パパとわたしと錬金術 ②
わたしはパパに習いながら、錬金術というものをやってみる。
もちろん、失敗をしないようにパパにちゃんと教わりながら恐る恐るやってみる。わたしがまず試しているのは、簡単なものである。簡単な痛み止めの錬金である。材料はわたしがこの屋敷でよく見かけた植物などだ。
何に使うのだろうと思っていたものが、こうしてこういうものに使えるのだと思うと何だか面白くなる。わたしは知らないことが沢山あって、その知らないことを知れることが嬉しくて仕方がない。
「パパ、こんな感じでいい?」
「ああ。そういう感じだ。ベルレナはちゃんと俺の注意を聞いてくれるから教えやすい」
「わたしがパパの言うことを聞くのは当然だよ。だってパパはわたしのためを思って言ってくれているのわかるもん! それにパパに教わっていると楽しいんだもん」
パパがわたしのために心を砕いてくれて、一生懸命教えてくれているのがわたしは嬉しい。だって知っているんだ。パパがわたしに教えてくれるために一生懸命考えてくれていたことを知っている。一人で準備をしていたの、わたしちゃんと見てたから。
そういう表には出さないけれど、裏でパパがそうやって動いていてくれていることがわたしは嬉しい。パパって誤解されやすい性格をしているように思える。
パパはぶっきらぼうな言い方をよくするし、何だか自分のことを優しいなんて思っていないけれど、今だってわたしが失敗しないように優しく見守ってくれている。
「パパ、出来たよ!」
「ああ。いい調子だ。ベルレナはそのホムンクルスの身体だからやりやすいというのもあるかもしれないけれど、こうやって素直に人の言うことを聞くのはある意味才能だ。その素直さが、きっとベルレナの人生の選択肢を増やしていくだろうな」
「選択肢?」
「ああ。ベルレナはまだ子供だろう。これからどんどん大人になっていく。大人になった時に自分がやりたいように出来るように出来ることを増やしていくのはいいことだ。ベルレナは素直だから、そうやって出来ることが増えやすいだろう」
パパはそう告げて、わたしにむかって笑いかける。
パパはわたしが大人になった時のことまで考えて、わたしに沢山の事を教えてくれている。出来ることが多くあるということは、それだけ色んな場所で活躍できることだから。
色んなことを出来るパパに教わっているからこそわたしは沢山の知識を手に入れる事が出来ている。
大人になった時のことなんて、わたしには想像が出来ない。大人になったら、もっとわたしも大人っぽくなれるのだろうか。
パパに似て、綺麗にわたしもなれるだろうか。パパのホムンクルスで作った身体だからこそ、綺麗になるんだろうなと思うけれど、パパに似たこの身体を最大限に綺麗にしたいなって思う。
そう考えるとわたしは、美容系のものを錬金術で作れたら嬉しいなって気持ちになった。
だって自分の見た目が美しくなるためのものが作れると考えると、何だか錬金術に対するやる気がより一層増した気がする。
「パパ、美容品とかって錬金術で作れる? 肌にいいとか、髪に艶がでるとか」
「美容品?」
わたしの言葉にパパは不思議そうな顔をした。パパはあまり美容品とか興味がないのかもしれない。でも男の人だから仕方がないのかもしれない。何もしてなくてもこれだけ綺麗だとか、パパって美しくなりたい女性たちには恨まれるかもしれない。
まじまじとパパは綺麗だなと見つめてしまう。
「美容品も作れるだろうけれど……俺はあまりそれらの作り方は知らない。書庫に少しぐらいは載っている本もあるかもしれないが。そういうのに興味があるなら今度、関連本でも買いにいくか」
「いいの? 行きたい! パパにも使いたいな。もっとパパが綺麗だと嬉しいもん」
「俺にか……? ベルレナがしたいなら別にいいが……」
やっぱりパパは何だかんだわたしに甘いなぁと笑ってしまう。
美容品を錬金して、もっときれいになって、パパももっと綺麗に出来たらきっと楽しいと思う。パパは見た目に無頓着だけど、パパはとても元がよくて綺麗だから、パパを着飾ることが出来たらきっと楽しい。
そう考えるとワクワクしてきた。
「わたし、パパをもっと素敵にするから!」
「何の決意をしているんだ……?」
決意をして宣言したわたしを見て、パパは何とも言えない顔をしていた。




