レンドンの街 ④
「全部見つけれた!!」
わたしは嬉しくなってにこにこと笑ってしまう。
なんでかって? 珍しいランプを探す催しで、全部探し終えたからなのだ。結構難しかったけれど、パパと一緒ならば楽しくて、夢中になってしまった。
途中でお腹がすいてご飯で休憩することはあったけれど、それ以外はずっと珍しいランプを探していた。
わたしは楽しかった。
珍しいランプを沢山見つけられて、美味しいご飯を食べれて――。こうして街を見て回る中で、いきたいお店や場所も沢山見つけることが出来て、まだまだこのレンドンの街の楽しみが増えた。
それにしても沢山、レンドンの街を見て回ったけれど、見て回る度に見たい場所が沢山出来るなんてすごいなと思う。
それにしても一つの街を見るだけでこんなに楽しいものが沢山あるなんて。
もっと大きな街に行ったらまた楽しいものが見つかるのかな? わたしはわくわくしてしまう。
このままこの紙を持って役所に向かって、景品をもらわないと!! そう考えてにこにこしているわたしは、次の瞬間はっとなった。
「わわ、パパ、ごめんね!」
「どうした、突然?」
パパはわたしが謝れば、不思議そうな顔をした。
「いや、だってわたし一人ではしゃいじゃった。パパだって見たい場所とか、食べたいものとかなかった? わたし、はしゃいじゃって、パパが何をしたいのか聞かなかったの。はやく珍しいランプを探したいって思っちゃったから……」
パパは我儘でもいいって、我儘を幾らでも言えばいいって言ってくれるけど、レンドンの街にたどり着いてからひたすらわたしがパパを連れまわしてばかりだった。
ちゃんとパパが何をしたいかも考えなきゃいけなかったのに! とわたしは反省していた。
「そういうの気にしなくていいって言っただろう。それに俺はベルレナが楽しそうにしていて楽しいよ」
「わたしが楽しそうにしていて楽しい?」
「そうだ。俺は前も言ったように長く生きてるからな。あまり周りに関心が持てなかったりする。逆にこんな街でこれだけはしゃいでいるベルレナを見ていて楽しいから」
「んー、パパはもっと周りに関心を持った方がいいと思うの!! この前も綺麗なランプを見てもランプのことを気にしてなかったし!! 目の前に綺麗なものとか、気になるものがあったらもっと興味を持った方がきっと楽しいよ!! それにわたし、もっとパパが色んなものに興味を持って、色んな顔をするの見たいもん!」
最後には自分の願望が漏れ出てしまった。だってパパがさ、もっと色んなものに興味を持って、色んな顔をしたらきっと素敵だもん。パパはとっても綺麗な顔をしていて、その綺麗な顔が沢山の表情をしたら素敵だもの。
ああ、でも色んなものにパパが興味を持って、わたしに対する関心を無くしちゃったら寂しいかもしれない。
なんて考えていたら、パパが凄く楽しそうに笑っていた。
「ははは。ベルレナは本当に面白い。さっきまで落ち込んでたのにさ」
パパはそう言いながらわたしの頭を撫でる。
「そうだな。俺もベルレナっていう娘が出来たから、今までのように一人屋敷にいて、何にも関心を持たずにいるっていうのはできねーよ。多分これから……俺は昔の知り合いが信じられないぐらいに、周りに関心を持ったりしながら生きていくんだと思う。それは他でもないベルレナのおかげだからな」
「わたしのおかげ?」
「そうだ。俺がたまたま拾った魂が、ベルレナがベルレナだから、俺はわざわざこうして街にまで来てる。ベルレナじゃなきゃこんなことはなかったからな」
「えへへー。わたしのおかげ!! 嬉しい!! わたしも拾ってくれたのがパパじゃなきゃ、こんなに楽しくなかった!! パパ、大好き」
「はいはい」
パパはわたしの言葉にわたしの頭をまた撫でてくれた。
それからパパと手を繋ぎながら、わたしは役所に向かった。役所で珍しいランプを見つけた証をさしだすと、職員さんはにこにこと笑って、わたしに景品をくれた。もらった景品は、ランプのイラストのかかれたノートだった。
わぁ、可愛い。
なんだろう、自分が頑張って手に入れたものだと思うと、何だか特別感がある。
「ベルレナ、嬉しいか?」
「うん。嬉しい!! なんだか、自分で手に入れたものって嬉しいね」
ベルラだった時は、思えば与えられてばかりだった。わたしが公爵家の娘だったから。わたしが欲しいと言えば、わたしは何の苦労もせずに、自分で何かをせずに、それらを手に入れることが出来た。
ベルラだった頃は、こんな風に自分で頑張って手に入れる喜び何て考えたことがなかった。
やっぱり何だか嬉しいなぁとそのノートを抱きしめてしまう。
それからは、珍しいランプを探す中で見かけた気になるお店や場所をパパと一緒に何日も見て回った。見て回りたいものが沢山あって、思ったよりも長い間、レンドンの街で過ごした。
「パパ、わたし満足した!!」
「そうか、じゃあ、帰るか」
「うん。また来たいな。それに他の街にも行きたい!!」
「そうだな」
「あ、でも初日に会ったあの可愛い桃色の女の子に会えるかなーって期待したけど会えなかったのは残念」
「まぁ、ふと忘れた頃に会えるかもしれないだろう。とりあえず、帰るぞ」
「うん!!」
あの桃色の髪のかわいらしい女の子に会えたらなーって思ってたけどあえはしなかった。
でも、そうだね。どこかでまた会えるかもしれないことを期待して、屋敷に戻ろう。わたしの家である、パパとわたしの屋敷に。




