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パパと二度目の冬 ⑥


「わぁ」



 パパと一緒に山頂へと向かった。

 色々見ながら山頂に着いた頃には、日が落ちていた。



 山頂は、雪が降り積もっていて、洞窟なんかもあった。洞窟に住んでいる魔物もいた。大きな毛むくじゃらの魔物は襲い掛かってはこなかった。それにしてもこういう魔物がいるんだなって不思議な気持ちになった。



 パパが言っていた山の上の面白い光景は、光り輝く不思議な花が咲いている。

 何でこんな風に光っているのだろうか? 月明りの下で光り輝いているその花は、とても綺麗だった。




「山頂にのみ咲く花だ。月の光加減で見え方も効能も変わったりする。今日は満月だから、万能薬のような効果だな」

「……それってどうやって採取するの?」

「今の月が出ている状態で、素早く採取して空間魔法で格納すればいい。空間魔法が使えない者は、これを採取するのは難しいぞ」

「空間魔法って本当に凄くて便利な魔法だよね」




 わたしが関心しているうちに、パパがその花を幾つか採取していたそれにしても綺麗な光景で、見ているだけでワクワクしてくる。

 これだけ雪が降り積もる場所に来られる人は早々居ないだろう。わたしはパパに連れて来てもらったけれど、わたし一人だったらこんな場所に来れないもんね。




「パパ、凄く綺麗な光景だよね。こういう光景を見れるってだけで、嬉しい!」

「ベルレナが楽しんでくれてよかったよ。また月が出ていないと違ったりとかするからそれを見るのも楽しいぞ」

「へぇ。面白いね。となると、昼間はこんな風に輝いてないの?」

「そうだな」

「昼間も見たいなぁ」

「じゃあ、このまま一泊するか? 山の上で一泊も楽しいぞ」

「わぁ、楽しそう!」




 そういうわけで、わたしとパパは山頂で一泊することにした。パパがいるから、こういうところで一泊するのも何の問題もない。それにしてもパパって本当に万能感があるなぁと思う。




 パパが空間から出した小屋みたいなものの中に入る。他の所だとテントでもよかったのだろうけれど、こういう吹雪の場所だと危険だからって小屋を出したみたい。

 パパと一緒に居ると何処にいても何の問題もない。パパがいるってだけでどんな場所でも何の心配もないってすごいよね。



 ベッドでひと眠りして、起きた。




 朝になってパパと一緒に外に出て、昨日見た花を見たら――なんか、また違った感じだった。光り輝いてなくて、花弁の色がなんか違う? 昼間だとあまり目立たない感じになるみたい。月明りの下ではないと、ただの花にしか見えない。

 色も違うし、その月光花ルナティシアは夜のうちじゃないと分かりにくそう。違う花だって思って採取しない人もいるんじゃないかな。




「ねぇ、パパ、こういう状態だとどういう効果があるの?」

「あんまり効果はないな。少し痛みを軽減するぐらいか。使い方によっては毒にもなるぞ」

「へぇ。不思議な花だね」

「ああ。こういう所にしか生えてないから、ある意味幻の花とも呼ばれている。とある国の王族の病を治すために、命がけでこの花を求める者もいるぐらいだ」

「……じゃあ持っているって多分あんまり言わない方がいいものだよね」

「そうだな」




 持っているだけで戦いの種のようなものになってしまうようだ。というか、パパはそういうものを沢山持っているから、知られてしまったら大変なんだろうって思う。




 その後、パパと一緒に山を下りることになった。



 その途中で、人と獣が戦いあって、息絶えそうになっているのを見かけた。というか、人の方は死んでいる。そして獣の方は死にかけている。何だろう不思議な雰囲気。魔物なんだろうけれど、精霊みたい感じもする。




「精霊獣だな」

「精霊獣って?」

「精霊と魔物の間みたいな存在だ。普通の人だと魔物との区別がつかないから、それで狩ってしまったんだろう」

「それより、パパ。この子、助けないと」




 血をどくどくと流している真っ白な毛皮の獣。元々生えていたらしい角がぼっきりと折れている。

 痛々しい光景に目をそむけたくなる。




「いや、こいつは助けられたがってない」

《その通り……。私は、もういい》



 聞こえてきた不思議な声は、実際に耳に響いている声というより、心に響いているような声だった。わたしとパパが精霊の声が聞こえる存在だから、聞こえる声なのかな?

 それにしても、もういいだなんて……。




「もういいって?」

「精霊獣の核がやられている。魔力がなくなっているから、このまま自然に返るんだ。この精霊獣は。……精霊と関係深い精霊獣が人の手によって死んだんだ。災害は起きるだろうな」



 パパにそう言われて、わたしも注意深くその精霊獣を見る。そうすれば確かにその精霊獣には、ほとんど魔力が残っていない。自然にあふれ出ていっていた。




《私はいい。……それより、この先に卵がある》

「卵?」

《私の、子だ。その子を頼めるか? 魔導師と、その娘よ》




 それだけ言うと、その精霊獣はそのまま動かなくなってしまった。魔力も完全になくなっている。




「パパ……死んじゃったの?」

「そうだな」

「そっか……。パパ、卵、探しに行こう。別の人が、その卵持ってっちゃうかも」

「あんまりここまでくる人はいないだろうけどな。ベルレナは、その卵、回収したいんだろう。行くか」




 そしてパパに抱えられたまま、わたしはそのまま移動する。

 ――そのまま移動した先に、わたしが抱きかかえられるぐらいのぎりぎりの大きさの白い卵があった。



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