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 生活に必要な道具を想像しては美怜が作り上げていく。


 そして、数十分後にはそれなりの部屋を用意することができた。


「思ったより時間がかかった」


 俺に想像力が低いせいもあるかも知れないが、そもそもこの力はあまりに融通がきかない。


 ベッド一つ想像するだけで、部屋のどこにどんな風に設置するか明確に想像しなければならないのだ。


 でないと、変な場所にベッドが現れたり、はたまたなぜか介護用のベッドが作られたりする。


 無から有を生み出せるのは凄いが、扱いが難しいぞ。


「まっ、そのうち慣れるだろ!」


『慣れないのでしたら、美怜が全てご用意しますが?』


「どうせホラー物一色だろうから遠慮しとく。それより寝床ができたんなら次はこの世界といよりも、この近くに村が無いのか聞きたいんだけど」


 そもそも人が住む場所に向かっていれば、こんな森の中に住居を作る必要はなかったなと、今更ながらに思う。


『この小島に生存する人型生物は確認できません』


「はっ?・・・えっ? マジで? この近くに人いないの?・・・・・ということか、今小島とか言わなかった?」


『はい、いいました』


「は? なにここ島なの? もしかして俺がいるところ孤島なの?」


『肯定。この小島には貴方様以外に人型生物は存在しません』


「・・・マジかよ」


 異世界きて早々サバイバル生活からの島脱出みたいなストーリーになるのか?


 キャンプは好きだが、サバイバルはしたくないし、そもそもその辺の知識は全くないのだが・・・。


『衣食住を心配する必要はないと宣言します。脆弱な樹様を脅かす者は美怜が排除し、お守りいたします』


「そりゃどうも」


 イケメンな事を言っているのだが、なぜか同時にディスられる。


 確かにサバイバル能力皆無な俺が、自然界で生きていくことなどできないだろうから脆弱なのは間違いないが、なんか納得いかない。


「じゃあ、ある程度ここでの生活が安定したら人のいる場所に行くために船を想像できるようにならなくちゃいけないな」


 流石に数週間程度で人恋しくなることはないが、それが数カ月、数年と続けば精神的に病む可能性がある。


 そもそも、せっかく異世界に連れて来られたのだ。


 異世界人に会ってみたい。


 髪染めした偽物ではなく、生まれながらに受け継いだ天然物の赤とか青色の髪を見てみたい。


 絶対作られた色より綺麗だろうから。


『樹様は髪色フェチなのですか? 変態ですね。気持ち悪いです』


「おいこら、誰が変態だ。綺麗な物を見たいという心理は至って普通の事だろ!」


『その心理は女性限定なのではありませんか?』


「聞くまでもないだろ? 誰も同性の髪を好んで褒めるわけないじゃん」


『なんの躊躇もなく言い張るその姿・・なんとも気持ち悪いですね』


「なんでだよ!」


 男として至極当然のことしか言っていないはずなのに、気持ち悪いと言われる意味がわからない。


 もしかして、人の髪色が気になるのはとても変な事なのか?


 だけど、地球では絶対お目にかかれない代物だぞ。


 五月蠅いギャル達や、頭のネジぶっ飛んだメルヘン女でも無い普通の女性が、違和感なく当たり前の様に存在するんだ。


 見てみたいと思うのは普通の事だと思う。


『何やら色々言い訳しているようですが、やめてもらえませんか? 物凄くウザキモいので』


「だったら人の心読むなよ!! つか、キモイキモイいうな! 傷つくだろう!」


『それは申し訳ございません。反省致します。この程度で傷つく変態な訳ねぇだろと申し上げたいところですが、今後キモイは使用しないと多分誓います』


 全く反省していないし、暴言が止まらないのだが・・。


「美怜は俺のこと嫌いだろ」


『私に好き嫌いと言った感情は存在しません。ただ樹様に快適な生活を送って頂けるよう全力でサポートするだけでございます』


「・・・・・・・・」


 好き嫌いの感情はなくとも気持ち悪いと言う感情はある。


 そう考えると、美怜の感情が無い説は成り立たないことになるが、この子はそれを理解しているのだろうか?


