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生意気なサポーターが指示した場所へ赴くと、そこには小さな湧き水があった。
生水を飲むと腹を下すことはわかっていたので、最低でも沸騰するくらいはしなければいけない。
そう思いつつも、沸騰させるための器も無ければ、火を得るための道具もない。
これは困ったぞと考えていると、案の定その考えを呼んだサポーターがそのまま飲んでも問題ないと言って来た。
人体に害を及ぼす雑菌は無く、とても澄んだ水であると言われ、俺は恐る恐る飲んでみることにした。
「う、うまい!」
喉が渇いているせいでもあると思うが、今までの人生で一番うまい水を飲んだ気がする!
『この程度の水で来世も含めて一番美味しいとはいったい今まで何をお飲みになっていたのですか? 汚水ですか?』
「汚水など飲んでないわいっ!」
この子何なの。
意味もなく俺の事ディスって来るのですけど! 俺なにかこの子に酷い事した? 嫌われるようなことした?
『私は貴方様に酷い事をされていませんし、嫌っておりません』
「あ、はい、ならよかったです」
『まあ、別段好きでもありませんが』
「・・・・・・・・」
いや、好きじゃないのは想定内だし、そもそも初対面(対面してないけど)だから仕方ないとは思っているけど、なんかあれだな・・・上げて落とすなといいたい。
『水も飲みましたし、次は食事を生み出しましょう。僅かではありますが、貴方様に定着できてきたため、力が使えそうです』
えっ? なに。なんか色々ツッコミどころ満載の言葉が出てきたんですけど。俺に定着とかどういうこと?
この子バイキンとかそういう分類の子なの!?
「あいてっ!?」
なんだぁ!? 今何かに殴られたぞ!?
『失礼なこと言いますと殴りますよ?』
「えっ? 今殴ったのは君なの? つか! 殴れるの!?」
どうしよう。
声だけなのかと思っていたら物理攻撃も可能のようだ。
「というか、枝が宙に浮いているのですが・・」
『はい、そちらで叩きました』
殴ったこと肯定したんですけどこの子。
普通言ってから殴るよな。
あれか、お約束的な殴った後言う的なやつか?
『さて、バカなことしていないで、ご飯と食べてください。豚の餌ならそちらにご用意しておりますから』
「豚餌ってなんだ豚の餌って・・・・あ~、うん。なんとなく言いたいことはわかるけど、これをそういう風に言うのはやめてくれない? 俺にとって好物な料理なんだから。というかなんでここにこれがあるの!?」
大半の男性は好むであろう。
色々なトッピングがマシマシされた二十郎系ラーメンが、いつの間にか用意されていた。
しかも机いや椅子も俺の記憶にある店舗の内装そのものである。
外装だけ取っ払って、内装だけ剥き出しにされている感じで微妙だけど・・。
「これどうなってんの!? これどう言う事!? こんな森の中にも二十郎系は店舗展開してたの!? 異世界までのれん分けとかしちゃってるの!?」
『さっさと食べてください。ロットを乱すのはマナー違反ですよ』
「俺以外に客いねぇんだから関係なくねぇ!?」
『いいから早く食べてください。食べないなら下げますよ?』
「えっ、あ、いや、食べる! 食べるからちょっと待って!」
何だろうな。
色々と聞きたいというかツッコミたい。
朝から二十郎系のマシマシラーメンはキツイだろとか、いつの間にかラーメン屋の外装作ってんだよとか、著作権とか大丈夫なのとか、本当に色々と突っ込みたいが、食えるときに食っとかないと、今の状況ではヤバイと思うので、質問は後にすることにした。
「ねぇ・・・なぜか全然モヤシとか、その他もろもろのトッピングが減っていかなんだけど・・」
『そちらは私特製の帰さないラーメンです。どこぞの豚餌製造店などには負けません』
「豚餌製造店とか言うなよ! 女の人からしたら脂ギトギトなのは嫌悪されるかもしれないけど、これ男にとっては、めっちゃうめぇもんなんだからな! いやまぁ、受け付けられない年齢層も受け入れられない人もいるけどさぁ・・・」
そもそも、帰さないラーメンって何。
ネーミングがちょっと怖いんですけど・・。
『運動部、土方、“デブ”しか食べ無さそうな餌ですものね』
「・・・なぜだ。なぜか最後のデブが強調された気がするのだが、気のせいか?」
『・・・さぁ?』
なぜだろう。
この子に姿形があれば凄くバカにされた感じで目を逸らされたと思う。