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わたしとパパの初めての冬 ①

 わたしとパパがレンドンの街を訪れてから早数か月が経過している。



 その間にわたしは、パパと色んな場所に出かけた。それはレンドンの街のように特徴的な街だったり、祭りを行っている村だったり、巨大生物が目撃されている湖だったり――。わたしがベルラだった頃には見ることが叶わなかった場所。



 訪れることさえも考えなかった――そんな場所にわたしはパパと一緒だからこそ訪れることが出来た。あとニコラドさんも屋敷に時々やってきて、わたしに色んなものをくれる。



 ニコラドさんのくれたプレゼントに喜んでいると、パパが対抗してわたしにプレゼントをくれたりもした。

 ニコラドさんはそんなパパの様子を見て、楽しそうな表情を浮かべていた。




 そうしてわたしは楽しく過ごしていた。



 ほとんど屋敷の中で、パパと二人きり。その二人きりの生活がわたしにとってどうしようもなく楽しい暮らしだったのだ。

 ――そして、冬がやってきた。




「わぁ!! パパ、パパ、見て!! 凄い雪!!」




 わたしとパパが暮らしている屋敷は山の上にあるのもあって、起きてから窓の外を見ると一面を白色が埋め尽くしていた。それは雪である。

 わたしも山の上だと雪が沢山つもって寒いのだと、ベルラだった頃も聞いたことがあった。でもこんなに沢山の雪が降るなんてびっくりだった。



 思わずわたしはパパの部屋を開けて、眠っているパパを起こして、一緒に窓の外を見た。

 屋敷で長く暮らしているパパにとっては、外が一面の雪で埋まる光景も見慣れたものだったのだろう。

 それでもパパはわたしと一緒に雪を覗いてくれた。




「雪か」

「うん!! ねぇ、パパ、雪遊びしてきていい? というか、パパも一緒にやろう?」

「まぁ、いいぞ。ただ、ちゃんと朝食を食べて、防寒してからな」

「うん!!」



 わたしはパパの言葉に頷く。




 パパが一緒に雪遊びをしてくれる! と思うと、わたしは嬉しかった。




 それにしてもベルラだったわたしははしたないって、そういう遊びをやらせてもらえなかったんだよね。平民の子供たちがそういう遊びをしているの知っていてうらやましいなぁって思って、だから雪遊びしたいってお母様とお父様に我儘言ってた記憶がある。結局代わりにドレスを買ってもらって、雪遊びしたことがない。



 パパは雪遊びしたことあるのかな? 






「ねー、パパは雪遊びしたことある?」

「俺か? いや、ないな。そんなに雪に関心がなかった。元々俺が住んでいた場所は雪が降る場所だったし、どちらかというと雪かきが大変だった記憶しかない」

「そうなんだ。あれ、此処は雪かきしなくていいの? 雪、結構ふっているよね?」

「俺が魔法で雪が積もらないようにしているから問題はない」

「そうなんだ。パパ凄い!!」




 雪が沢山降ると雪かきというのをやらないと生活が大変なんだって。でもこの屋敷ではパパが魔法で雪かきしないでいいようにしているらしい。魔法って便利だな。わたしも何処で過ごすにしても、過ごしやすいように魔法を使っていけたらいいな。



 それにしてもパパは雪が降る地域の出身なんだ。何だか似合う。パパは真っ白な髪を持っていて、それは雪国に馴染む気がする。わたしもいつかパパが生まれた場所に連れて行ってもらえたりするのかな?

 パパと一緒に朝食を食べる。




 今日は寒いから、温かいスープを用意している。とはいえ、室内もパパの魔法の効果か、思ったよりも寒くないけどね。あと冬用の魔法具も沢山置いてあるからなんだって。

 でもそうだよね。こういう山奥で暮らしていくのならば、何でも自分で出来なければいけないからだと思う。わたしもパパがいなければここで過ごしていくことは出来ない。少しずつこの屋敷で過ごしていけるようになってきていると思うけど、もっと色んな事が出来るようにわたしはなっていきたいなと思った。






「パパ、行こう!!」

「待て、ベルレナ。もっと上着を着ろ。外は寒い」




 わたしは十分かと思って朝食を食べ終えた後、飛び出そうとしたらパパに止められた。もっと厚着をしたほうがいいみたい。




 わたしはパパの助言に従って、上着を着る。この上着も出かけた時にパパが買ってくれたものだ。パパが買ってくれたおかげでわたしは結構服を手に入れている。お気に入りのパパが買ってくれた服が沢山あると思うと、何だか嬉しくて仕方がなかった。




 こうしてお気に入りのものが沢山増えていくと、本当にわたしがベルレナという存在になったのだと実感が出来た。





 上着を着て、パパと一緒に屋敷の外に出る。雪を踏む感覚が何だか不思議な気持ち。かがみこんで雪をぺたぺたと触る。冷たい。手の中ですぐに溶けていく。

 舐めたら美味しいんだろうかと手に取って口に運ぼうとすれば、パパに止められる。






「ベルレナ、なめるな。雪で遊ぶなら別のことをしろ」

「わかった!」




 ちょっと雪をなめてみたかったけど、パパがそういうのでわたしは素直にうなずいた。

 さて、何をしてみようか? そう思いながら手を取ってみる。でもわたし、雪遊びってどういうものがあるかいまいち分かっていない。





「ベルレナ、どうした。遊ばないのか」

「遊ぶけど、どういう遊びがいいかなって。わたし、今まで、雪遊びしたことなかったから……」




 わたしがそう言えばパパが口を開く。




「なら、ゆきだるまでも作るか?」

「ゆきだるま?」

「ああ」




 パパが言うので、わたしはゆきだるまというものを作ってみることにした。


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