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パパとわたしと錬金術 ①

「ベルレナ、錬金術について教えよう」

「うん!」



 わたしはパパから、錬金術と呼ばれる物を教わることにした。



 錬金術というのは、様々な材料を用いて、自身の魔力を通して物を生み出す行為である。それは薬品だったり、物体だったり、様々なものがあるらしい。



 ちなみに薬師が行う調合と何が違うかといえば、この錬金術というものには魔力を用いるのだそうだ。調合でも錬金でも薬を使ることが出来るが、魔力を通して生み出す分、錬金術は作成において自由度が多いのだという。ただの調合では作れないものが作れたりするのだって。



 ただ自分の魔力を、物質に通して、変質させる――という錬金の行為は結構難しいらしく、錬金術を使えるものは世の中にそこまで多くないらしい。パパは調合も錬金も出来るらしいけれど。



 そう考えると、やっぱりわたしのパパは凄いなと思った。



 パパはあらゆる技術をわたしに教えてくれようとしているのだ。こういう自分だけしか知らない技術とかって、独占しようとする人が多いみたいなのだけど、パパはわたしになら全てを教えてもいいって思ってくれているみたい。そういうパパの気持ちがわたしにとっては嬉しくて仕方がない。




「錬金術で作れるものは様々なものだ。例えば、今のベルレナの身体もだな」

「この人間にしか見えないホムンクルスの身体も?」





 わたしの身体もパパが錬金術によって生み出したものらしい。不思議な気持ちになって、自分の身体を見下ろす。どこからどこ見ても普通の人間である。





「ああ。俺の身体の一部を使って、魔力を通し、変質させていった身体がその身体だ。そのホムンクルスの身体は人間と同じように成長し、人間の持つ機能は何でも出来るだろう」

「わたしの身体は、だからパパに似ているんだもんね。パパみたいにホムンクルス作れる人ってどのくらいいるの?」

「今の所、俺は俺以外にこんなホムンクルスを作った奴を知らない」

「わぁ……やっぱりパパはすごいね!」

「……それにもし今のベルレナの身体と同じようなものを誰かが生み出せたとしても魂までは調達出来ないだろうな」




 パパの言葉にわたしはそれもそうかと思った。



 わたしは神の悪戯と呼ばれるものが起こって、自分の身体を追い出された。そして追い出された先でたまたまパパと出会えた。

 パパと出会えたことは偶然で、きっと、少しでも何かが掛け違えていたらわたしはパパと出会えなくて、こんな風にパパと親子として過ごすことさえも出来なかったのかもしれない。

 そう思うと、わたしは思わず笑ってしまう。




「ふふ」

「どうした、ベルレナ」

「わたし、パパと出会えてよかったなぁって。パパと出会えたから、わたし、今こんなに幸せなんだもん」



 そう告げれば、パパはそのお月様のような黄色い瞳を柔らかく細めて、わたしの頭を撫でる。

 パパに頭を撫でられるのが大好きで、またわたしは笑ってしまう。



「でだ、色々なものが作れるわけだが――ホムンクルスは当然最高難易度だ。下手に作ろうとしたら製作者の方がひどい目に遭うこともある。魔法と一緒だな。魔力を使って行うことだから、ベルレナはちゃんと俺から許可をとってからやるように」



 しばらく頭を撫でた後、パパはまた続けた。



「うん! パパに許可もらってからする」

「そうしてくれ。錬金術に失敗して、片腕を失った奴とか、魂ごとぶっとんだ奴とかもいるからな。そうなったとしてもどうにかできるかもしれないが、そういうことはないほうがいい」

「えぇ……怖い」

「大丈夫だ、ベルレナ。ちゃんと俺の言うことを聞いていればそういうことにはならない。俺を信じろ」

「うん!」



 パパから錬金術が失敗した時の話を聞いて、恐ろしい気持ちになった。



 だって失敗してそういう目に遭うかもしれないなんて。そういう目に遭ったとしても皆、錬金術を成功させたいとかなのだろうか?

 でもパパは簡単になんでもこなせるし、錬金術だってパパの言う通りにしていれば問題はない。パパに信じろって言われると何だか何も心配しなくていいって思えた。




「ねぇ、パパ、危険な目に遭っても皆、錬金術をしようとするの?」

「ああ。まぁ、錬金術は金になるからな。一つの錬金術を成功させただけで莫大な財産を手に入れたりな。そういうものを求めている連中は面倒だから、ベルレナもそういうのと遭遇したら俺にいうんだぞ」

「うん」

「いや、というか誰に会ったとしても俺には一言言ってほしいか。ベルレナが信じた相手が実はベルレナのことを貶めようとするやつもいるからな」

「うん!!」




 莫大な財産が手に入ると言う可能性があるならば、そうやって危険でも錬金術を学ぼうとする人はいると思う。貴族として生きていた時もそういう人はいるって聞いたことあるもん。



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[一言] 魂ごとふっとぶとか怖
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