わたしとバザー ⑤
パパと手を繋いで、バザーの会場を見て回る。
色んなものが売られていて、わたしは楽しくなってしまう。
「ベルレナ、楽しそうだな」
「楽しいよ! パパと一緒にこうして出掛けるってだけでも楽しいし、こうやって沢山のものが売られているのを見るのも楽しいし! 楽しくない要素なんて全くないもん!」
パパに向かって笑いかければパパも笑いかけてくれた。
「ねぇねぇ、パパは欲しいものってあるの?」
「俺は特にないかな」
「パパってあんまりほしいもの言わないよね? 欲しいものがあったら言ってね。わたし、今はパパに渡せないかもしれないけれど、パパが欲しいって言っているものならあげたいもん」
「子供がそんなことを気にしなくていい。俺はベルレナが笑っていればそれでいい」
パパはやっぱり優しいと思う。パパの優しさを感じるとわたしは嬉しくなる。
「パパは無欲だよね。わたしなんて欲しいもの沢山だよ! こうして色んなお店を見ているだけであれも欲しい、これも欲しいってそればかり思っているのに」
「ベルレナはそれでいい。さっき稼いだお金もあるだろう。それで好きなだけ買えばいい」
「パパ、そんなこと言われると、わたし、全部使っちゃうかもよ!?」
「別に使ってもいい」
パパはやっぱりわたしのことを甘やかしすぎじゃない? それに結構お金を稼いだから全部使うってのは現実的じゃないけどね。
でも何買おうかなぁ。パパにも何か買いたいな。パパのほしいものってわかりにくいからなぁ。何がいいかな? と思いながらパパと一緒に見て回る。
可愛い洋服や帽子を見つけて思わず購入した。そのリボンのついた麦わら帽子を被れば、パパが笑っていた。
色んな帽子をかぶるのもおしゃれに繋がるよね。帽子もいいなぁって思いながらわたしは見て回って、面白い帽子を見つけた。その帽子は魔物の耳がついた不思議な帽子だった。何だか大きな街とかだとおしゃれとして流行っていたりするらしい。
獣人たちは自分の耳が頭の上についているけれど、人間は顔の左右にしか耳がないけれど頭の上にある感じに見える帽子ってことだよね。
わたしはすぐに気に入って、その帽子を購入する。パパの分も買ったの! わたしはね、桃色の兎の耳のついたものを購入したの。パパには、黒い兎の耳のついたものを購入した。
パパはわたしに渡されて一瞬押し黙ったが、「……ベルレナがかぶってほしいなら被る」といってかぶってくれた。パパとお揃い、楽しいなぁ。
それにしてもパパは何だって似合うよね。こういう帽子も可愛くていいなぁ。将来的にわたしがどうなるか分からないけれど、魔物と戦ったりする時もおしゃれで可愛い恰好をしておきたいな。
そっちの方がわたしらしいと思うし。それにしてもこの帽子可愛いし、買って良かった!
他のお店も見て回って色々購入したのだけど、「可愛いね」って言ってまけてくれたの! そうやって少し安く売ってもらえる好意が嬉しかった。
物を売る時も笑っていたほうがいいけれども、物を買う時も笑っていたほうがいいんだなって思った。
それにしてもパパが兎の耳の帽子をかぶっていると、皆二度見するんだよね。でも女性たちは結構キャーキャー言っていた。やっぱりパパはかっこいいから! パパを二度見して、手を繋ぐわたしも同じような帽子をかぶっているのを見て、穏やかな顔をしていた。
若い男性の人だと、パパが女性に騒がれているのを面白くなさそうに見ていた人もいたけれど、わたしと手を繋いでいるのを見るとそういう表情もなくなるんだよね。
「パパ、他の帽子も欲しいね。パパと一緒にかぶってたらきっと楽しいよ。あと、親子で同じような服を着るのもいいかも! わたしとパパが仲良しだって示せるし」
「楽しそうだな、ベルレナ」
「楽しいよ! わたし、パパが大好きだもん」
今回バザーのために服作りをしたから、パパとわたしのお揃いの服を自分で作るのもいいなぁ。何だか夢がどんどん広がっていく感覚に、楽しい気持ちで一杯になっている。
それから帽子をかぶったまま、一緒にバザーを巡って、色んなものを購入した。流石に売った料金を全部使い切るってことはなかったけれど、こんなに自分のお金を使ったのは初めてでちょっとドキドキした。
帰宅する頃には、すっかりわたしははしゃぎ疲れていた。
「ベルレナ、楽しかったか?」
「うん……。楽しかった」
「眠たそうだな」
「うん……ちょっと眠い」
椅子に腰かけてパパとバザーの話を沢山していたのだけど、わたしは眠くなってしまった。今にも眠りそうなわたしにパパは近づいて、手を伸ばす。わたしはパパに手を伸ばして、首に手を回す。そしたらパパはわたしを抱っこして、ベッドに連れて行ってくれた。
パパは魔法でわたしを浮かせることも出来るけれど、抱っこして連れて行ったりもしてくれるのだ。わたしはパパにベッドに寝かされ、気づけば眠っていた。
それにしても楽しかったなぁ。




