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「ねぇ、君ってさ。結局どんな存在な訳?」


 食事がすんで、一休み中に改めて疑問を投げかけて見た。


 俺の身体に定着するとか言っていたが、まあそれは後で聞こう。


 それよりも彼女? という存在がどういうの者なのか知りたい。


『貴方様のサポートの為に作られたモノです。どうぞお好きにお使いください』


 ああ、安定の定型文ですな。


 心が読める時点で、こちらが何を聞きたいのかわかっていると思うんだが、答えたくないのかなぁ?


「えっと・・もう一度だけ聞くね。君ってなんな『貴方様のサポートの為に作られたモノです。どうぞお好きにお使いください』おおう・・・」


 今度は食い気味に定型文を伝えてきた。


「・・俺の身体に定着したって言っていたけどそれってどういう『貴方様のサポートを円滑にするためです』おおう・・・」


 これってやっぱり彼女の事をあまり強く突っ込むなってこと・・なんだろうな。


「・・わかった。わかったよ。なら、名前は? 名前くらい聞いてもいいだろ?」


 流石に君とか、ましてやお前とか失礼な呼び方で今後呼びたくはない。


 それが原因で仲が悪くなるとは思えないが、それでも気を付けておくべきだろう。


『名はありませんし、不要です』


 そう思っての問いかけだったのだが、なぜか名前が無いと言われてしまった。


 しかもいらないと言うので何とも反応に困る。


「名前が無いのは・・生まれたばかりだったら仕方がないのかな? だけど不要ってどういうこと? 名前は無いと不便だと思うけど」


『必要性を感じません。貴方様が私を呼ばすとも、貴方様の生活のサポートは全てこなせます。望むままに御命じ下さい』


 感情があるような話し方をするのに、たまに感情の無い本当のロボットのような話し方する。


 そう設定されているのか、作られているのかわからないが、なんか変な感じだ。


「う~む・・・・なら勝手に名付けしてもいい? 流石に君とかじゃ嫌だから」


『ご随意に』


 口の悪いサポーターさんの許可も得られたので、名を考えることにする。


 無機質な声とはいえ、その声は女性の声。


 若干勝気っぽそうなきつめの声で、立ち位置的に秘書っぽい人物像を想像させられるが、なんかこの子はそんな感じには見えないんだよなぁ。


 モモとかヒナとか、そう言うポワポワしたキャラとも違うけど。というより、絶対そんな性格じゃない。


 それだけは断言できる。


(口が悪い・・もとい、遠慮のない女性の名前・・・思いつかないなぁ)


 気の強い芸能人というか音楽家と言うか、毒舌な人達から取ってもいいが、流石にその名前を呼んで顔が浮かぶのはなんか嫌だ。


 別に嫌いでもないが、好きでもないのだから。


 そもそも名前と言うのは、その子がどういう風に育ってほしいといった、願いからつけるようなモノだと思う。


 元気に育ってほしいから元気と書いて「もとき」と呼ばせたり、優しく育ってほしいから優子と名付けたりする。


 ならば、今の口調があれで、性格がちょっとあれだとしても、この子が今後どんな風に育って欲しいと言う願いに基づいて名づけをしよう。


「・・・・・・・・・美怜とかどう?」


 美しいの「美」に、賢いの意味を持つ「怜」を合わせて美怜。


 怜には「賢い」「慈しむ」と言った意味も含まれているので、どうか清らかで優しく愛情深い人になって欲しい。


 まあ、後は怜って漢字がクールなイメージなので名前に付けてみた。


 即興で考えたわりには結構いい名前だと思うのだが、気に入ってくれるだろうか?


『・・・・・・了解しました。私は今日から美怜と名乗ります』


「・・・不満があったら、美怜以外にも他の名前も考えるよ?」


『不満と言った感情を美怜は持ち合わせておりません。ただ、貴方様に美怜と呼び捨てにされるのはいささか腹が立ちますので、どうぞ美怜様とお呼びください』


「なんで!?」


 名付け親なのになぜか様付で呼べと強要してくる。


 普通ここは名付けをしたことによって、ちょっとは二人の距離が縮まり今後ともよろしくね~って流れになるんじゃないの?


『縮まるとか気持ち悪いですね。どこぞのハーレムラノベ的展開を望んでいるようでしたら貴方様はアイタタタタな痛い子です』


「そこまで望んでないわっ!!」


 そういうのじゃなくて、仲間的な感じで絆が深まるのを望んでいたのだ。


 流石に声が女性だとしても、行き成りそっち系に想像するわけがない。


「はぁ・・・まあいいや。それより改めてよろしく。俺は島田 樹。漢字は・・」


『説明は不要です。貴方様の情報は全て把握しております。島田 樹 21歳独身 身長169.4㎝ 体重102㎏ 血液A型 1999年8月8日の11時47分生まれ 出生体重3,076g 出生身長49㎝ ハイハイしたのは3月4日 13時26分32秒 立ち上がりは6月4日10時04分17秒 離乳食を始めて食べたのが・・』


