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パパとわたしと精霊と ②

「パパ、此処は崖の上?」

「ああ」






 パパの転移で連れられた先は、まだ精霊の世界ではないみたい。

 滝が近くにあるのか、水が上から下へと落ちていく音がする。生物たちの鳴き声が聞こえる。そんな崖の上にわたしとパパはいた。





「精霊たちの世界は?」

「こういう場所からそういう世界に繋がっているんだよ。直接精霊の所に飛ぶことは出来なくはないが……、ちゃんと正規の手続きで精霊の元へ行かないと後からややこしい」

「へぇ……じゃあパパ、此処から精霊の世界に行けるの?」

「ああ」






 でも確かに突然精霊の世界に転移するということは、突然家の中に人が入ってくるようなものだもんね。わたしもパパならば家族だし気にならないけれど、知らない人が家に転移してきたらびっくりしちゃう。

 不審者かもしれないって攻撃しちゃうかもしれない。

 そう考えるとちゃんとした手続きで、お邪魔しますっていって精霊の世界に顔を出すのがきっといいよね。






「パパ、この崖の上からどうやっていくの?」

「こっちだ」





 パパに手をひかれて、崖の方へと向かう。





 下を見ると地面がずっと下にあって、此処から落ちたら怖いなぁと思ってぶるりと身体を震わせてしまう。でも一匹の魔物が崖の上から降りて行って、そのまま平然としているのを見てびっくりした。

 この世界には不思議な生物が沢山いるんだなあと思った。



 パパが手をかざしたら、崖の傍に空間が出来た。石と石の合間に突然現れた不思議な空間の揺らぎ。





「ベルレナ、行くぞ」

「うん」





 パパがいない状況でこんなものを見たらわたしは驚いて、恐ろしくなったと思う。でもパパと一緒だから、わたしはパパと一緒にその空間の歪みの中へと足を踏み入れた。







 一瞬で目の前の景色が変わった。






 ――森の中だろうか。ただ木々の色が、カラフルだった。空の色は現実と一緒だけれども雲の色がまた違う。何だか不思議で、思わず目を瞬かせてしまう。

 わたしたちがその空間に足を踏み入れてすぐに、小さな人型の存在がわたしたちの側へとやってきた。空を飛んでいる。羽などはないけれど、小さな姿で飛ぶその子たちは、パパを見て騒いでいる。





「ディオノレ様だ」

「なんだか小さな子?」




 子供のように無邪気な声。でもその声も何だか不思議。現実味がない感じの、不思議な声。





「俺の娘だ。ベルレナ、こいつら見えるか? 声は?」

「見えるし、聞こえるよ!」

「流石、俺の娘だ」




 頭を撫でられて、何だか嬉しくなる。




 パパが与えてくれた身体だから、きっと私は精霊たちの姿が見えるのだろう。そう考えるとこんなに可愛い精霊をパパのおかげで見ることが出来るんだってパパに感謝の気持ちがわいた。





 わたしがパパの娘だと知って、寄ってきた小さな精霊は驚いてわたしの周りを飛び回っていた。他にも人の形ではなく、栗鼠や犬の形をしたような精霊もいた。彼らの言いたいこともわたしには何となくわかった。




 これもパパがくれた身体のおかげらしい。





「ディオノレ様の娘!」

「不思議な魔力」

「きゅいきゅい(なんだか面白い)」





 沢山の精霊たちに囲まれて、声をかけられる。それは嬉しいけれど、何処から返事を返したらいいのだろうかと戸惑ってしまった。






「おい。俺の娘をそんな風に囲むな。ベルレナは逃げないから、一人ずつ話せ。あとシルヴィーは?」

「シルヴィー様なら、向こう!」





 パパはシルヴィーという人の名前を出した。パパが仲よくしている精霊なのだろうか? パパはその人の場所を聞くとわたしの手をひいて歩き出した。




 わたしとパパが歩き出せば、精霊たちはわたしたちについてくる。




 そうして歩いている間で、パパは何人もに話しかけられていた。精霊は小さいものなのかと思っていたけれど、わたしぐらいの大きさの存在や、大人の姿を持つ者もいた。パパが言うには大人の姿を持つ者や、大きな生物の姿を持つ者ほど強い力を持つらしい。





 そうしてパパと一緒に歩いて行って、一つの大きな家の前にたどり着いた。

 この家もカラフルな建物である。だけど心なしか緑色が多い気もする。シルヴィーという人は、緑が好きなのだろうか?





 そんなことを考えているうちにパパがその家をノックして、中へと入った。




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