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 どれほど歩いたのかわからないが太陽が登り、薄暗かった森に光が差す。


 木々の合間からの木漏れ日がなんとも美しい事か。


 都会ではまず味わえない森林浴に気持ちが躍る!とてもすがすがしい気分だ! などと危機感を覚えず能天気な事を言える状況であればよかったのだが、


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぶぅ」


 残念なことに、感動を覚えている暇もなく今の彼は疲労困憊であった。


 舗装されていない森の、無駄に生い茂った草木を掻き分けて進むのだ。


 更に言えば、ハイキングや山登り専用の服装ではなくスーツ姿に、滑り止めなどないに等しい革靴。


 歩きにくいったらありはしない。


「ぜぇぜぇ、ぶぅふぅ・・もう、無理」


 流石に歩き続けるのも体力の限界。


 彼は地面に横たわり荒い呼吸を繰り返す。


 運動不足の都会っ子に大自然での散歩はキツ過ぎる。


「ち、ちくしょう。喉が」


 かなり歩き続けているのに、水の音も湿った地面さえも見当たらない。


 森の中ってこんなに水が見つけられないものなのか?


 そもそも、虫や動物も見当たらないのだけど、朝だから見当たらないだけなのか?


 なんかこの森の中には自分一人しかいないみたいでちょっと不安になる。


「み、水が飲み、てぇ、ああくそっ! 喉乾いた!」


 誰もおらず、自分一人しかいないこの状況が不安になったのか、彼は思わず声を荒げた。


『でしたら、向かって左に歩くべきだと進言します』


「!?」


 そう不満を口にした瞬間、不意に頭の中に女の声が響き渡った。


 先程のような偉そうな声ではなく、無機質な機械的で事務的な女の声が。


「誰だ!!」


『貴方様をサポートする為に作られたモノです。どうぞお好きにお使いください』


「サポート? いや、なんだよそれ。意味わからないし。そもそも何処にいるんだ?」


『貴方様のサポートの為に作られたモノです。どうぞお好きにお使いください』


「・・君人の話聞いてる? サポートってなに。そして君はどこにいるの?」


『支援する。応援する。でございます』


「誰がサポートの意味を教えろっていったかな!? えっ? なにコイツポンコツなの!?」


『私は貴方様のサポートの為に作られたとびきり優秀なモノです。どうぞお好きにお使いください』


「あっ、なんか今少しだけ変わった・・・・とはいっても質問には答えないのね」


 俺の脳内に話しかけてくる機械ポイ女性がバグっているのだが、というよりサポートするために作られたとか言っているが、作った奴はあの偉そうな声の主なのだろうか?


『肯定』


 ん?・・・今俺の心の声を読まなかったか?


『肯定』


 それとも壊れたレコードのように肯定をリピートしているだけ?


『否定』


「・・・・君マジで俺の考えている事読めたりする?」


『肯定』


「・・・・・・・・・」


 何それ怖いんだけど、人の考えが読めるとか超能力者じゃん。


 つか、あの声の主が作ったとか言っていたから、声の主は神様とかそういうのではなくて、生物学者とかかな?


 SF的に俺の脳内にこの女性の言葉が聞こえるマイクロチップ的なモノを埋め込んだとか。

 そう考えると科学者でもあるのかも・・・・どちらにしても碌でもない。


『声の主は生物学者でも科学者でもなく、神に近しい神ではない存在です』


 神に近い神ではない存在ってなに?


 仙人とかか?


『失笑』


 えっ? 今俺の事バカにした?


『こうて・・・・・否定』


「おい、嘘こくなや!! ぜってぇバカにしただろ!」


『貴方様の心身に疲労がみられます。至急水分を補給し、休息と取るべきと進言します』


「あからさまに話をそらすなよ! えっ? 何この子、煽り機能とかあるの? 君もしかして人格とかあるロボット系?」


『否定。私に感情はなく、人格は存在しません。アホダ様』


「そうか、流石に人格までは無いか・・・ん? いま俺の呼び方可笑しくなかったか?」


『気のせいでございます。それより、さっさと水分補給すべきだと進言します。ノロマ様』


「気のせいじゃねぇだろ! つか隠すなら最後まで隠せよ!」


『肯定。気を付けます』


「おう、素直だな・・・・・・・・ん?」


 なんか今凄く可笑しくなかったかと思いつつも、こんなところで問答をしているより、さっさと水を得なければと考え、生意気なサポーターの指示する場所へと歩き出した。




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