わたしとバザー ③
「わぁ……」
わたしはパパと一緒にバザーの開催される街にやってきている。そこではこれからバザーが行われるからだろうか、人が沢山溢れていた。
こういうイベントって人がいっぱい集まって、見ているだけでわくわくするなぁとそんなことを思った。
それにしてもバザーに参加する人って多いみたい。こういうバザーだと掘り出し物とかもあったりするってパパが言ってたよ。
ちなみにね、わたし、今日はパパの作ってくれた特別な服を着ているの!
商品ばかり一生懸命作っていて、バザーで何かを売る時の自分の服をどうにかするなんて考えてもいなかったのだけれども、パパがいうにはそういうのも目を引く恰好をしていたほうがいいんだって。
パパと話していると、物を売るのって大変なんだなって思った。
商品がいくら良くても売る方が愛想が悪かったら売れなかったりもするし、そもそも商品がよかったとしてもその商品が良いものだと知られなかったら売れるものも売れない。
パパが作ってくれたのは、可愛いワンピース型の服である。飲食店で働いていたお姉さんたちがきているようなエプロンをつける。うん、可愛い! パパがわたしのために作ってくれたんだと思うとそれだけでも嬉しかった。
わたしはパパが大好きで、パパと一緒にいたいし、パパのために何かしてあげたいって思っている。でもその気持ちは一方通行じゃなくて、パパだってわたしのことを大切に思ってくれているというのが分かって、それが嬉しい。
パパの作ってくれた服は、とてもかわいらしくて周りから注目を浴びていた。知り合いの子たちには、「可愛い」って言ってもらえた。
可愛い服を着れるのも嬉しいし、パパが作ってくれた服を褒められるのも私は嬉しい。
何だか嬉しくて笑みが止まらない。
「ベルレナ、楽しそうだな」
「楽しいもん! もっと楽しくなるんだよ!」
これからもっと楽しくなることをわたしは確信している。楽しくないはずがない。
わたしがそういって笑えば、パパも笑ってくれた。パパが笑ってくれるとわたしは益々嬉しくなる。
パパと話しながら、売り場の設置を進めていく。それにしてもわたしが見落としていた準備とかを全部やってくれていたんだよね。やっぱりパパってすごい。落ち込んだわたしにパパは「こういう経験をどんどんつんで、最終的に出来るようになればいい。最初からなんでも出来る人はいないから」と言っていた。
わたしはパパの隣で沢山経験を積んで、そしてパパに沢山のことをしてあげたいな。
パパに沢山のものをわたしは与えられているから、わたしもパパに沢山のことをしてあげたい! まだまだ色んな経験が足りないから、勉強しないとね。
そんなことを思いながら、わたしは売り場の準備を整えた。
パパは笑っているだけで、何も言わなかったからちゃんと準備出来たのだと思う。
そういえば、パパってわたしの前では笑ってくれているけれど、他の人と話す時はそこまで笑わないんだよね。だからパパに好意を抱いている人は、わたしとセットでいるのを見ると嬉しくなるらしい。
中にはパパの奥さんや恋人になりたいって人もいたけれど、パパが全く相手にしていないからか、皆諦めたみたい。パパもそういうのに興味なさそうだからなぁ。
わたしとパパは厳密にいえば本当の親子ではない。でも身体はパパの髪などから培養されたホムンクルスだから親子といえば親子だけど。そんなわたしが周りから親子であると言う風に見られるのが嬉しい。
「ベルレナちゃん、今日はバザーに参加するんだね」
「お隣さんだね、よろしく」
わたしが準備をしている間にも、沢山の人たちが声をかけてくれていた。
こうやって話しかけてくれることも楽しい。なんだろう、これから楽しいことが始まるのだなというワクワクした気持ちが湧いてくる。
「よかったら買ってくださいねー」
とそういって笑かけたら、話しかけてきた人も笑ってくれた。
パパの作ってくれた可愛い衣装についても、「可愛いね」って褒めてくれた。
――そうしてバザーが始まった。
そういえば、わたしは今回売る側として参加しているけれど、ある程度売ったら撤収してバザーを見て回ることにもしている。
掘り出し物があったらいいなぁ。
お店を開いてからすぐに、結構色んな人たちが見に来てくれていた。知り合いの人たちがまず見にきてくれて、わたしの作った商品を見て幾つか買ってくれた。
知り合いのわたしが売っているからというのもあるだろうけれども、わたしの作ったものを褒めてくれて買ってくれた。知り合いの人たちが買ってくれたからか、そのあと興味を抱いてくれた人が見に来てくれる。
やっぱり最初に誰かに買ってもらわないと、次に買ってくれる人になかなかつながらないんだねって分かった。
あと物が売れないからとぶすっとしていたり、暗い雰囲気をしていても益々悪循環になるみたい。売れないと不機嫌そうにしている人の売り場には、ちょっと顔を出して元気づけるということはした。だってこういうイベントは楽しく過ごした方がいいもん。その間はパパに店番を頼んだよ!
そうやって楽しく過ごしていたのだけど、たまたまパパが席を外していた時に、
「よう、嬢ちゃん、よく売れているみたいじゃねぇか」
なんか悪い笑顔を浮かべた男の人たちに声をかけられた。
何の用だろう??




