様々な種族の里を巡る ①
精霊たちの元から戻ってしばらくが経つ。
どの精霊と契約を結ぶかはまだ分かっていない。何度か精霊の元を訪れて、会話を交わした。けれどどうしようか決まっていない。
「んー、皆素敵で悩んじゃうね」
「ゆっくりでいい。それよりベルレナ、精霊たち以外の所にも行こう」
「うん。パパのお友達に沢山会いたいし、お友達も作りたいもん」
「……いや、知人なだけだって」
「そんなこと言って! 絶対にパパは友達関係でしょ。わたしから見て友達な距離感の人沢山いるはずだもん!! パパは素直じゃないんだから」
パパはわたしの言葉に反論はしなかった。
パパは本当に嫌だったら、わたし相手でも否定しただろう。何だかんだわたしの言葉を否定できない気持ちもあるから、パパは反論しないのだろう。
それにしてもパパは素直じゃないなぁって思ってしまう。こんな風に素直じゃないパパは、誤解されやすい。わたしはパパの娘として、パパが誤解されている時は、パパはとてもいい人なんだよって伝えたいなと思った。
「ねぇ、パパ、次は何処に連れていってくれるの?」
「どこがいい?」
「んー、悩んじゃう。わたしにとって、パパが交流を持っている種族たちと一度も会ったことないんだもん。全部わたしにとっては興味しかわからないし。パパが関わっている全部の種族の所に連れていってくれるっていうなら、順番に連れて行ってもらえたらって思うよ!」
「……俺が決めるのか?」
「うん! パパが決めたところでいいよ。パパが次に何処に連れて行ってくれるか、わたし、楽しみにしているから」
そう言って笑えば、パパは何処にわたしを連れて行こうかとすぐに決められないらしい。「ちょっと考える」とパパはそう言った。
パパはわたしをどんなふうに連れまわしてくれるだろうか。
わたしのためにパパが悩んでくれていることがわたしは嬉しいなぁと思う。パパは興味のない人のことは気にしないだろうから、これはパパがわたしを大切に思ってくれている証だと思う。
わたしはパパが悩んでいる間に、いつも通り過ごした。
ご飯の準備をしたり、魔法の練習をしたり、本を読んだり、精霊について勉強したり、一人ファッションショーを行ってみたり――やることは様々である。
それにしても新しいお友達が出来ると思うとわくわくするなぁ。友達になった人たちの名前は沢山覚えたいけれど、沢山の人たちと出会ったら覚えられるかも少し不安になってくる。
元々わたしはそこまで人の名前を覚えるのは得意なわけでもないから、忘れないようにしないと。わたしだったら仲良くなった子が、わたしの名前を憶えてくれてなかったら悲しいもの。
ちなみにわたしがそうやって過ごしている間、パパはずっとわたしをどこに次に連れていくか考えていたようだ。
正直、パパが関わりのある種族の所に全部連れて行ってもらえるのだから、順番はどれが先でもいいと思うのだけど。でもパパは何処に先に連れていくかで、わたしの人生に影響を与えると思っているようだ。
パパって真面目だよなぁって思う。
そういうわけでパパが悩んだ末にわたしのことを真っ先に何処に連れて行ってくれるのだろうかとわくわくしている。
パパがわたしのことを次に連れて行ってくれる場所を決めたらしい。
「とりあえず獣人の所に行こう。あいつらはそこまで選民意識がない」
「そうなの?」
「ああ。エルフたちよりはとっつきやすい」
「……エルフってとっつきにくいの?」
「年寄りはな。若い連中はともかく、年寄りは割と面倒だぞ」
「そうなんだ……。じゃあ覚悟しとく! でもそういう種族とも仲良くなっているってパパ、凄いね」
そう言って笑えば、パパは照れたようにわたしの頭を撫でた。
次は獣人と呼ばれる種族の元へ行けるとのことで、わたしは楽しみで仕方がなくなった。




