パパと二度目の冬 ②
パパと氷の国に行く準備は着々と進められている。まぁ、パパが凄い魔導師だから荷物の準備はそんなに必要ないけど。
「ねぇねぇ、パパ、楽しみだね」
「ああ」
パパはわたしの言葉に、頭を撫でてくれる。
パパに頭を撫でてもらえると、とても幸せな気持ちになる。
氷の国ってどんなところなんだろうって、書庫で氷の国に関する本を読んだりしているの。でも本で読むだけだとやっぱり想像がつかないんだよね。
それにしても氷の国かぁ。
雪が凄く積もっているんだよね。この屋敷のある場所も山の上だから雪は結構降るけれども、それとはくらべものにならないぐらいきっと降るんだよね。
屋敷は雪かきしなくていいようにパパが魔法を使っているけれど、そういう国の人はどうするんだろう? やっぱり魔法を使っているのかな? その土地その土地で使われている独自の魔法などを学べたらそれはそれで楽しそうな気もする。
そういう魔法を知って勉強していけたらきっと楽しそうだよね。書庫の中にも、独自の魔法がまとめられた本はなさそうなんだよ。パパの屋敷の書庫って、沢山の本があるけれどやっぱりない本もあるんだよ。
いつか、そういう本があるかとか沢山本があるっていう図書館にいったら探してみようかな。ニコラドさんが学園には図書館があって、とても蔵書が多いって言ってたんだよね。
学園に入学するとしたら、読めるんだよね。
そう考えると学園に通いたいなって思いがより一層大きくなった。
氷の国の情報を読もうとしていたのだけど、書庫には沢山の本があってついつい色んな本を見てしまう。
そうやって氷の国についての話をパパと話したり、それについての本を読んだりして過ごした。友達やニコラドさんからの手紙の返事も書いた。お友達には氷の国に行くことは書けないけれど、ニコラドさんには話せないことはあまりない。街で出来たお友達は、パパが魔導師なことは知らないしね。
あと屋敷の外でパパと雪遊びをしたりもしたよ! とても楽しかったの。魔法を使いながら、パパと一緒に雪で遊んだの。ただ遊んでいるだけじゃなくて、魔法を使いながら遊ぶことで魔法の練習にもなるんだよ。
「ベルレナも魔法が大分上手になってきたな」
「本当? パパに褒められると嬉しいなぁ」
パパに褒めてもらえて、わたしは嬉しくなってにこにこ笑ってしまう。
あと氷の国でも使えるような魔法についても教えてもらったりしたの。パパが一緒に行くから問題はないだろうけれども、それでも何かあった時のことは考えた方がいいから。
もし一人で雪の中に放り出された時はどうしたらいいかとか、そういう何かあった時の可能性のことを考えてくれているのだ。そういうのを見るとわたしのことを心配してくれてるんだなって思う。パパは素直じゃないけれど、そういうところがパパらしいなって思う。
氷の国だともっと違う遊び方も出来るのかな?
「ねぇねぇ、パパ。氷の国に行ったらもっと違う遊びもしてみようよ!」
「ああ」
パパはわたしの言葉に頷いてくれた。
さてそれから少し経って、わたしとパパは氷の国に向かうことになった。
パパと手を繋ぐ。そして視界が変わっていく。
「わぁ」
吹雪。
そう呼ばれるものが吹いている。
雪がしんしんと、穏やかに降り積もるのではなく、荒れ狂う風が巻き起こっている。視界も厳しい。氷の国っていうのは、そういう場所にあるんだなとびっくりした。
パパがわたしが寒くないように、そして視界が晴れるようにって魔法使ったりしているから問題ないけれど、パパと一緒じゃなかったら死活問題だったと思う。
それにしてもこの転移した場所は何処なんだろう?
不思議に思っていたらパパに手を引かれる。パパに手を引かれて、あたりを見渡して分かった。此処は崖の上だ。
そして崖の下には――街が見えた。
「パパ、あれは?」
「氷の国――アイスワンドの王都だ」
パパがそう言った。
吹雪の向こう側に、お城が見えた。
でもそこにあるのはパパが言っていた氷で出来た城ではないみたい。
「パパ、氷の城じゃないよ?」
「氷の城は実際に人が住んでいるわけじゃない。昔は住んでいたらしいが、今は跡地になっているな。王都の場所も変わったからな」
「そうなの? 氷の城っていける?」
「行くことは出来ると思うぞ。昔は入れた。まぁ、今入れなくてもベルレナが望むなら忍び込んでもいいだろう」
「いや、パパ。不法侵入は駄目だよ」
パパは簡単に忍び込めばいいなんていうけれど、なるべくそういうのはやらない方がいいと思う。パパは多分誰にもばれずにそういうことが出来るのだろうけれど……。
でも出来ればパパには、そういうことはしないでほしいな。
「ねぇ、パパ。本当にね、必要だったらパパは誰にもばれずにそういうことが出来ると思うから、するのもありかなって思うけれど……。でももしかしたらパパのことを捕まえられる人もいるかもしれないでしょ? それにパパが周りに悪い人だって思われるのも嫌だから、だから……なるべくそういうことはしないでね? わたし、心配になっちゃうから」
わたしはパパのことが大好きだから、パパが周りに悪い人だって思われるのも嫌だなって思った。
パパは誤解されやすい人だ。分かりにくいし、冷たい面もある。だけどパパはわたしにとって大好きなパパだから、パパのことを皆好きだと嬉しいのだ。
パパはわたしの言葉に笑った。
そしてパパは「行くか」と口にして、わたしを抱えると崖の上から飛んだ。
何だかその勢いに「わぁ」ってなった。だってとてもスリル満載だったのだもん。
パパがわたしを抱えたまま、華麗に着地する。
「パパ、これ楽しいね! スリル満載だよ!」
わたしはまだ街にも入っていないのに、おおはしゃぎだった。




