わたしとパパの初めての冬 ②
「パパ、このくらいでいい?」
パパと一緒にゆきだるま作りに挑戦をしている。ゆきだるまの頭の部分――小さな雪玉の部分をわたしが作って、大きな体の部分はパパが作ってくれる。
何だか、魔法でなんでも出来るパパがわたしに付き合って、自分の手で雪玉を作ってくれていることがわたしは嬉しいなぁと思う。
「もう少し大きい方がいいんじゃないか?」
「んー、じゃあ、もう少し転がしてみる」
パパの助言を得て、わたしはもう少し雪玉を転がしてみた。パパがその様子を優しい目で見つめていてわたしは嬉しくなった。
「パパ、出来た!!」
「おう。じゃあ、のせるか」
二人でわたしが転がして作った雪玉を、パパが転がした雪玉の上に乗せる。それにその辺から持ってきた木の枝で、手を作り、顔も作る。
「できたね!!」
「ああ」
「初めてゆきだるま作ったけれど楽しいね。冷たいけれど、こんなに楽しかったんだってびっくりした!」
雪遊びなんてベルラだった頃にはしたこともなかったけれど、こんなに楽しくて仕方がないのだと知ったら今まで雪遊びをしたことがなかったことがもったいなく感じてしまった。
「ねー。パパ、雪遊びって他に何があるの? パパは何か知ってる?」
「そうだな。かまくらを作ったり、雪合戦をしたりかな」
「雪合戦ってどんなの? 戦うの? 怖い?」
「雪玉を投げ合う遊びだな。ただ俺とベルレナだけでするには人が少なすぎる」
「そっかぁ。大人数でやるものなんだね! それで、かまくらっていうのは?」
「かまくらは――」
パパは長生きしているからなのか、やっぱりとても物知りだ。かまくらは人が入れるぐらいの家のようなものを雪で作るんだって。その中で何か食べたりするんだって!! 楽しそうなんて思っていたらずっと外にいたからかくちゅんとくしゃみをしてしまった。
「ベルレナ、風邪をひいたら困るから中に入るぞ」
「えー! もっと遊びたい!! ね、パパ、駄目?」
「……駄目だ。それに雪はしばらくの間、降り続ける。雪は逃げないから、ちゃんと中へ入れ」
「はーい」
くしゃみをしても風邪なんかひかないし、大丈夫。もっと遊びたいと言う思いが沢山溢れて、パパにおねだりしたけれど、駄目といわれた。これ以上、パパを困らせたいわけではないので素直にわたしは頷いた。
なんだかこうしてちゃんと止めてもらえると、パパに我儘をいってもいいんだってそう思えてくる。パパはわたしが我儘を言い過ぎたらこんな風に止めてくれるんだっていうそれがわたしにとっては嬉しい。
「ね、パパ、温まったらまた雪遊びしていい?」
「ああ。温めてからな」
「うん。一緒にまた遊んでね!!」
「ああ。もちろんだ」
パパがわざわざわたしの雪遊びにまた遊んでくれるというのがわたしは嬉しい。やっぱりパパは優しいなぁ、大好きだなという思いでいっぱいになった。
それからしばらくしてまた雪遊びにわたしは精を出すのだった。
わたしが遊んでいるばかりに見えるかもしれないけれど、雪遊びが楽しいからといって、魔法の勉強や料理をさぼったりはしていないよ!
パパに教えてもらいながら、魔法もわたしは少しずつ上手になってきていた。もちろん、まだまだわたしは未熟だけど、パパがほめてくれるぐらいには上達しているのだ。
ただ一つ残念なのは、わたしが得意な火の魔法を使うと、雪が解けてしまうことだ。わたしの火の魔法の適性が高いのもあって、制御が甘いとすぐに溶けて行ったり、木が燃えそうになるのだ。パパがすぐ消してくれるけれど、もっと周りに影響がないように魔法を使えるようにならなければならないなぁと思っているのだ。
「ねぇ、パパ、スープ美味しい?」
寒くなってから、わたしは暖かいスープや鍋系の料理をよく作るようにしていた。書庫には沢山の料理の本があって、寒い地域で食べる料理というのを冬は作るようにしていた。
それにしても食料庫には寒い地域で手に入る食材も沢山入っていて、色んなものが作れて楽しかった。
「ああ。美味しい」
「良かったー!! パパが美味しいっていってくれると、わたし、嬉しい!!」
パパは食事にあまり関心がなくて、食べられればそれでいいと思っていたみたいだけど、わたしが色々作ることでお気に入りの料理も出来たみたい。わたしの料理の中でパパが気に入ってくれた料理があるというのが、わたしは嬉しかった。
「ベルレナは料理が好きだよな」
「うん。作るの大好き! それに作って喜んでもらえるのが嬉しいもん!!」
わたしはこうしてベルレナになって初めて料理というものをしたわけだけど、案外わたしは料理を作るのが大好きになっていた。何より、一緒に食べてくれる人がいて、その人が大好きなパパで、喜んでもらえるのが好きだなぁと思っている。
「そうか。ベルレナは良いおよめ……いや、これはなしだ」
「ん? 何をいいかけたの? パパ?」
「ベルレナにはまだ関係ないことだから気にしなくていい」
パパは何かをいいかけて止めた。
何を言いたいのかわたしにはさっぱり分からなかった。でもパパが言いたくないことならそれ以上聞かなくていいかと思った。




