様々な種族の里を巡る ③
パパと一緒に訪れた獣人の里は、人間とあまりかかわりがない里だった。
パパは時々訪れるぐらいだったみたい。それにしても全員から尊敬に満ちた目を向けられているパパの凄さを改めて実感した。
わたしも人間だから、珍しいものを見るような目で見られたりもしたしね。この森の中で狩猟をメインに暮らしているらしく、小さな子でも狩りに参加したりしているんだって。
「ねぇ、パパ、すごいよね」
「ああ。ディオノレ様は凄いってうちの父ちゃんも言ってた。ディオノレ様のおかげでこの里は存続出来たって言ってたし」
「ふぅん。そうなんだ。流石、パパ!!」
それは獣人の子供たちが生まれるよりもずっと昔の話らしい。そのころのパパは魔導師になったばかりぐらいだったようだ。見た目は今と全く変わらなかったらしい。
魔導師だからこそ、パパは今の見た目らしい。そうやって綺麗な見た目のままずっと居れるとなると、うらやましがる人も多いだろうなと思う。パパはただでさえ私が見たことがないぐらい綺麗な存在で、美しさを求める貴族たちは特に魔導師に憧れるのかもしれない。
でもきっと魔導師って、私が思っているよりもずっとなるのが難しい存在なのだと思う。
――わたしがこのまますくすくと大きくなったら、パパの見た目を追い越してしまうのだろうか。そんなことを考えてしまった。
「――魔導師ってだけでもすごいって父ちゃんは言っていた。獣人は魔力をほぼ持たない種族だから、ほとんどいないって聞いてるけど」
「そうなの?」
「うん。そもそも魔導師が少ないんだって言ってた。数えられるだけしかいないんだって。俺らもディオノレ様以外の魔導師には会ったことはないから」
「……ニコラドさんとも会ったことないの?」
パパの友達ならここにも来ているんじゃないかと思ったのだが、ニコラドさんは獣人の里には来ていないらしい。というかパパもたまにしか来ないらしい。
今回はわたしに友達をつくりたいと思って連れてきたみたいだけど。でもわたしが獣人たちと仲良くなったからこれからこれからちょくちょく来る予定だってパパが言っていて、皆喜んでいた。パパのことを皆が慕ってくれていることが嬉しかった。
パパはわたしの自慢のパパだ。
そのことをパパのことを知れば知るほど、わたしは実感する。
獣人の里では一日思いっきり遊んでから帰宅した。一日だけだと、獣人たちのことをすべて知れたわけではないけれども、わたしはすっかり獣人たちのことが大好きになっていた。
こうして友達が増えていくことが本当にわたしは嬉しかった。
それから獣人たちの里を後にして、パパと一緒に家へと帰宅した。帰りももちろん、パパの転移魔法での帰宅である。
帰ってから、わたしはパパと一緒に会話を交わす。
「ねぇ、パパ。楽しかった。ありがとう。連れて行ってくれて」
「俺はベルレナの父親だから当然だろう」
パパはぶっきらぼうな言い方だけれど、優しい笑みを浮かべている。素直じゃないけれど、優しいパパ。魔導師として強い力を持っていて、特別な存在で――けれどもわたしにとってたった一人の、大切なパパだ。
わたしを見つけてくれたのが、パパで良かった。
「――友達が出来ると嬉しいか?」
「うん」
「……良かったな。でもあまり急に大人になるなよ」
「パパ、どうしたの?」
「いや……、ニコラドが、女の子は急に父親を疎むものだって聞いたからな。ベルレナに友達が出来るのは嬉しいが、そうなったら嫌だと思ってな」
「パパ、わたしはパパのことが一番大好きだよ! パパがいなければわたしは此処にはいないんだから!」
そう言いながら椅子に座っているパパの上に飛び乗れば、パパがぎゅっとわたしを抱きしめてくれている。
獣人の里、楽しかったなぁ。次はどんな子たちと仲良くなれるだろうか。
新しい出会いは不安もあるけれど、パパがいてくれるならわたしはどんな場所だって楽しんで過ごすことが出来るのだ。
やっぱりわたしはパパが大好きだ。
パパは心配していたけれど、わたしにとってきっとパパはずっとずっと大好きなパパだ。




