が納得スルと思うか?」


推したり引いたりはミユリさんは大の得意←


「ソコまで考えてたのね?自白さえしなければ、絶対にバレないって」

「エリクとは初対面と言ったハズだ」

「同じフェリーで毎朝通勤してたのでしょ」


鼻で笑うジェイ。


「ソンな奴は100人といるょ」

「主犯は貴方ね」

「主犯?」


想定外のワードだったようだ。


「あのね。共謀の場合は、必ず主犯がいるの。従順なエリクは、主犯にとっては都合の良い存在だった」

「でも、君の奥さんのアシュは従順じゃなかった。プロ意識の高いセラピスト。強い女性だ。決して、君の言いなりにはナラナイ」

「じゃ俺はナゼ結婚したンだ?!」


強い女と結婚した者に共通の"魂の叫び"だw


「ソレは、君自身が毎日自分にして来た質問だろう?ソレで気づいた。妻は要らない。ペットで充分」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


隣室では後攻のチーム・ヲタッキーズが躍起←


「検察庁の次長検事に当たるとヤバいわ。テリィたんの元カノで、かなーり欲求不満だから」

「直ぐ死刑にしたがるのょねぇ」←

「秋葉原では、死刑は薬物投与なの。ペントタールナトリウムが血管を通る時、少しヒヤッとスルらしいわ」


エアリとマリレのワンツーパンチだw


「でもね。自白して司法取引をすれば話は別なの」

「そっか。誰も面倒臭い裁判ナンかしたくないモノね。ソレに終身刑で済むし。ねぇ終身刑ょ?もう人生、バラ色じゃナイの!」

「きっと諦めの悪いテリィたんの元カノ判事は、別の奴で点を稼ぐコトを考えるわ。すなわち…共犯のジェイでね」


エリクは辛うじて反論。しかし、半分は泡を噴いてるw


「待て。俺には黙秘権が…」


突然ドアが開き、僕とミユリさんが顔を出す。


「はい、残念でした。今、相棒のジェイが全部吐いたわ!」

「ウソでしょ姉様!何でょ?」

「主犯はエリクだって、今、供述書にサインしてる。賭けは勝ったな。全額いただきー」


掌をヒラヒラさせて勝ち誇る僕達…


「ま、ま、ま、待ってくれ!ジェイの計画だった!全部彼の計画だ!俺は乗せられたんだ!」


エリクの"魂の叫び"。目の前に白紙とペンが渡される。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


1時間後。取調室から出されたジェイは、先に自白したエリクを睨み付けるように振り向きながら、連行されて逝くw


「ジェイが主犯だと見抜き、自白は無理と判断。共犯を揺さぶってみたワケょ」

「ですょね?姉様の演技を見抜き、私達も演技を合わせたワケです。最初から、私達も見抜いてました」

「そーかしら。エアリ達がホンキでリアクションしたから、共犯のエリクを騙せたと思うけど」


珍しくミユリさんが引かない…あ。賭けてるからなw


「もうどっちでも良いだろ?僕達の勝ちだ」

「待って。テリィたん。ソレどーゆーコト?」

「エリクを吐かせたのは僕達だ」


トドメを刺したハズがエアリ&マリレは笑い出すw


「あのね、テリィたん。サッカーのオウンゴールって奴ょ。私達のゴールに入れば私達の点なの。OK?」

「話が全然違う」

「違わない」


平行線だ。女って厄介←


「ランジェリーフットボールならどーだ?タッチダウンをキメたのはムーンライトセレナーダーだ」

「テリィ様、ナンてコトを!」

「でも、姉様。ソレは私達の攻撃のターンだったの」


急に目の前のメイド達がランジェリー姿に見え…


「いいや。エアリ達のチームは、怖がって未だランジェリーになってナイしバスも降りてナイ」

「でも、違うバスだった。コッチはぶっちぎりでタッチダウン。ソッチはクラッシュして炎上。ミユリ姉様、何か言ってくださいょ!」

「そして、アキバの空には綺麗なお月様」



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"精神科医"をテーマに、予知能力のあるセラピスト、その夫、その患者の肉屋、妄想患者、満月の夜に殺された元教諭、その娘夫婦、モンスターペアレント、ハッカーの元カレ、殺人犯を追う超天才に相棒のハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。


さらに、主人公とヒロイン達の賭け、都会のサイコな精神科事情などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、インバウンドの観光バスがチラホラ増え出した秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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