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「結婚しないんですか?」
会社の休憩所の自販機の前で紙コップに入っていたコーヒーを飲んでいたら同期の女性に聞かれた
年齢=彼女いない歴の陰キャラにこのセリフ
さすが陽キャラ
ナチュラルに陰キャラを虐げてきやがりますがな
普通の行動が陰キャラに精神ダメージを負わせるという特殊効果付き
さしずめカードゲームならSR級だろう
・・・そんなんだから陰キャラとかいうなかれ
ただのガチオタクなだけだぜよ?
とまあ陽キャラの特殊効果で1000のダメージを受けたせいで返事ができなかった
返事を待つ陽キャラな彼女
なんて言えばいいのか判らない陰キャラなボク
言えない時間が増えるに従って焦りが増す
陽キャラなら口先三寸でどうにかなったことだろう
しかし常に自分の信念に従ったことしか言えない陰キャラはたとえその場逃れのためのチャラい言葉さえ言えない
知っていてもなけなしのプライドが許さんなんてどんだけ上から目線なんだよ
そんなんだから陰キャラって迫害されるんだよ
と時間がないと判っているのに自分で自分にツッコミを入れたボク
陰キャラは死ななければ治らない病と言われる所以だよね
「相手がいないんですよ」
とりあえず返事ができたボクを褒めてやりたい
「だったら私なんてどう?」
陽キャラの攻撃は終わりそうもなかった
そこでふと気が付いて周りを見回した
物影に人が隠れているんじゃないかと思ったんだ
お前なんかに告白する女なんていないに決まっているだろ?
ドッキリ大成功!
マジで答えているなんてウケル~(意訳)
そう言うこと
だけど周りを見回しても誰もいなかった
これはあれか?
陽キャラな彼女が後でみんなに報告して盛り上がるパターン?
「ごめんなさい」
とりあえずそう返事した
『綺麗な陽キャラを振りやがった身の程知らず』
明日あたりそう迫害されていそうで怖い
だから
「仕事だから!」
と言って休憩室から逃げ出した
『ヘタレ』と言うなかれ
オタクなんてみんなこんなものだよ!
次の日、ビクビクとしながら出社した
「聞いたよ?彼女からの告白をぶった切ったんだって?」
そう言われるような気がした
あるいは
「鏡を見て来いよ、この陰キャラ(意訳)」
だろうか
会社に働きに来ているというのにそんなことになったら嫌だな
そう思ったボクは間違っていない
だって学生時代ってそうだったから
中学では陽キャラのなかでもヤンチャしているグループ ~それも男達~ の嘘ラブレター事件があったからな
『放課後、体育館の裏で待っています(ハート)』
って手紙が下駄箱に入っていた
もちろん行かなかったよ
ピンクの封筒で結構綺麗な文字だったけどバレバレじゃん
陰キャラを好きになる女子はいないからな
所が敵もさること
「告白の呼び出しをブッチした身の程知らず(原文そのまま)」
と言われた
影でだけどな
さすがに表で言うと嘘がバレる
だから他に人がいない所でヤンチャグループが聞こえるように言いやがりましたよ
行っても行かなくてもどっちも破滅エンド
・・・どんだけ人生詰んでいるだと言いたい
とまあそう言う訳で
『陰キャラと陽キャラは絶対に判り合えない』
ことを知っている
だから陽キャラの告白?を回避するのは当然だ
自分の身が大事だからな
おまけに会社だとあと数十年勤めなければならないんだ
地雷は避けるべきだよな
とまあ身構えて会社に行ったんだけど何もなかった
「身構えている時ほど死神は近寄ってこないものだ」
そう思ったね
まあたまたま今日ではなかったのかも?
という思いもあった
だから次の日もビクビクだった
でも何もなかった
とまあビクビクする日々が1週間も続くと
「ひょっとしたら何もないんじゃないのかも?」
と思ったね
まあ半分以上は期待だけどな
とまあビクビクしていたということは陽キャラの彼女を避けていたことになる
ウチの会社は適当に休憩をとってねということになっている
そのため休憩時間は人まちまち
できるだけ休憩時間をずらして彼女と会わないようにしていた
ところが今日、彼女の方がボクの休憩時間に合わせてきた
おまけ?に他に人がいなかった
さすが陽キャラ
世界まで支配していやがる
そのため再び彼女と二人っきりになった訳だ
自販機で買ったコーヒーを座って飲んでいるボク
彼女が入ってきてコーヒーを買ってボクの前に座る
蛇に睨まれたカエル状態だったね
「ひょっとして私のことを避けている?」
彼女がそう言ってきたんだがどう答えろというのだ?
おかげで
「・・・」
と沈黙が広がった
一体どうしてくれるんだ、と言いたい
「ソンナコトハナイデスヨ」
そう言えたボクは立派だったと思う
「今までと同じようにしてくれると嬉しいな」
そう言って彼女が休憩室を出ていった
一体何が起こっているのだろう?
誰か説明してくれ
そう思ったが誰も答えてはくれなかった
・・・人生の無常を感じたね
とまあそんな訳でいつも通りの『平和な毎日』が戻った
つまりは休憩時間を元に戻したので彼女とのエンカウント率が上がったわけだ
休憩時間に彼女と出会うと
「昨日のドラマ良かったね」
だとか言ってくるんだけどどうしたらいいんだろう?
誰かこの陰キャラに教えてくれと言いたい
とまあそんなことをしていたらいつのまにか付き合っていることになっていた
・・・なんでだ?
彼女とは同期としてしか接していないぞ
普通に休憩所で挨拶して
会社の歓迎会とかのイベントでは暇つぶしのために雑談して
彼女が忘年会をしたいといので付き合ったくらいなのになぜこうなったと言いたい
お局様から
「貴方達付き合っているの?」
と聞かれた時の困惑を想像して欲しい
好奇心満々で聞かれたんだ
下手ないい訳は聞かない
いや「面白い話をしなさいよ」といったプレッシャーさえ感じたね
適当なことを言って仕事を理由に逃げだせたのは上出来だと思う
その日の帰宅時に彼女を捕まえて相談した
ストーカーじゃないよ!
廊下であった時に話をしたいって声を掛けておいたんだよ
帰宅時間を合わせて駅までの帰り道に話をした
正確には建物の影に隠れてだけどな
だって会社の近くの駅なんだ
人目があるだろう?
それに近くのスタバなんて会社の人間のエンカウント率がはんばない
普通にコーヒー飲みながら本を読んでいるんだぜ?
・・・陽キャラというのは本当に同じ人間なのかと問いたい気持ちで一杯だ
という訳で話し合いが始まったのだが、人通り説明したところで彼女が真剣な顔をして聞いて来た
「私は貴方にとって何者なの?」