「お、おう、わかった。わかったからもういい。つか何でそんなことまで知ってんの!?」


 俺の個人情報モロバレしてんじゃねぇか。


 しかも、出生体重とか俺知らねぇのに、スラスラ答えるとかこの子ヤバくね。


『美怜は貴方様の全てをサポートするために作られました。貴方様のあらゆる情報を得ていることは至極当然のことです』


 当然じゃないと思う・・・。


 思うけど美怜の存在がよくわかんないし、なんだか悩むだけ無駄っぽい。


 うん、考えるのはやめよう。


「・・・まあいいか。それよりサポートしてくれると言うけど、他にも何かできるの?」


 今のところ湧き水に案内してくれたり、ラーメン屋ごとラーメン作ったりしてくれたりした。


 もうその時点で色々ツッコミたいし、それ以上に何ができるのか興味がある。


『全てをお望みのままに御用意致します。なんでもおっしゃってください』


「いや、なんでもってなに? このラーメン屋みたいに、俺専用の家でも用意してくれと願えば用意してくれるの?」


『家ですね。了解しました。どのような家に致しましょうか?』


「はっ? どのようなって・・・・一般的な?」


『ではサ○エさんのエンディングに出てくる家をご用意します』


 なんか、冗談で家が用意してくれと言ってみたら、なぜかサザ○さんのエンディングのを用意するとか言ってきた。


 チョイスする家が可笑しいのを指摘すればいいのか、家を作ることを了承するのを指摘すればいいんかわからんが。


 どーん!


 まず、何処からともなく目の前に現れた家を指摘することにしよう。


「おいーっ! 家が突然現れたぞ! いったいどっから出した!?」


 ラーメン屋を作り出されるときは内装から作られ、外装も静かに作られたはずだ。


 なのに今度の家・・・家と言うか小屋?はなぜか行き成り現れたぞ。


『出したのではなく作成致しました。ここは貴方様に下賜された島です。願えばあらゆるものが・・・いえ、大抵の物を手に入れることができます』


「ま、まじ?」


 さすがになんでも手に入る訳ではなさそうだが、それでも何もない所から家を作り出したのだ。


 それだけで美怜の力は人知を超えているのは理解できる。


「な、なぁ、それなら、食後のデザートが食べたいとか言えばなんか出てくるの?」


『無理難題を申されないのでしたら、大抵の物はご用意できます』


 デザートで無理難題ってなんだ?


 バベルの塔並みのケーキが食べたいとかかな?


「じゃあ・・・・北海道の札幌にある白い恋人のソフトクリームのブラック1つ。サイズはジャンボで」


『どうぞ』


 美怜が言葉を発すると同時に、目の前に椅子とテーブルなどが現れ、テーブルの上にはソフトクリームが用意されていた。


 ラーメン屋とは違い、おしゃれな机や椅子なのは勿論、今さっきまで立っていた場所まで大理石に加工されている。


 なぜかソフトクリーム一つ食べるだけなのに、それ用の銀のスプーンまで並べられている。


 どこぞ貴族様の食卓だとツッコンだほうがいいのだろうか?


 なんか色々無駄に高級品が付属されたおかげで、ただ庶民の食べ物であるソフトクリームが変貌しているように見える。


 嫌な感じではないが、なんか落ち着かない。


『お気に召さないのでしたら、こんなものもございます』


 そう言うと、豪華で煌びやかだった空間が消え去る。


 そして代わりに出てきたのは、ボロボロの机と人の血がこびりついた汚らしい椅子だった。


 ホラー映画に使われていそうなセットが用意されている。


 おもちゃのハエとか、ゴキブリとかいて物凄くおどろおどろしい。


「なんでこれをチョイスした!? どう考えても食欲減退だろ!?」


『バイ〇ハザード しながら食事していたり、ハードな戦争映画を見ながら平然と食事をしていたりと記憶しております。こういう汚物を見ながら食べるのが好きなのかと』


「んな訳ないだろ!!」


 菓子パン齧りながらゲームしていたことも、食事しながらかなりグロイ映画を見ていたことは認めるが、あれは所詮作り物であると認識していた為、気持ち悪くならないだけだ。


 血が噴き出そうとも、血肉が舞おうとも、現実では無く、フィクションで作りものだ。


 どんなにリアルに再現されても作り物と認識している時点で気持ち悪くなるわけがない。


 まあ、母はそう言うグロシーンになると気持ち悪くなると言って目を背けていたので、人それぞれだと思うが。


「普通のにして、変なオプションとかいらないから」


『・・・了解』


 どことなく美怜の声が不満ありと言いたげだったのだが、もしかしてこの子はグロ系好きなのか?


 それとも自分のチョイスを否定されて怒ったのか?


 そう言う趣味の持ち主だとか思いたくないな。


 別に否定はしないが、受け入れられるかどうかは微妙だぞ。


 それから、美怜は樹の要望通りに机と椅子を用意したのだが、どうにも不満そうにしていた。



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