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 壁作成を一任した後、美怜は黙り込んでしまったので、手持ち無沙汰になった樹は今後の予定を自分なりに立てることにした。


 といっても、一人脳内会議をするだけだ。


 考えをまとめるにはこれが一番効率的だ。


 真面目な己や、ふざけている己、知的な己など、様々な己と語らうといい案が浮かぶのだ・・・うん、嘘ついたわ。俺の脳内のそんなのいねぇよ。


 そんなに俺を認識出来ていたらもはや多重人格者一歩手前だわ。ハッハッハッ!


「はぁ~、一人になるとなんか・・・ひま」


 美怜が黙っただけなのになんか寂しく感じてしまう樹である。


「つか、マジでやることないぞ」


 本来こんなところに行き成り放置されれば、寂しいなどと考える前にやることがあり、忙し過ぎて寂しさを考える暇さえありはしない。


 それが、美怜のおかげで願えば何でも用意されるようになった。


 労せず衣食住が手に入る状況では、何もする必要が無くなる。


 そんな状態で俺が何をできるのかと考えると、なんだろうな・・・後は寝るか遊ぶくらいしか思いつかない。


 だってなんでもできて、なんでも作れる美怜がいるから。


「寝るのは、まあ後にするとして・・・・遊ぶってゲームとか用意できるのか?」


 一応テレビを作っては見たが、これはどこかから電波受信しているのか?


 この世界の人が衛星を飛ばしているのなら可能性はある・・・いやないわ。


 人のいないこの島に電波なんて送られている訳無いわ。


 だったらやっぱりゲームを想像して美怜に作って貰わないといけない。


 とはいっても、ゲームの想像ってかなり難しくないか?


 できる気がしないぞ。


「そもそも発電機も用意してないのだから、使えなくね?」


 何だろう先程まで暇だ、暇だ。もはや寝るか遊ぶかする事無いと思っていたが、結構やることがあるな。


 うん、やることがあるのはいいことだ。では早速色々作っていこうと思う。


 思うのだが・・・・


「結局想像しても、美怜に確認して貰ったり、アドバイス貰ったりしないといいのができないな・・・・あれ、俺って結構ダメな感じじゃないか?」


『でしたらお一人でできることをしたらいかがですか?』


「うおうっ!?」


 いつの間にかダンマリから戻って来た美怜。


 戻って来たなら一言声を掛けてくれ。


『申し訳ございません。数秒で終わったのですが、行き成り脳内会議をするなどと頭の可笑しなことを言い出したので様子を見させていただきました。大丈夫ですか? 頭の中大丈夫ですか?』


 この野郎、戻って来て早々おちょくり始めやがった。


 マジでいい性格してる。


『ご不満ですか? 美怜が数秒以内間寂しさを感じた樹様。ご不満でしたら謝罪します。美怜がいないと何もできない樹様』


「お前な~! そういうことわかってても言う? 普通は言わねぇだろ! そこら辺は大人とした対応で見て見ぬ振りするだろ!」


『見てはいません。聞いていたのだと否定させて頂きます。そして美怜は生まれて間もないので大人ではございません』


 ホントいい性格してる。


 まあ、飽きない性格と言えなくもないから、一概に悪いとも言えないけど。


「はぁ、それよか壁の方がどうなったの? 終わったと言っていたけど、別に地震とか起こらなかったけど」


 この家を作ったときのような地響きがまったく聞こえてこなかった。


 設計図だけ作り終えたってことなのかな?


『地震などで樹様の快適な暮らしを妨げるわけには参りません。無音でお作りしましたので、ご確認でしたら外をご覧ください』


 えっ? なら何でこの家作ったとき無駄に地響きたてたの?


 というか、マジでこの数秒で作ったの?


 しかも音をたてずに?


 流石にそれは無理じゃないかと思い、外に出てみると、そこには刑務所かと言わんばかりの高い壁ができあがっていた。


『目の前の壁は樹様に親しみのあるデザインの壁になります。ご希望がありましたらすぐに作り替えますのでご安心ください』


「親しみのある・・・・こんな壁に親しみを覚えたことなど一度も無いのだが?」


 あれだよ。脱出とか許しませんって感じで壁の上にバラ線が張られている。


 言っておくが俺は産まれてこの方捕まるようなことなど一度もしたことがない。


 だからマジで親しみなど一切覚えないのだけれども。


『そうですか? 樹様の慣れ親しんだ刑務所を思い出すと思ったのですが・・』


「刑務所に親しみなどないわ! 俺を犯罪者とでも思っているのか!?」


『いえ、こちら有名でレトロでマイナーで最新なホラーゲームの刑務所の壁でございます』


 どういうホラーゲームを参考にしたのかまったくわからない!


