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転生先は貴族令嬢!!




う…眩しい…


鋭い陽の光を感じ、ゆっくりと目を開けると、そこは映画に出てきそうな豪華な部屋が広がっていた。





天蓋ベッドに、中世ヨーロッパをイメージさせる家具。暖炉まである。


天井は家の何倍あるんだろう。




ん…家?



そういえば私、なんだか胡散臭い神様に言われて転生したんじゃ…ここは?



私が寝ている場所はフカフカして、ベッドの上のようだった。

でもこれは、子供用のベッド???




コンコン、と突然優しいノックの後、正面の扉が開く。


「お嬢様…」



女性が部屋に入ってきた。

メイドのような服を着ていて、表情はすごく嬉しそうな笑顔だ。



「あー」


あれ?

言葉を話そうと口を開いても、言葉が話せない。



「お目覚めになられたのですね!すぐに奥様をお呼び致します」



軽くメイド姿の女性はお辞儀をして、すぐに部屋の外に出たかと思えば、ものの数秒でもう1人女性を連れて戻ってきた。




「あら、まあ。可愛いユーリア、おはよう。ここが今日からあなたのお家よ。」



ニコニコと美しい笑顔のその女性は、高そうな煌びやかなドレスを着て、髪の毛も綺麗なアップにセットされている。

栗色の美しい瞳にが印象的だ。


私の前世のお母さんよりは若い。30代くらいかな。



ユーリア。それが私の名前だろうか?

本当に私転生したのかな?





