パパとわたしと錬金術 ④
美容に関する錬金術の本を探そうと、わたしはパパに連れられてまた街に出ている。今まで幾つかの街にパパに連れて行ってもらったけれど、美容に関する本はあまりない。
残念だなぁと思いながらパパと一緒に歩いていると、公園で絵を描いていたお兄さんに声をかけられた。
「君たち、僕のモデルになってくれないか!?」
どうやらわたしとパパの見た目を気に入って、絵を描きたくなったらしい。わたしもパパも綺麗だもんね。特にパパはとっても綺麗だもん。わたしの自慢のパパを描きたいと言ってもらえたことが嬉しかった。
「パパ、どうする?」
「……ベルレナは描かれたいか?」
「うん。ねぇ、画家さん、その絵、わたしたちもらえる? わたしね、パパと一緒に描かれた絵が欲しいの」
折角描いてもらえるなら、その絵が欲しいなぁと思った。
そう言ったわたしにその人は笑顔で頷いてくれた。あとパパと色々話していた。魔法具で複製したものの一部を作品展で売りたいという話をしていたみたい。パパはその売り上げの一部を受け取る契約みたいなのをしてたみたい。あとそこまでばらまかないようには話をしていた。
その場でぱぱぱって描いて終わりなのかなと思っていたけど、本格的にモデルになるみたい。
画家さんの家に行って、パパとわたしを描いてもらった。描いてもらうのに時間はかかったけれど、なんだか楽しかった。
パパがわたしが描かれたいといったら、こうして付き合ってくれることが嬉しい。パパがわたしのことを大切にしてくれているからこその態度だと分かるから、わたしは笑ってしまう。
そういえば、画家さんの家は、元々錬金術の家系だったらしく、その本もいくつかあった。その本が欲しいっていったら、画家さんは本をわたしたちにくれることになった。
「えへへ、嬉しい。ありがとう! パパとの絵も素敵だし、本ももらえたし、嬉しい」
「いいんだよ。こちらこそ、モデルになってくれてありがとう」
わたしがお礼を口にしたら、画家さんは笑ってくれた。
それからわたしたちは屋敷へと戻った。
屋敷でわたしはパパに話しかける。
「ねぇ、パパ、これどこ飾る?」
「どこでもいいだろう」
「じゃあ、わたしが好きなところでいい?」
「ああ」
絵を何処に飾ろうかと相談したら、好きなところに飾ればいいと言ってくれた。
わたしはパパとわたしが描かれた絵を何処に置こうかと屋敷内をうろうろとする。この屋敷は広いから飾れる場所は沢山ある。
やっぱり大切な絵だからこそ、よく見える場所に飾っておきたいとそう思ってしまう。でも汚したくはないから、あまり汚れにくい場所に置きたいよね。
そんなことを考えながらわたしは屋敷の入り口の見えやすい所にどーんって置くことにした。そしてパパから習った魔法を幾つかかけて、お気に入りの絵を長く保存できるようにだ。パパのおかげで魔法も少しずつ使えるようになっていて、わたしは何だか嬉しい気持ちになった。
「ふふふ、パパ、これ、皆に自慢になるね!」
「あまりここには人は来ないだろう」
「んー、そうだけど、ニコラドさんとか! きっとこの絵を見たら、ニコラドさんも素敵だって言ってくれるよ」
「まぁ、そうだな」
この描いてもらった絵が素敵で、わたしは思わずにこにこと笑ってしまう。
この屋敷にはあまり人は訪れない。わたしがパパの娘になって一年以上たっているけど、ニコラドさんぐらいしか訪れないしね。
将来、誰かお友達が出来て招待することが出来たら――この絵を自慢したいなとも思った。
「そういえば、ベルレナ。あの画家からもらった本にはいいものあったか?」
「えっとね、まだちゃんとは見れてないんだけど、女の人が描かれているものもあったから少し美容に関するものもあるんじゃないかなって」
画家さんの家にあった錬金術の本の中には、女性が描かれているものがあった。そうやって女性が描かれているということは、わたしが錬金したいと思っている美容系のものがかいてあるのではないか、とそう期待している。
パパの言葉に画家さんからもらった本を読もう! という気持ちになったわたしはさっそく椅子に腰かけて本を読む。
自分の部屋でのんびりと一人で過ごすことも多いけれど、パパと一緒に過ごしたいと思うから、こうしてパパのいる場所で過ごすことも多い。パパもわたしがパパと一緒がいいっていったらいつもわたしの傍にいてくれるのだ。
本を読み進めていたら、目的のものが書いてあった。
「パパ、見てみて! 香水の錬金方法がちょっとだけのってる」
「香水? 匂いなんかつけてどうするんだ?」
「もー、パパはそう言う所、駄目だよ! 良い匂いを纏うっていうのは女の子にとってのおしゃれなんだから。わたしも綺麗なお花の匂いとか纏わせたいなぁ。あ、でもパパはこういうの苦手?」
「あー、濃いのは苦手だ」
「んー、じゃあパパが苦手じゃないものを作りたいなぁ。パパも気持ち良く振りかけられる香水作りたいなぁ」
香水と聞いて、パパが嫌そうな顔をした。
わたしも無理やりパパにそういうのを付けようとはしていないので、パパが気に入るような形でパパをおしゃれさせたいと思った。
わたしのパパをおしゃれにするぞという野望はまだまだ始まったばかりなのだ。
――そしてわたしは自分とパパのおしゃれのために、錬金術に励むのだった。




