パパとわたしと紅葉めぐり ①
すっかり季節は秋になっている。私たちの住んでいる屋敷の周りは標高が高いから、他の場所よりも早く紅葉が色づいている。
去年はパパの娘になって少ししか経っていなくて、不安とか、パパとの距離も今よりも遠かったりとか、そうだったけれど今はパパとの距離が縮まっていることが感じられてわたしは嬉しい。
これからもっと年を重ねていくにつれて、わたしとパパの距離はもっと近づくのかな。近づくと思うと、わくわくする。パパともっと仲良くなれたらわたしは嬉しいもん。
「パパ、綺麗だね。外!」
「ああ」
わたしが窓の外を見ながら告げた言葉に、パパも笑って頷いてくれる。それにしてもこうしてパパとのんびり過ごせるのは本当に穏やかで楽しい気持ち。
どこかに出かけることも楽しい。新しい出会いに出会えることも嬉しい。でもこうしてパパと二人っきりでのんびりと過ごせることがわたしは嬉しい。
「ねぇねぇ、パパは季節だとどの季節が好き?」
「好きな季節? あんまり気にしたことなかったな。ベルレナは?」
「んーとねぇ」
わたしはパパの言葉に思考する。
わたしは結構、どの季節も好きだ。どの季節もそれぞれの良さがあって、素敵な光景を見ることが出来るから。だからわたしはどの季節も結構好き。嫌いな季節なんてない。
でも敢えていうのならば、
「パパがわたしを拾ってくれた。ベルレナとしてのわたしの誕生日がある春かなぁ」
わたしはパパと出会えた春が好きだなぁと思った。
だってパパがわたしを見つけてくれた。それがわたしの人生にとっての一番の奇跡だから。
パパに会えなかったら、わたしはきっとあのまま消えていたから。だからパパと出会えた時が、わたしにとって唯一無二の大事な瞬間だ。
パパはわたしの言葉に小さく笑って、頭を撫でてくれる。
「そうだな。そういう理由なら、俺も春が好きだな」
「ふふ、一緒だね!」
「ああ」
パパとこうして何気ない会話をしているだけでも、わたしは何だか嬉しかった。
わたしはパパとそんな会話をした後、書庫で本を読んでいる。書庫には沢山の本が並んでいるので、全然読み終わることもない。気になることがあると、書庫で本を探して読むのだ。
今は季節が秋なので、秋に纏わるものを読んでいる。
でも遊んでばかりじゃないんだよ。ちゃんと、家事をしたりとか、パパから魔法を習ったり、あとは武器の扱いも少しずつ習ったり、習うことが沢山なんだ。だけどそうやって習うことってわたしが教えてほしくて学んでいることだから、全然大変ではないけれど。
それにしてもパパが一人でなんでも教えてくれていて、一緒に過ごせば過ごすほどパパの凄さを実感するよね。
今、わたしが読んでいるのは季節の料理・秋編と書かれている本である。秋の美味しい食べ物を使った料理が沢山のっているのだ。秋の魚とか、秋の木の実や果物とか。そういうものを使ったもの。
生で食べてもきっと美味しいんだろうなぁ。
何だか載っている絵と、説明書きが美味しそうで涎が出そう。というか、この本書いた人の食事の感想が書かれているから、美味しそうって思ってならない。
食料庫にあるのだろうか? 食料庫も沢山の食料があるから何があるかまだまだ分からないんだよね。
こういう食糧も探しに行きたいなぁ。食料庫にあればそれで料理は出来るけれど、自分で収穫出来たら楽しそう。
その後は、素敵な秋の景色の本を見る。これは世界中を旅していた旅人の書いたもので、詳細にどこの景色が良かったかなど書かれている。どうやらこの著者は長命種らしく、色んなところにいっていたらしい。やっぱり寿命が長いと色んな所に行けるものだよね。
わたしはあのままベルラ・クイシュインとして生きていればきっと、限られた場所しか行かなかっただろう。決められた場所を、貴族の令嬢として生きていただろう。わたしは今、ベルレナというパパの娘だからこそ、色んな場所に行けているんだなって思った。
それにしてもとてもワクワクするなぁ。山の上だったり、谷だったり、そういうところで赤く色づく紅葉。うん、想像するだけで楽しそう。
この屋敷がある場所の周りもとても綺麗だし、見て回ったらきっと新たな発見もあるだろう。まずは屋敷の周辺をパパと散歩したいなぁ。それが終われば他の、行けそうなところがあれば見て回りたいかも。
パパに相談したら一緒にいってくれるかな?
そういう予定を考えると、楽しくなってきた。
「ねぇねぇ、パパ、わたし、紅葉見に行ったり、美味しい秋のもの食べたりしたい!」
「じゃあ、行くか」
わたしの言葉にパパは頷いてくれた。
それからわたしはパパと一緒に、何処に行くかという相談をし始めた。




