わたしの初めての魔物退治 ③
わたしはドキドキしながら、魔法を構築してみる。
まずやってみたのは、土の魔法である。
「ベルレナが命ずる。土の神の加護を持って、土球を形成せよ。《アースボール》」
わたしがまずやってみた魔法は、土の球を形成する魔法である。ただそれをぶつけるだけではない。わたしは巨大な土の球を作ってみて押しつぶしてみようと思ったのだ。
魔法は学べば学ぶほど、パパのように詠唱なんてしなくたって魔法を使えるようになっていく。そして詠唱というのは一つの目安でしかない。
その詠唱をすれば、魔法が形成されようとする。そう考えると詠唱文を生み出した人は凄いなと思う。
土をかぶせてみたのだけど、その魔物は寧ろ喜んでいた。喜ぶの!? とびっくりした。というか、そうか、植物の魔物だからこそ土の中に埋まっているものだからってこと? 普通、土っていう物量に押しつぶされたら死ぬかなって思ったんだけど……。それともこの魔物の独特の動きなのだろうか?
素材を残したいからって軽くつぶしたから悪かったのだろうか?
えっと、じゃあ、次は……そう考えてわたしは、水を出現させてみる。そしてその水でその植物を覆ってみる。土から切り離して、ただ囲い込む。
そうすればその魔物はしばらくバタバタして、そしてそのまま動かなくなった。
「パパ! これで出来た?」
「ああ。倒せたな」
「やった!!」
「でも魔物によっては水で囲んでも倒せないものもあるからな」
「うん」
「魔物はそれぞれの特性があるから、魔物によっては水は逆効果だったりもするからな」
「特性を知っている魔物なら、その弱点をつくのが一番ってことだよね? でもパパってすごいから、そういうの気にしなくてもばばって魔法使って勝てそうなイメージ」
「俺はそれでも出来るが、慢心っていうのは命取りになるものだぞ。幾ら俺が魔導師だったとしても油断したら何かの拍子に死んでしまうかもしれない。俺はそういう死に方をする気はないからな。魔物の情報は勉強している」
パパは結構適当な性格をしているし、だらしなかったりもするけれど、何だかんだ自分がやるべきことはちゃんとしていると思う。
そう言うパパがかっこいいなぁとわたしは思って仕方がない。
この世界には沢山の魔物がいて、その魔物たちは数えきれないほどの特性を持っている。ただ倒すだけと、素材を手にするために倒すだと違ったりもするだろうし……わたしももっと勉強しなきゃね。
「パパはやっぱりすごいねぇ。わたし、パパみたいに魔物についても沢山勉強する! ところでこの魔物は何の素材になるの?」
「花や葉は薬の材料になるな。大きな茎は防具にも使えるし、バッグなどの紐にも出来るな。というか、ベルレナ。こういうものはすべて何かに使えるものだぞ。無駄になるものなんて何一つない。それを無駄にしてしまうのは、人がその使い道を知らないだけっていうそれだけの話だ」
パパがはっきりとそう言い切った。わたしはその通りだなと思って、パパのように素材を余すことなく使えるようにしたいなと思った。あとこういう魔物の素材は食事にも使えるだろうし。パパが美味しいっていってくれる料理も作りたいなぁ。
自分で倒した魔物の素材を使って料理が出来たらきっと楽しいだろうし。
「ねぇねぇ、パパ、わたしね、パパに美味しいもの食べてもらいたい! だからパパ、わたし、美味しい魔物狩りたい! いい?」
「ああ。もちろんだ。美味しいって言われている魔物を狩るか」
「うん!!」
パパが優しい笑みを浮かべてくれている。それだけでわたしは嬉しくてにこにこ笑ってしまう。わたしが倒した植物の魔物は一旦、パパがそのまま保存してしまってくれた。
「ねぇ、パパ、あの魔物は?」
「あれは肉が美味しいぞ」
「じゃあ、倒してみる! 食べたいってなると、焼かない方がいい?」
「そうだな。焼いてもいいけど、焼かずに傷が少なめで倒せた方がいいな」
わたしが目を付けたのは四足歩行の黄色い毛皮の魔物である。鳴き声をあげながらただ生活をしている魔物。だけど、わたしはパパに美味しいものを食べさせるために狩る! 美味しく食べてあげるからね! そう言う気持ちでわたしはその魔物に近づく。
そうしたらわたしに近づいてきたその魔物が、襲い掛かってこようとしてびっくりした。パパがすぐに障壁を作ってくれてその魔物はわたしに近づけなかったけれど……。こんなにスピードがはやいんだ……ってびっくり。
「ベルレナ、油断するな。幾ら弱い魔物だったとしてもベルレナを傷つけるぐらいは出来る」
「うん!!」
わたしはパパの言葉に大きく頷いて、どんな魔物相手でも油断しないようにしないといけないと実感した。
障壁に驚いた魔物にわたしは魔法を行使した。
「ベルレナが命ずる。光の神の加護を持って、光の矢を形成せよ。《ライトアロー》」
わたしは光の矢を魔法で出して、その矢でまずは上から顎まで貫通させるように一つ放つ。これでまず動けなくなった。まだその魔物は死んでいない。
このまま血が流れて行けばそのまま死ぬと思うけれど、どうしようか? しばらくそう考えて、結局再度光の矢を放った。わたしはまだ一つの詠唱で大量のそれを出現させることは出来ないので、いちいち詠唱をする。
そして、魔物を倒すことができた。お肉が傷つかないようにしたつもりだけど出来ただろうか。
「初戦にしては上出来だな」
「本当!? やった!!」
「じゃあ、一旦屋敷に戻って解体をやるか? それともしばらく魔物退治するか?」
「解体がいい! パパに美味しい料理作るの!」
わたしがそう言ったので、パパと一緒に屋敷に戻ることになった。