「レア、ユーリアが目覚めたのかね?」



またもやドアが開いて、

入ってきたのは背筋のピシッとしたダンディな男性。

子綺麗な雰囲気で、綺麗な黒髪をビシッとオールバックにまとめている。なんとも威厳がある人だ。



「はい、あなた。この日を待ち焦がれて居ましたわ。あぁ、ユーリア。可愛い私達の娘…」



この2人は、この世界の父親と母親…。

状況から察するに私は今日生まれたばかりかな。

さっきの最初の女の人は本当にメイドさんなんだろう。高貴なお屋敷っぽいし…。

なんだかすごい場所に転生したみたいだ。



「抱かせておくれ」



父親の男は、私をフワッと抱き上げた。



赤ちゃんの頃はみんなこんな気分なんだろうか。

なんだか人に抱いてもらうなんて不思議。



「あらまあ可愛い。泣かないわ。きっと居心地が良いのね」



ニコニコと母親の女は笑っている。


父親と母親…。

この2人は今はきっと愛してくれているのだろうけど、前世同様、状況が変わればどうなるか分からない事も私は経験済みだから。


この男の腕の中は悪い心地はしないけれど、

過度に期待しないことだ。



その点、神様に記憶を残してもらって良かったのかも。





2人はとても幸せそうに、私を囲んでふふふと笑う。

メイドもニコニコと微笑ましそうにその様子を伺っている。




なんだか、慣れないなあ…。








それからいくつか月日が流れた。


初めて寝返りを当てた時は、両親もメイドもこれが親バカかと言うほど褒めてくれた。



話せる様になると両親を呼ぶと、2人は感動して涙ぐんでいた。


歩ける様になると、母親は拍手して応援してくれていた。




ここはどうやら貴族の家系らしく、出てくる料理も洋服も、全てがとても良いものの様だ。

ご飯も美味しいし、辛い事もない。

前世よりもとても平和に暮らせた。




毎日父親も顔を見に来て幸せそうに笑ってくれる姿を見ると、良かった、まだ今日も愛されている。と安堵出来た。



いつのまにかベビーベッドから天蓋付きのベッドにランクアップした。私にピンクが似合うのでは、と母が選んでくれたものだ。



毎年誕生日にもかかさずプレゼントをくれた。

ユーリアはすくすくと両親やメイド達に愛しまれて育っていった。




そして迎えた5歳の誕生日ーー。





「ユーリア、おめでとう」



「ありがとうございます、おとうさま」




少しばかり社交マナーも覚えて、

可愛らしいドレスを着て、迎えた誕生日パーティ。



パーティは自宅の、嫌な程広いホールに、

著名人や貴族、その血筋の人たちを沢山集められて行われた。



そこでお父様に、紹介したい人が居る。と言われ、貴族っぽい男性に付き添われた男の子と会った。



「ごきげんうるわしゅう」



まだ話し方幼い彼は、私とさほど年齢も変わらない様に見えた。



だけど私は目が離せなかった。



金髪綺麗な髪の毛に、ぱっちりとした大きい青い瞳。誰が見ても美少年だ。


アイドルみたいだ。




「ユーリアと申します。あなた?」




「れ、レオです」



恥ずかしそうに微笑んだ彼は、笑顔がとても可愛い。


すごいな。この世界は…。



毎日平和すぎて忘れかけそうになる転生前。

でもこういう前世には絶対居ないであろう人間を見るとどうしても前世と重ねてしまう。



「ユーリアの婚約者になる子だよ」



!!!?




お父様の発言に二度見する。

婚約者!?



「よろしくおねがいちます」



噛んだことに恥ずかしそうにする目の前の美少年。


婚約者なんて…でもこの世界には当然なんだろうな。


ビックリはしたけど、受け入れないと…。



「ユーリア様、私はこの子の父です。息子をよろしくね」



ずっとレオの隣にいた男性が話しかけてきた。

なるほど。貴族同士の政略結婚みたいな感じかな。

でもこんな可愛い男の子が…私でいいんだろうか。


ダメダメ、お父様に恥をかかせては。


「こちらこそ、よろこんで」



フワッとドレスを持ってお辞儀をする。

婚約者…。あまり前世では聞き慣れないフレーズにまだ頭が混乱する。



ではまた、とレオと別れ、パーティに戻る。



パーティでは色々な貴族の女の子に挨拶をしたりしたけれど、婚約者のレオのことが気になって頭から離れなかった。

前世では恋なんてそもそもしたこともなかったし、嫌なことしかなかった。男の子ともいい思い出なんてない。




でもレオやお父様は

あの田舎の奴等とは違う。

一緒にするのは失礼だ。




そんなことを考えながら、ひととおり挨拶も終わり、パーティもお開きになった。

クタクタになりながら部屋に戻ろうとするとお父様とお母様に呼び止められた。


「今日は疲れたでしょう、ユーリア。でも可愛かったわ。」


「レオにもきちんと挨拶出来て、すごかったじゃないか」



お父様とお母様は褒めてくれた。

良かった、今日も間違いは踏んで無い。

愛してくれている…。




色々な事を考え過ぎて疲れた身体で部屋のドアを開けると、



!!



そこにはベビーベッドからグレードアップした、天蓋ベッドにどどんと寝そべる神様の姿があった。



「えっ…なんで!?」




「よう、ゆいな。今はユーリアか。この世界は楽しいか?」



彼は、ニヤニヤとこの世界で見た誰よりも悪そうに笑う。


5年ぶりに会った…。


神様なのに、こうやって現れるんだ。



「神なのにどうしたんだって思ってるんだろう。俺様はお前の生活に興味があるからな。見てるだけもいいが、遊びに来てみたぞ」



心の声がばれている…。



「人間の考えることを予想するなぞ容易い」



……そ、そうですか。



「…ここのせいかつ…たのしいし、へいわです。婚約者もしょうかいされたし。なにふじゆうないです」



「ふ…そうか。やはりお前の前世の記憶を残しておいて良かった」



???なにが良かったのだろうかーーー


そう考えた時、頬をがしっと掴まれ、神様が目の前で同じ目線に屈み、ずいっと顔を近づけてきた。



「運命を切り開いてみろと言ったはずだ。前のお前をぶち壊せ。」




ち、近い!!


ドンッと神様を突き放す。



「あ…ごめんなさ」

「謝るな。そういうとこが気に食わん」



少し不機嫌そうに神様は呟いた。


「ではな」



フッと一瞬で神様は消えてしまう。


「なんだったの?…」





気に食わないって言われても、ずっとそうやって生きてきた。みんなの機嫌を損ねない様に、状況が悪くならない様に…。



「あーもう寝よ!」



よくわからないけど、5年ぶりに会いに来てそんなこと言われても知らないし。




勢いよくベッドにダイブし、モヤモヤと頭に浮かんできたことを無理矢理頭の引き出しに押し込み、寝ることだけに集中した。











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