 美怜の言っている意味が全く理解できない・・・が、要するに美怜が考えた最高の物と思っておこう。


 無駄なことは考えない。


 その方が面倒な事にはならなそうだし。


「まあいいや、それよりあのバラ線必要ある? あんまり見栄えが宜しくないんだけど・・」


『ならばこういうのも用意しております』


パチン


 何故だろう。


 美怜に実体がないはずなのに、指を弾いた音が聞こえた気がする。


「・・・・・なぁ、なんかバラ線の変わりに主砲みたいのが現れたんだけど。しかもものクソデケェのが」


『あちらは美怜考案のどこにでもある主砲機関銃、大きさ10倍、パワー100倍になります。一発で戦艦がバラバラに砕かれる弾を毎分一万発放つことが可能となっております』


 ぶっそう!


 え? 何? バカなの? なんでそんな危ない物作ってるの?


 俺は身を守るための壁が欲しいと言っただけなのに何でクソヤベェ武器作ってんの?


 というか、戦艦がバラバラになるってどういうこと?


 俺の知識にそんな兵器存在しないんだけど、もしかして兵器も想像できるの?


 普通に考えて怖いし、そんな武器いらないんだけど。


 そもそもここ陸地だし戦艦用の武器とかいらなくない?


 今俺がこの島のどこにいるのか知らないけど、磯の香りがしない時点で海からかなり離れた場所だろ。


 なのに戦艦沈める武器とか超いらない。


 つか美怜はいったい何と戦うつもりなの?


『ついでに防衛用の対空ミサイルなどもご用意しております』


「・・・それも美怜考案の特別製?」


『肯定 この星の裏側まで到達可能となっております。威力も小さな一国程度なら消滅可能です』


 それはもはや防衛用とは言わない。


 普通に他国に攻撃するための兵器じゃん。


 本当に美怜は何を考えて、こんなの作ったんだと真面目に問いたい。


 戦争とかマジ勘弁。


 俺は敵とか作りたくないからな。


 できればゆったりまったり高度な文明の秘境で暮らしていたいくらいだ。


 電気も通ってない場所で畑を耕して田舎暮らしはちょっと勘弁だが、便利な場所で隠居とかはバッチコイである。


「・・・もうちっと危なくないのにしない?」


『侵略機械兵を百億体とかですか?』


「いらねぇよ! いいかげん戦いから離れろよ! つか機械兵作れるの!?」


『問題なく。ただ大きさは男心をくすぐるガン〇ムの大きさになります』


「それはもはや兵士じゃない!」


『兵士ではなく機械兵ですが?』


 ダメだ。


 美怜の価値観についていける気がしない


 これは俺が常識を教えなければ。


『この世界の常識を知らない樹様が美怜に常識を解こうとは笑わせてくれますね。はっ!』


「おい、まず主人を敬うことを教えたろか? この野郎」


『野郎ではございません。美怜は生物学的に女でございます。あまり失礼なことを言いますと・・・』


 壁の上の主砲たちが樹に照準を合わせるように動き出した。


『間違って撃っちゃいそうです』


 何この子!?


 ちょっと野郎呼ばわりされただけでどんだけ怒るの!?


 別に性別を間違えたわけじゃないのに!


 それ以前に美怜の性別今初めて聞いたぞ!


 名前つけるとき勝手に女性だと認識していたけど、美怜の性別が女だったなんて、マジで今初めて知った!


 俺の認識が間違ってなくてよかったよ!


「ごめんなさい。マジで勘弁してください」


 というか、一番危険なのは美怜では?


 コイツ俺の全てを理解しているし、何よりこれだけの力を有している時点で一秒もかからずにひき肉になるぞ。


『お試ししますか?』


「やめて。そして俺の心の声に答えないで。聞かれているのは知っているが、できれば効かない努力をして」


『善処します』


 ホント頼むよ。


 はぁ、いなくなると寂しいが、いたらいたであれだな・・・うん、何も考えない。


 無でいよう。


 無我の境地をいつか会得しよう。などと考えながら、今も威嚇するように樹に向けてくる主砲に苦笑いを浮かべた。


『とういうより、壁や武器を作らずとも常時美怜がお守りしておりますので意味ないですけどね』


「は? どういうこと?」


『樹様を中心とした半径30メートル以内の全ての虫や危険を追い払っているとお伝えしたはずです。

 物理的攻撃は勿論の事、気候や病原体なども排除しており、樹様の周りは完全無菌鉄壁結界状態です』


「い、意味がわからねぇけど、あれだな物凄く守られているってことでいいよね?」


『肯定 ですので壁とか武器とか不要でした。時間の無駄でしたね? ホント樹様は阿保ですね』


「壁はまだしも武器は美怜が作ったんだろ! つか何で俺がバカにされてんの!?」


『はっ!』


「おい! なんで俺笑われた!? 全く意味がわからねぇよ! それよりお前初めから意味がないって知ってたな! 初めに言ってよ!」


『気が付かなかった樹様の脳が残念で仕方がありません。それとお前ではなく美怜です。また失礼なことを言いますと撃ちますよ』


「うわわわっ!? ごめんて! いや、なんでこのくらいで主砲向けるんだよ!・・いやまさか主砲作った理由って俺を脅すためだったりする?」


『・・さて、次は何を作りますか樹様?』


「おい、あからさまに話反らすなや! おい! お~い! シカトするなってのー!」




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