パパとわたしと精霊と ①
「ベルレナ、起きてるか?」
「あれ、パパ? パパ、目が覚めるの、今日はやいね」
その日、パパがわたしを起こしにきたので、わたしは驚いてしまった。
パパはいつもわたしが起こしにいかないと、起きなかったのにと不思議な気持ちになりながらベッドの上からパパを見る。
「ああ。たまには俺だって起きるぞ。ベルレナは俺が毎回、ベルレナに起こしてもらわなきゃ起きないと思っていたのか?」
「うん。パパは起こしに行かないと起きないって思ってた」
「……ベルレナ。俺だって、時々はちゃんと起きるからな?」
パパが何とも言えない顔でそんなことを言う。
わたしはパパの言葉を聞きながらベッドから降りる。
「ベルレナ、今日はこの前言った精霊の所に行くぞ」
「わぁ、今日連れて行ってくれるの!? おきる! 着替える!」
そうやって慌てて動き始めたら躓いてこけそうになった。パパが慌ててわたしを支えてくれる。
「――ベルレナ。そんなに慌てなくていい。危ないぞ」
「うん。パパ、ありがとう! 着替えるね」
「ああ」
パパはわたしの言葉に頷いて、部屋から出て行った。
わたしは外行き用の服に着替える。パパに買ってもらったもので、お気に入りの赤色のスカートをはいた。
なんだか沢山増えてきた服を見ると嬉しくなった。わたしはやっぱり洋服が好きだ。
「パパ、朝ごはんも作ってくれたの? ありがとう!」
「出かける日で目が覚めたからな。ベルレナほど凝った料理は出来ないけどな」
パパはそんなことを言うけれど、パパの作った料理ってだけで特別な感覚がある。なんだろう大好きな人が作ってくれたものだとそれだけで私にとって特別というか……なんだか嬉しいものなのだ。
「パパ、美味しい」
「良かった」
パパはわたしの言葉に小さく笑う。
なんだかパパが嬉しそうで、私も嬉しかった。
「ねぇ、パパ、精霊の所って近いの?」
「あーっと何て言えばいいかな、精霊はここにあってここにないみたいなそういう存在というか、ある意味別世界に精霊はとどまっている」
「ん? よく分からない」
「……まぁ、精霊のいる場所は、中々説明しずらい。解明もあまりされていないんだが、そういう場所があるとそれだけ思ってもらえばいい」
「ふぅん。なんだか難しいけど、いってみたら色々分かるかな」
「ああ。そうだな。行ってみた方が分かるとは思う」
パパにそんなことを言われて、わたしは精霊のいる場所はどういう場所なのだろうかとわくわくしてしまう。
想像してみると、なんだか楽しい。
精霊はどんな形をしているのだろうか。別世界というのは、どういう世界だろうか。その世界にいってみたら、何だか不思議な感覚になったりするのだろうか。空の色が違ったりとか、別世界と思えるようなものなのかな。それとも別世界とはいっても、わたしたちが暮らしている場所と変わらない感じになっているのかな。
なんだか想像をするとはやくその場所に行きたいとそういう気持ちがわいてくる。
「パパ、わたし、はやく行きたい! 考えただけでも楽しみ!!」
「ベルレナ、楽しみなことは十分伝わるが、もう少し落ち着け。精霊は逃げはしないからな」
「うん!」
パパに注意されて、わたしは素直に頷く。
精霊とどんなふうに仲良くなれるかな。わたしと仲よくしてくれるかな。そういうことを考えるだけでわたしはうずうずしてくる。
「ねぇ、パパ、精霊の世界って色とか違ったりするの?」
「色? 何のだ?」
「空とか、土とか! なんだろう。、別世界って言うのならもっと空が赤色とかあるのかなーって」
「はは、なんだ、それ」
パパはわたしの言葉に面白そうに笑う。
わたしは変なことを言ってしまったのだろうか? パパの方を見れば、パパはわたしの頭を撫でながら言う。
「それは実際に精霊の所にいってから自分の目で確認すればいい」
「うん。そうする。何だか楽しみ!!」
わたしがそう言えば、パパは優しく笑っている。
それから食事が終わってからパパと一緒に出掛けることになった。
「ベルレナ、行くぞ」
「うん。パパ」
パパと手を繋ぐ。
パパと手を繋ぐと何だか安心する。パパの転移の魔法でこれから移動することになる。
他の、全然知らない人が相手だと転移で移動されるのは不安になるけれど、パパが連れて行ってくれる所ならどこだって問題がないとそんな風に思える。
そしてわたしはパパに連れられて、見た事もない場所に移動していた。




