わたしの初めての魔物退治 ①
「ふんふんふん~」
鼻歌を歌いながら、わたしは洋服の整理をしている。
パパが買ってくれた洋服がわたしの部屋には結構沢山ある。
このホムンクルスの身体は人間と同じように成長していくから、わたしの身体も成長している。少しずつ大きくなっているから初めて買ってもらった服は入らなくなったりしている。
成長を感じるのは嬉しいけれど、パパから買ってもらったものは全て宝物だから取っておきたいって思っている。わたしがそう言ったらパパは空間を操る魔法を使って、わたし専用の収納庫を作ってくれた。そこに接続するための魔法具もくれたのだ。
……誕生日でもないのにこういうものをぽんってくれちゃうパパはやっぱりわたしを甘やかしすぎだと思う。
ニコラドさんに聞いたけれど、こうやって簡単に空間を広げたり、空間魔法と呼ばれるものを使えるのはやっぱりパパだかららしい。ニコラドさんも魔導師だから同じようなことが出来るらしいけれど、それは魔導師だからだって。
普通の人は使えないらしい。そう考えるとやっぱりパパってすごい。そしてわたしはなるべく人にこういう空間魔法の道具を持っていることを知られないようにした方がいいっても忠告を受けた。
やっぱり世の中には色んな人がいるから、そういうものを奪おうとする人はいるらしい。今の所わたしがあまり悪い人に会っていないのは運がいいのだろう。もし悪い人に会うことがあったら……と思うとちょっと怖いけれどその時はちゃんと向き合おうと思う。
そんなことを考えながらクローゼットに洋服を並べると、何だか幸せな気持ちになる。
わたしが洋服が好きだからというのもあるけれども、やっぱりパパが購入してくれたものだと思うと、うれしくて仕方ない。わたしにとって一番大切なのがパパで、パパがくれるものは何だってわたしにとっての宝物なのだ。
わたしはパパに沢山の物をもらっているからこそ、錬金術でパパをもっと美しくするための美容液などをつくるのを頑張っている。パパは元々綺麗で、皆が振り向くような人だけど、わたしが髪の艶を出すための美容液をぬっているのもあって、前よりも髪がキラキラしているようにも感じる。
あとお風呂のシャンプーとかもわたしが選んでいるの! パパのサラサラの髪を触るのも好きで、時々触らせてもらっている。綺麗なパパを見ていると何だか嬉しくなるんだ。
どこかに出かけた時は、わたしの自慢のパパを見て! ってそんな気分にだってなる。
そんなこんな考えながらわたしは洋服の整理を進めた。
それが終わればパパに見てもらいながら魔法の練習をする。
わたし、少しずつ魔法が上手になってきたんだよ!
もちろん、パパ程ではない。パパにはいつまでたっても追いつける気はない。だけれどもいつか大好きなパパに並べるぐらい魔法が使えるようになれたら楽しいだろうなぁってそう思っている。
今まで出来なかったことを少しずつ出来るようになることがわたしは嬉しい。
いつも新しいことが出来るようになると、パパに「パパ、出来るようになったよ!」って褒めてほしくて近寄る。そしたらパパはいつも「よくやった。流石俺の娘」と口にしてわたしの頭を撫でてくれるの。
本当にパパはわたしのことを甘やかしてばかりだなあって思うけれど嬉しいからいいの。
いつも魔法の練習をパパに見てもらって終わりなのだけど、その日は違った。パパがふとわたしにいった。
「ベルレナ、魔物とも戦ってみるか?」
「魔物と?」
パパに言われた言葉に驚いた。
わたしはパパと一緒に魔物が出る所に行ったことはあったけれど、いつもパパが倒してくれていた。
わたしはいつもパパに守られていただけで、自分の手で魔物と戦ったことはなかった。
「ああ。ベルレナの魔法は魔物を倒せるぐらいにはなっている」
「ほんとう?」
「ああ。ベルレナも俺がいなければ屋敷の周辺を移動できないだと不便だろう」
「んー? わたし、パパが一緒だと嬉しいから不便じゃないよ!」
「そうか。……でもまぁ、一人で散歩や魔物退治が出来るようになったら便利だろう。でもベルレナ、魔物もいきているから理由なしに殺すのはなるべくやめた方がいい。食べるためとか素材のためとか、命の危機を感じたとかならともかくな」
「うん!」
パパの言っていることも最もなので、わたしは笑顔で頷いておく。
「でもこのあたりの魔物はベルレナにはまだ早いから、もっと弱い魔物から行くぞ。それで少しずつ強い魔物を倒していって最終的にこの屋敷の周辺の魔物だ」
「いきなりは難しい?」
「そうだな。この辺りの魔物は強いからな。だからこそ人が全然来ないわけだが」
……パパは人と関わるのあんまり好きじゃないからなぁ。だからこそ魔物が強くて、あまり人がやってこないこの屋敷に住んでいるのだろう。
というか人が入りやすい場所だったら訪れる人も多いだろうしね。
パパの言うことには間違いがないだろうし、まずはわたしでも倒せる魔物から!




