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わたしとパパの初めての冬 ③

 冬は生き物たちの冬眠の季節だ。もちろん、冬に活動的な魔物もこの山の上には存在しているらしいけれど。





 今日はパパと一緒に山を散歩している。

 自分の足で歩いてみたい! とわたしが言ったからパパは一緒に歩いてくれている。疲れたら魔法でわたしのことを家に連れて帰ってくれると言っていた。




 パパと一緒に手を繋いで雪山を歩くのも楽しい。生物の姿はあまり見えない。だけど時々活動的な魔物を見かけた。そういう魔物はわたしに気づくと、わたしを食べようとしているのか、わたしに襲い掛かってきた。




 だけれどパパが一瞬で倒していた。流石だなぁとわくわくした。いつかわたしもパパと同じぐらいに魔法を使えるようになるだろうか。そうなれたらいいなと思った。




「ねえ、パパ。あの魔物は?」

「あれは寒い地域にいきるクマだな。あんな見た目だけど凶暴さはそこまでない。あんな見た目で木の実が大好物だしな。あとは蜂蜜か。この冬だと蜂蜜はないから、備蓄していた木の実などを食べるんだろう。他のクマ系の魔物だと冬眠しているものが多いんだが、あいつは冬でも活動的だ。あとは雪を食べたりも結構しているっぽいな。でもベルレナは食べるなよ。身体を壊すからな。こういう雪は案外汚い。ああいう魔物はゴミでも食べられる器官がちゃんとあるからな」

「そうなんだ……。じゃあ、もしこうやって山とか行くことがあって、パパとはぐれたりしても――」

「……俺が一緒ならベルレナのことは絶対にはぐれさせない」

「もうパパ、もしもの話だよ。それで、魔物が食べているからって食べたら大変なことになるかもしれないってことだよね」




 もしもの話なのに、はっきりといったパパに思わずわたしは笑ってしまった。

 何だかこういうやり取りをしていると、パパと仲良くなれたんだなぁと思ってわたしは何だか嬉しい気持ちになった。

 もしもの話で、もしわたしが一人で森に行くなんてことになった時に、魔物と人では身体の器官も違うから、魔物が食べられるからといって食べることはしない方がいいということだろう。




 まぁ、一概にそうは言えないかもしれないけれど、それでもそういうことは考えておかないと長生きが出来ないのかもしれない。




 わたしは一度自分の身体から追い出されて、誰とも会話を交わさず生きているとは言い難い状況だった。だからこそだろうか、ずっと長生きできるようにしていきたいなぁと思う。

 それにパパはわたしがご飯を作らないとご飯を適当に食べたりして、パパが心配だしね。







「そうだな。そういう時はあまりないだろうが……、ちゃんとした知識を覚えておくことはいいことだろう」

「わたし、沢山、覚えたいな。パパの自慢の娘だっていってもらえるように!」

「今でも十分、自慢の娘だ」

「ふふ、ありがとう、パパ! でもわたしもっと、パパに誇れる娘でありたいから、もっと頑張るの!!」




 パパがほめてくれると嬉しくて仕方ない。でもパパにもっと褒められるためにももっともっと、パパのために頑張りたい。パパの自慢の娘だともっと言ってもらえるように。




「ねーねー、パパ、あのかまくらみたいなのって何かな?」

「魔物が作っている家だな」

「え? 魔物が作るの? なんか小さな穴があるけど、あれが入口?」

「そうだな。あそこから出入りしている魔物だな。寒さに強い魔物ならああいう住処は住みやすいんだよ。ただあくまで魔物の住処だから、下手に人が入り込むと痛い目を見るぞ。驚くような場所にでも魔物は住んでいるからな」

「そうなんだ。それにしてもパパは本当に色んな知識を持っているよね。わたし、昔家庭教師から色々習っていたけど、何だかパパの方が凄い物知りに見える」





 ベルラだった頃のわたしは家庭教師が嫌で追い返したり、あまり話を聞かなかったりしてしまっていた。今思うとそれはもったいなかったなぁと思う。


 でもこうしてベルレナになったからこそわたしは様々なことをちゃんと学ぼうと思っているのだ。

 パパが教えてくれるから、何でもちゃんと覚えておこうと思うのだ。





「パパはそう言う失敗したことある?」

「あるぞ。寧ろ洞窟だと思って入ったら魔物の身体の一部だったとかもな……。中から魔法使ってなんとか出たけれど、あのままだったら消化されていただろうな」

「うわ、なにそれ。怖い!! パパ、生きていて良かったぁ!!」





 想像して怖くなって思わずパパに抱き着いてしまう。パパは苦笑しながらわたしを抱きしめてくれた。それにしても洞窟だと思ったら魔物だったって怖いと思う。そういう時にわたしに何の力もなかったらわたしは食べられてしまうだろう。




「そういう魔物は珍しいから遭遇することは少ないだろうな」

「少ないの? ならちょっと安心かも。でも今度、パパが食べられそうにならないように覚えたいな」

「じゃあ、家に帰ったら教える」

「ありがとう、パパ!」




 そうやって会話を交わしながら、わたしとパパは冬の山を散歩した。



 最終的にわたしが疲れて眠くなったらパパが魔法でわたしたちを帰還させるのだった。



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