 いや、もしかしたら人を煽ることに特化して作られているのかもしれないから、美怜の言葉を全否定することはできない。


(まっ、感情の無いロボットでないことを祈ろう。毒舌だろうが、話し合える存在が傍にいてくれるだけで安心するし)


 まあ、だからと言って日頃から暴言吐かれたくないので、もう少しお淑やかになって欲しいと樹は切実に願った。


 そのために綺麗な名前を考えたのだから。


「そういや。さっきここは小島だとか言ったよな。人も住んでいないって言っていたし、ここは小さい孤島でただの無人島と考えていいのか?」


『肯定 この小島の面積は・・・・数値で言っても理解できないと判断しましたので、オーストラリア大陸並みと答えます』


「オッ!? オーストッ!? それはもはや島と呼んでいいだろ!!」


『いえ、小島です。この程度の面積では島とは認めません』


「いや、オーストラリア大陸はどっからどう見ても島『認めません』お、おう」


 なんでそこまで意地を張るのか意味がわからないが、否定しても考えを変えそうになかったので、樹が折れることにした。


 というか、またこの子は俺の事ディスったよな。


 注意しても聞かなそうだし、もう気にしない方がいいのだろうか・・


「まあ島とか小島とかの議論は置いておい『小島です』わかった! もうそれでいいから! それより今はこの小島にどんな生き物がいるのかが問題だ。

 俺の認識だとオーストラリアほどに広い土地には危険な動物がわんさかいる。

 そう考えているんだが、間違っているか?」


『肯定』


 否定しない美怜の言葉に樹はやはり危険生物がいるのだなと、納得する。


 いくら住居があり美怜が守ってくれているとはいっても、野生動物が蔓延る自然界で生垣もない家に住むのはちょっと落ち着かない。


 流石にサイとか象などサバンナにいそうな動物はいないだろうが、それはただの希望でしかない。


 いると考えて行動すべきだ。


 ただでさえこの世界の動物はドデカイようだから警戒し過ぎるに越したことはないだろう。


「ということで、鉄壁の守りが必要だ。壁というか、防壁を作るぞ!」


 守りと言ったら壁だ。


 古来より壁は住居を守るために最適な物なのだ・・・多分


『防壁だけで鉄壁の守りが得られるとお考えのようです。失笑です』


「思ってねぇよ! 他にも掘りとか、バラ線とか用意するつもりだ」


 それ以外にも罠とか考えて付け足す予定。


 パッと思いつくのが落とし穴くらいしかないし、そもそも防壁ってどんなのいいのかわからないけど・・・どうにかなるだろ!


 こんなことなら防衛ゲームやクラフト系のゲームで遊んでいればよかった。


『あまりに知識不足。全く持って効率の悪い想像ばかりです。これなら代わりに作成致しましょうか?』


 確かにそうすれば簡単なのだろうが・・美怜のことだから変なの作りそうなんだよなぁ。


『至って普通の物を作成致しますよ。本当ですよ?』


「なんとも嘘クセェ・・・・・・・まあ、俺じゃあ作れそうになさそうだし、頼める?」


『good luck』


「どういう返しだ。意味がわからねぇぞ」


 一日もたたずして壊れたか?


『樹様の脳内に任せろと言う英単語が存在しませんでしたので、馬鹿でも理解できる単語で受け答えさせて頂きました』


「おいこら! 誰がバカだ! 誰がっ!!」


『馬鹿の漢字も書けなさそうな貴方様の事を言っているのですが、ご理解できないようで美怜は悲しゅうございます。では、これより壁の作成を致します。邪魔にしかなりませんのでお下がりください』


 そう言うと、美怜は俺の声に反応せずに黙り込んでしまった。


 ホントこの子は名前負けしない程度には優しくなって欲しいと切に願う樹である。


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