パパからの提案 ②
「交流を持っている集落?」
「ああ。ベルレナは……人間以外の種族とは関わったことはあるか?」
パパがそんなことを問いかけてきて、わたしは首を振る。
わたしが住んでいたのは、人間だけの国だった。他にも異種族が存在していることは知っているけれど、遠目にしか見た事がない。関わったことというとあまりない。
獣の耳がついていたりする種族がいたり、竜のような種族がいたり――色んな種族がいることは公爵令嬢として学んだ勉強の中で知っている。
でも実際に話したりすることはない。
パパがそういう話をわたしにするということは……、
「パパが交流を持っている集落っていうのは、人間以外の種族の集落なの?」
パパがこれからわたしを連れて行こうとしている場所がそういう人間とは違う種族の集落ということだろう。
そう思って問いかければ、パパに頭を撫でられる。
「ああ。そうだ。やっぱりベルレナは頭の回転がはやいな」
「そんなことないよ? パパが関係ないことを口にすると思わなかったから。それにしてもパパはそういう人間以外の種族とかかわりがあるんだね」
地域によってそういう異種族とかかわりがある地域と、そうでない地域がある。人間以外の種族の中には、他の種族とかかわりを持とうともしない種族も多くいると聞いている。
パパはどういった種族と親しくしているのだろうか。パパは長生きをしている魔導師だから、わたしが想像もつかないような種族と交流を持っていたりするんだろうか。
「魔導師はそういう種族ともかかわりが深かったりするんだよ。あいつらも長生きしている連中が多いし。魔導師である俺もそうだからな。それに人間ほど面倒ではないし」
「パパ、そう言った決めつけた言い方はよくないよ!」
「そうだな。すまん。ベルレナも人間だしな。そうやって決めつけるのはよくないよな」
「うん! そうだよ。パパ!!」
パパの言葉にわたしは満足して頷く。
やっぱりパパは優しいと思う。ぶっきらぼうでも優しい。そのパパの優しさを感じるとわたしは嬉しい。
どういう人たちとパパが交流をしているか分からないけれど、パパがこういう性格だからこそそういう人たちとも付き合っていけるのかもしれない。
「ねぇ、パパはどういった人間以外の種族と関わっているの? わたしをどこに連れていってくれようとしているの?」
「そうだな。エルフや獣人、ドワーフ、あとは精霊とか……沢山だな。一部の集落とは交流を持っている。中には行く度に喧嘩を売ってくる奴らもいるがな」
「え? パパ、仲よく出来るなら仲よくしたほうがいいよ!!」
「……善処はする。でも向こうから喧嘩を売ってくるなら仕方ないだろう」
「うん。それは仕方ないと思うけど……でもわたし、パパが皆と仲良くしている方が嬉しいなぁって。もちろん、どうしようもない時は仕方ないって思うけど」
そう言ったらパパがわたしの頭を撫でてくれた。
というか、パパに喧嘩を売ってくるって、喧嘩友達か何かなのかな? 喧嘩なんてしない方がいいとは思うけれど、世の中には喧嘩をしてこそ生まれた絆で仲よくしている人たちもいるって聞いたことあるし。
それにしてもわたしが知らないパパの一面を知れるかと思うと嬉しい。それにそういうパパと交流がある集落に行って、友達が出来たら嬉しいなと思う。
なんだか考えるとわくわくしていた。
「ベルレナ、楽しそうだな。まずは精霊たちの所に連れて行ってやるよ。ベルレナが精霊のことを見えたらいいが」
「精霊って見える見えないがあるの?」
「ああ。見えたり見えなかったりだな。人によるが……ベルレナは俺が作ったホムンクルスの身体を使っているからな、おそらく見えるだろう。気に入った奴がいたら契約でも結ぶといい」
「そうなんだ! 楽しみ! パパは契約を結んでないの?」
「俺は精霊を必要としていない」
パパにばっさりそんな風に言われた。
それにしても精霊かぁ。精霊って人とは異なる存在で、自然に漂っているって言われていた気がする。何だろう身体を奪われて魂として漂っていた時のわたしと似たような感じなのかな?
そういえばクイシュイン家では、契約している火の鳥の精霊みたいな存在が確かいるんだよね。お父様とお母様が昔教えてくれたんだよね。もうわたしはクイシュイン家の娘ではないから関わることはないけれど、確かクイシュイン家の血が流れている者の言うことを聞くとかそんな強大な存在だったはず。わたしもあんなことがなければそういう存在と出会う予定だったんだよなぁ。
今はわたしはベルラじゃなくてベルレナだからそういう未来は来ないけど。
「パパ、まずはってことは他にも連れて行ってくれるの?」
「ああ。俺のかかわりのある連中の元には一通り連れていく。それでベルレナが気に入った存在がいれば友達になればいい」
「うん!!」
パパと一緒に、パパの知り合いの場所を巡るなんて、楽しくて仕方がない催しだ。
パパがわたしのことを娘だって紹介してくれるのだと想像をするだけでも嬉しくてにこにこしてしまうのだった。




