わたしは友人を増やしていく ③
「ベルレナ、最近一人でよく出かけているな」
「うん」
パパはわたしがよく一人出かけているのを見て、わたしのことを心配しているのか、何をしているのか気になっているのか、わたしに何か聞きたそうにしていたりする。
わたしはそれを知っているけれども、パパにサプライズで何かあげたいなぁと思っているので、パパにあえてそのことを言ったりはしない。
パパ、ごめんね! プレゼントする時に言うから。というそういう気持ちでわたしは出かけている。
フェーヌさんと一緒に、パパへあげるプレゼントをどうしようかと街を動き回っている。
お店に行って、これをあげるのはどうかとか、そういうことを話す。でもわたしって、パパから色々買ってもらってばかりで、自分で使えるお金って持ってないのだ。錬金術で作ったもののお金は自由に使っていいって言われているけれど、結局そのお金を動かすとなるとパパに預けているからパパに相談する必要があるし……。パパってば「そのお金は大事に取っておけ」って言って、結局なんでも支払ってくれるからたまりっぱなしなんだ。
といっても、子供のわたしがパパに内緒でお金を稼ぐのも非現実的な気がする。などと考えていたら、フェーヌさんに「子供でもお手伝いをしてお金をもらうことはあるわ」と言われた。
幼い子供が働いてお金を手にしていると言う場所はあるらしい。でもそういうのは、基本的に孤児の子たちばかりのようだ。孤児だからこそ幼い子供も仕事をしてお金を稼ぐんだって。
わたしはそういう話を聞いてびっくりした。
孤児という存在を知識として知っていた。ベルラだった頃にお父様とお母様は、孤児院に寄付をしたりしていた。そしてあの子も私の名前で、私として寄付をしていた。
わたしはベルラだった頃は、何も気にせず食事をして、お金のことなんて気にしたこともなかった。そしてベルレナになってからもパパがお金を持っているから、お金に困ってもいなかった。
やっぱりわたしは恵まれていると思った。
孤児たちにとって、お金を稼ぐことは生活のためである。……わたしはそういうのではない。フェーヌさんは孤児たちのしている仕事は紹介出来ると言われたけど、それは断った。
生活のために仕事をしている中で、わたしのように生活に余裕があるのに働いている存在がいけば、孤児院の子たちにとって気に障るのではないかと思った。
というわけで、わたしはお金のかからないプレゼントにすることにした。
フェーヌさんと一緒に花畑にいって、花を摘む。綺麗な花々は、きっとパパに似合う。パパは綺麗だから、お花も似合うのだ。
あとは手書きで手紙を書く。
パパにありがとうの気持ちを込めてかいたものだ。
これはお菓子屋さんで書いた。花も一旦フェーヌさんにあずかってもらった。あとは魔法で花が長持ちしやすいようにする。危険な魔法は一人で使わないようにって言われているけれど、このぐらいの魔法なら使う許可ももらっているのだ。
花を摘みにいった時に、同じ年ごろの子供とも仲良くなった。女の子達は花冠をつくるんだって花を摘んでいたのだ。その花畑は、街の郊外にあってこの街で過ごしている人たちにとってはなじみ深い場所なんだって。
お友達が増えて、わたしは嬉しくなった。
そして準備を終えたわたしはパパに「パパ、いつもありがとう」といって花と手紙をプレゼントした。
「くれるのか?」
「うん。わたしね、パパが大好き。パパのおかげでわたしは幸せだから何かあげたいなって思ってたの。出かけていたのはパパへのプレゼントを用意してたからなんだ。サプライズしたかったからこういうものになっちゃったけど……」
パパは喜んでくれるかな?
そう思いながらパパを見上げる。パパは、花を受け取り、手紙を読んで、わたしの頭を撫でた。
「ありがとう。ベルレナ。俺は嬉しいよ」
「良かった。パパが喜んでくれて!」
「ああ。一生手元に置いておきたいぐらいだ」
「えっと、パパ、わたしの魔法、そこまで長くきかないよ?」
「分かっているよ。そういう気持ちってだけだ」
パパはそう言って笑って、何処からか取り出した花瓶に花を飾る。そして手紙を宿の机に置いて、わたしのことを抱きかかえる。
そしてその場から転移する。
移動した場所は、見晴らしのいい山の上だった。
「パパ、此処は?」
「ベルレナが行きたいって言っていた聖なる獣の住んでいる山の上」
「いきたいってはいったけど、いきなり!? びっくりした!!」
わたしが驚いた声をあげても、パパは笑っていた。
「ベルレナを連れてこようと思っていたけど、最近忙しそうにしていただろう? ベルレナからプレゼントもらえたお礼だな」
パパはそう言いながらわたしに笑いかける。
何だか山の上から、街を見下ろすと街がずっと小さく見える。わたしはさっきまでパパと一緒にあそこの宿にいたんだよね。やっぱり一瞬で移動できる転移の魔法ってすごいと思う。こんな魔法を使えるパパが一番凄い。
「早速、噂の聖なる獣を見るか」
「見れるの?」
「ああ。なんとなく気配は感じる。それだろう」
パパはそう言ってわたしを抱えたまま、街で話されていた聖なる獣の元へとわたしを連れて行った。




