わたしの初めての魔物退治 ④
屋敷に戻ったわたしは、パパと一緒に普段使っていない部屋に向かった。その部屋は殺風景な部屋で、台がおかれている。あとは刃物などもある。わたしはこの部屋に入ったことがなかったので、こんな部屋あったんだと驚いた。
「パパ、此処は?」
「俺が昔、解体のために使っていた部屋だな」
「今はしないの?」
「今は大体魔法で終わらせるからなぁ」
「へぇ……流石パパ!」
パパは結構魔法でさっと解体しちゃうらしい。多分一体一体、刃物で解体するのが面倒だったからではないかと思う。
パパは面倒なこと嫌いだからね。でもわたしに教えるためにこうして手動でやろうとしてくれている。やっぱりパパは優しい。わたしにとっての自慢のパパだ。
思わずそのことを思うと笑ってしまう。
パパは急に笑みを浮かべたわたしをみて不思議そうな顔をしていた。
わたしは解体用のナイフをパパから受け取る。何だか解体自体はじめてなので、ドキドキした気持ちになる。
「ねぇ、パパ、何処から切ったらいいの?」
「魔物の種類にもよるが、とりあえず花弁と茎を切り離すか」
「ちなみに切り落とした後って、どうするの? そのままにしてたら多分腐るよね?」
「そうだな。よく気づいたな。保存するための魔法を使うのもいいが、そういう魔法が使えない相手はこういう液に浸しておくか、保存用の入れ物に入れるかだな」
パパはそう言いながら、液体の入った入れ物を取り出してくれる。こういう液体につけて使うまで保存するってことかぁ。パパは空間を操る魔法を使えるから幾らでも保存できるけれど、そういう保存魔法が使えない人は色々と大変なんだろうなと思った。
まず解体用のナイフで大きな魔物の花弁と茎を切り落とす。結構時間がかかった。力を入れて切断するのって難しい!! それにこうして切ると魔物からなんか汁が出てくる。植物系の魔物だから血ではないけれど、動物系の魔物だと血が出るのか。ちょっと怖いな。でも自分で解体もきちんとできるようになった方がいいもんね。
「ベルレナは身体が小さいからな。魔法で身体を強化するか?」
「んー、それどうやるの?」
「一旦、俺がやってやるよ。身体強化はその名の通り、魔力を使って身体の強化をするものだが、これは使い方次第では身体が壊れるからな。簡単そうに見えて結構難しいものだぞ」
「こ、壊れるの?」
「そうだな。魔力を込めすぎるとその魔力が身体を蝕んでしまうこともあるんだ」
パパに言われて、わたしはぶるりっと身体を震わせた。
「まぁ、身体強化で魔力暴走する前に俺が止めるし、身体が壊れても治せは出来るけどな」
「……や、やる時はパパに見てもらう! 一先ず、パパにやってもらっていい?」
「ああ」
パパは頷いて、さらりと魔法を行使する。パパが魔法を使うと、わたしの身体はちょっと軽くなった。
「おおっ、軽い!!」
あまりにも身体が強化されてて、持っていたナイフがぐにゃりと歪んだ。
「あっ」
「身体強化あるあるだな。強化されているから、下手に力を入れるとこうして物が壊れたりするからな」
パパはそう言いながら歪んだナイフを治してくれた。ついでに身体強化を使ったわたしが壊さないようにナイフも強化していた。
詠唱もせずにこうしてさらっと魔法を使うパパが凄いとキラキラした目で見てしまう。というかパパは凄い、本当に!
これで解体作業がさっきよりもやりやすくなった。それにしても魔物っていう生き物を解体するのって何とも言えない気持ちになった。でもパパがいうように、命を奪ったということなのだからちゃんと責任をもって何かに使った方がいいもんね。
魔物を狩ったらそれで終わりじゃなくて、その魔物の素材を出来る限り無駄にしない方がいいから。
そう言う思いでまず植物の魔物の解体を終わらせた。
一体解体するだけでも結構時間がかかった。ベルラだった頃のわたしは魔物の素材で作られた高価なものだって、何も気にせずに当たり前みたいに手にしていた。
実際にやってみて、こんなに大変なんだなと実感するとものを大切にしなきゃなって思った。
「ふーっ」
「ベルレナ、もう一体はどうする? 疲れたなら日を置いてからでもいいが」
「いや、やる!」
一体目の解体で疲れたけれど、二体目の解体も頑張る!
もっと解体も上手になりたいな。最終的に魔法で、解体が出来るようになるかもしれないけれど、自分の手で出来るようになった方がいいからね。
こうしてすべて魔法で解決させようとするではなく、魔法が使えない場所だったとしてもわたしが生きていけるようにと色々教えてくれている。パパが教えてくれようとしているから、何でも覚えようって思っているのだ。
それから魔物の解体を続けたが、血が出て来てびっくりした。血抜きとかも結構難しかった。
解体には時間がかかったけれど、パパは隣で見守っていてくれていた。
そうしてわたしの初めての魔物退治と解体は終了した。




