わたしは友人を増やしていく ①
パパはそれからも時々、色んな種族の元へわたしを連れて行ってくれるようになった。すぐには無理でも、そうやって交流を深めていけば、わたしも友達が徐々に増えていく。
知り合いが増え、友達が増えていく。
その何のことでもないような当たり前のような奇跡がわたしにとってはとても楽しかった。
パパの娘になったからこそ、わたしは彼らと出会うことが出来た。
「パパ、今日ね、追いかけっこしたの。わたしね、皆捕まえたんだよ!!」
「良かったな」
「えへへ、流石、パパの娘だって言ってもらえてうれしかったの!」
わたしは流石パパの娘なんだと言ってもらえるとそれだけで嬉しい。もっともっとパパの自慢の娘だって言ってもらえるように沢山行動していきたい。
パパのことが大好きだなって思うから、わたしが何かやらかしてパパの評判が悪くなったら嫌だもん。
もっと色んな所に行きたい、もっと色んなものを見たい。わたしはそういう好奇心で満ち溢れている。
知り合いや友人が増えていくと、何だか世界が広がっていって楽しいんだ。
一度だけの出会いも、これから交流を深めていく人との出会いも、全部がきっとわたしにとっての宝物で、楽しくて仕方がないことなのだ。
「ベルレナは……もっと色んな人と会いたいと思うか?」
「うん!!」
「学園に通いたいとかあるか?」
「学園?」
わたしはパパから問いかけられて、不思議な気持ちになった。
わたしがベルラ・クイシュインとして生きていた時は、学園に通うのが当たり前だと思っていた。王侯貴族の多く通う学園に通う予定で、わたしはそれを楽しみにしていた。ベルラだった頃のお父様とお母様から学園の話も聞いていた。
王侯貴族としての心構えについて学んだり、魔法について学んだりできる場所だと聞いている。学園によって学ぶことが色々と違うみたいだけど、わたしが知っている学園は元々わたしが通う予定だった学園以外分からない。
でも学園に通うことになれば、知らないことを沢山知れて、友人が沢山出来たりするのだろうか。それを想像すると何だかワクワクした気持ちになってくる。
「ああ。ベルレナは学ぶことが好きだろう。新しいことを前にするといつも目を輝かせているだろう」
「うん。私、想像するだけでワクワクする。パパも昔は学園に通ってたりした?」
「ああ。ずっと前にな」
「楽しかった?」
「悪くはなかったな」
「ふふ、パパがそう言うってことは結構楽しかったんだね? ニコラドさんも一緒だったの?」
「そうだな。ニコラドとはそのころからの付き合いだ」
パパの学生時代というのは、ずっと昔だろう。そのころからニコラドさんとパパが付き合いがあるのだと知って、何だか面白いなぁと思った。パパがそれだけ長い付き合いを得ている人は、ニコラドさんだけなのかもしれない。魔導師として長く生きているからこそ昔のパパを知っている人は少ないだろうし。
「学園って、色々あるよね。どういう所があるんだっけ」
「そうだな、色々あるな。それにどの国の学園に通うかにもよるだろう。ベルレナの魔法の実力だとどんなところでも入れそうだが」
「どこでもいいの?」
「ああ。ベルレナが通いたいと言うならどこだって俺は父親として通えるようにしよう」
「ふふ、じゃあ考える!!」
パパは何処にいってもいいとそんな風に笑ってくれていて、わたしも笑った。それにしても全然そんなこと考えた事なかったけれど、わたしのこれからの人生はまだ長くて、そうやって学園に通うという未来も当然考えられるんだ。
わたしは身体を奪われてから未来のことなんて考えられなかった。パパに見つけられるまでは消えようと思ってた。そしてパパと一緒にパパの娘として過ごすようになって、わたしはようやく未来を見えるようになった。
でもその未来も、わたしは近い未来のことばかり考えていた。だから学園に通えるかもなんてこと考えたことはなかった。
なんだかんだ友人たちが出来ても、わたしは閉じられた世界のことばかり考えていたのかもしれない。
学園かぁ。
通うことになるとしてもずっと先だろうけれども、通うことになるのならばパパの娘として誇らしいわたしでいたい。将来のことをわたしはまだ深くは考えられない。でもずっと先の未来でもパパと一緒にいられたらいいなぁとそれしか考えていない。
でもまぁ、まだまだ先のことだから、学園のことよりも直近の未来でどんなふうに過ごしていこうかっていうのも大事だけれど。
「ねぇ、パパ、また色んな街に行きたいな。パパの知り合いとお友達になるのも楽しいけれど、もっと友達作りたい!」
「ああ」
そしてわたしとパパはある日、街に出かけることにした。
新しいお友達が出来たらいいなぁとそんなわくわくした気持ちでわたしはいっぱいになっている。




