パパと二度目の冬 ①
紅葉巡りをおえてしばらくが経って、季節は冬が訪れる。
肌寒い風が吹いている。雪がふりつもっている。
「パパ、今年も雪が凄くつもっているね」
「そうだな」
「ねぇねぇ、パパは何か冬にしたいこととかある?」
わたしはわたしのやりたいことばかりパパに告げている。だからパパがやりたいことがあれば、わたしは一緒に付き合いたいなと思った。だってパパが大好きだもん!
「……俺がしたいことか」
そう言ってパパはわたしのことをじっと見つめる。
どうしてわたしを見つめているのかな? そう思いながらもパパに見つめられるのは嬉しいことなので、にっこりと笑いかける。それにしてもパパっていつ見てもどんなタイミングで見ても、とても綺麗。
かっこいいなぁ。
パパってやっぱり女の人に放っておかれない人生を送ってきたんだろうなぁ。パパに似合う人ってどんな人だろう? 優しい人で、パパのものぐさな性格とかを受け入れてくれる人ならばきっといいよね。
「俺はベルレナが楽しんでいるのを見たい。……だから、氷の国と呼ばれるような寒い所行ってみるか?」
「氷の国!? 何それ!」
「凄く雪が積もり、驚くほどに寒い国だな。でもそういう国でも人は住んでいて独自に暮らしている。年中雪が降り積もり、絶対零度の寒い地域に氷で出来た城とか、橋とかがあるんだ。魔法も使ってそういうものを作り、そこで暮らしている。特に冬は寒いが、独特の雰囲気を味わえるぞ」
パパがそんなことを言う。
ふふ、パパがしたいことを言ってほしいっていったのに、パパ、わたしが楽しんでいるのを見たいなんて言っている。パパはわたしのことを大切にしてくれているんだなぁってわたしは嬉しくなって笑ってしまう。
「行きたい! パパがお勧めしてくれている場所だから、絶対に行きたい! そこならわたしが楽しめるってパパが思ってくれているんだよね?」
「ああ。ベルレナはきっと楽しめる」
「ふふ、絶対行こう! でも寒い所なら防寒具ちゃんと準備しなきゃだよね! 先に街に買い物に行こうよ」
「魔法があればそんなに寒くはならないぞ」
「それでもだよ! わたしはパパに最高に似合う冬の服を着せてあげたいんだもん。わたしのパパは最高なんだって周りに見せびらかしたい!」
そう言い切ったらパパに小さく笑われた。
だってね、パパってとっても綺麗なの。そしてとってもかっこいいの。そんなパパがわたしのパパなんだって。わたしのパパは最高にかっこいいんだって、会う人会う人に自慢したいんだ。
パパは適当な服を着ていてもかっこいいけれども、やっぱり綺麗な服装のパパは最高だもんね。
「そうか。じゃあ服を買いに行くか」
「うん!」
そういうわけでパパと一緒に大きな街にお出かけである。
それにしてもパパの転移の魔法は本当に便利だなと思う。パパはやっぱり凄い魔導師で、パパはやろうと思えばなんだって出来るのだと思う。そもそも転移が出来るってことは何処にでも入り込めるってことだからやっぱりパパって最強だと思う。
こういう力をパパが持っているって知ったら色んな人が近づいてくるのだろう。パパが魔導師だってことをまわりに隠しているのもそういう理由だと思う。パパは面倒なことが嫌いだから。
「ベルレナの服から見るか?」
「パパの服から!」
パパと手を繋ぎながら、そんな会話を交わす。
パパにどんな服が似合うかな? いや、パパにはどんな服だって似合うけれど、でも最高に似合う服を、皆が振り向くような服を折角だから選びたいな。
そういうわけでわたしは街の人におすすめの洋服屋さんを聞き込みする。
「パパにぴったりな冬服を選ぶんです!」
そう言ったら皆、にこにこと笑いながら教えてくれた。それにしても教えてくれる人全てがパパの顔を見てぽーっとしているんだよね。パパは綺麗だからね。
パパはそういう目で見られても全く動じた様子はなかったけれど。
今年の流行の服ってどんなのなんだろう? 折角だから、誰よりも輝けるパパを見せつけるためにもいいものがいいよね。
それから色んな洋服屋さんを見る。パパとお揃いのコートを買ったりもした。あとは氷の国に行くっていったら、色々お勧めを教えてくれたしね。
まぁ、彼らは来年わたしたちが氷の国に赴くって思ったみたいだけど……。普通の人は転移なんて使えないから、そう思うのも当然だろう。
後から聞いたけれど、馬車とか船で行くなら何か月もかかる距離に氷の国はあるらしいし。氷の国は寒い国だから、一年前から準備している人も多いみたい。とはいえ、ここからは遠いからわざわざ氷の国に向かう人もそこまでいないみたいだけど。
パパだけで洋服屋さんに来ると、実用性ばかり重視してしまうから、わたしがパパに似合う最高のものを選ばないと!




