レンドンの街 ③
わたしはパパと一緒に手を繋いで歩いている。
パパと手を繋いでいると、色んな所から視線が飛んできていて、やっぱりパパは目立つなと思った。
珍しいランプ探しの催しに、わたしは胸を高鳴らせながら歩く。
星型のランプ、燃える炎のようなランプ、音符型のランプ――など、そういうランプを探す。あたりをきょろきょろしながら見渡すと、本当に色んな形のランプがあって楽しい。催しの対象ではないけれども、それでも可愛いランプもあって、そのランプを模したお土産が欲しくなった。
「ねぇ、パパ。あのランプ可愛くない? あのランプのお土産ほしいかも!!」
「この街の連中は商売上手だな」
「商売上手?」
「ああ。こうやって催しをさせて、もっと色々買わせようとしているんだろ。まぁ、ベルレナが欲しいなら買ってやるから幾らでも買え」
「パパはわたしを甘やかしすぎだよ!!」
「もっと甘えていいんだぞ?」
パパに優しく微笑まれて、頭を撫でられると何だかどうでもよくなってくる。パパに撫でられるの気持ちが良いなぁ。って、違う違う!! わたしは今から、催しを頑張るのだ! そんな気合を入れてパパを連れて街中を見て回った。
一つ目の星型のランプは案外、街の中心部にあった。ただ、色んなランプが周りに沢山あって、該当のランプを探すのはちょっと大変だったけど。そこで役所の職員さんがサインと、印鑑を押してくれた。なんだか、こうして見つけたって証が埋まると嬉しかった。
「なぁ、ベルレナ、こっちのは――」
「パパ!! 見つけたとしてもちょっとしーってしてほしいの! わたし、出来れば自分で見つけてみたい」
パパは早速次のランプを見つけたのかもしれないけれど、わたしはまだ見つけられていないのだ。
出来れば自分の目で見つけたいなとそう思っているから、一旦、パパに口にしないでって言ったらパパは黙った。
わたしはきょろきょろと周りを見ながら、探すけれど、パパが見つけたそのランプはわたしは見つけられない。
「むー」
わたしは目を細めてきょろきょろするけれど、見つからないのだ。
パパはどうやって見つけているのだろうか。パパに視線を向ける。
「どうした?」
「ね、パパ、わたし、全然見つけられないの。パパはどうやって見つけたの?」
「俺はたまたまだな。あとは、そうだな……。敢えて探そうとせず、景色を見る感じで見たらいいんじゃないか。そうしたら見えてくるものはあるとおもうが」
「敢えて探そうとせず……」
「そうだ。ベルレナが将来、どういう暮らしをするかは分からないし、俺も親としてベルレナを守るけれど……。何かあった時は視野を広げていたほうがいい。そういう視点を学んでおけば、絶対将来のためにはなるからな」
「うん、わかった!!」
わたしはそう言って頷いて、目的のランプを探そう探そうという気持ちじゃなくて――、ただ景色を見るように周りを見渡す。
そうすると、なんだか先ほどとは違った風景に見える。不思議な気持ちだ。
そうしてゆっくりとあたりを見渡していると、人が座っているベンチの向こうに、目的の小さなランプがあった。
「わっ、あったよ、パパ!! パパはやっぱりすごいね!! パパの言うことを聞いたら見つかったよ!!」
「いや、俺は凄くないだろ。でも見つかって良かったな」
「うん!!」
そうやってパパと一緒に催しを達成するために、街を見て回っていたらあたりが暗くなってきた。暗くなればなるほど、ランプが綺麗に煌めいて、美しかった。
「パパ、とっても綺麗!!」
「そうだな。綺麗だな」
「パパ、あっちに人が集まっているよ!! もっと何か綺麗なものがあるのかな!!」
途中からあまりのランプの美しさに目的のランプを探すことを忘れて、人が集まっている方に向かった。
そこに向かえば、並んだランプが色んな形を現わしているエリアが並んでいた。夜だからこそ煌めく。しかも動いているものもある。それってもしかして魔力を使っているのかな。
蝶の形に並んだランプが空を彩っていて、凄く綺麗だなって思った。
「わぁ。パパ、すごいよ!!」
「前に来た時より、ランプの種類が増えているな。こういう動くのは前はなかった。良い魔法使いでも輩出されたのか?」
「もう、パパ。そんなことより目の前のランプに夢中になろうよ!! 綺麗だよ!!」
パパは綺麗さに感動というよりも、以前との違いの事を口にしていた。そんなパパにわたしがもっと夢中になろうよ!! とパパに言えば、パパは笑った。
その日はすっかり夜のレンドンの街に夢中になってしまったので、催しに関しては明日続きを探すことにした。
「んー……」
夢中になって色とりどりのランプを見ていたのだけど、流石に眠たくなってきてしまった。もっと起きていたい。もっとこの綺麗な街を見て回りたい。そう思うのに、わたしの瞼は下がっていく。
「ベルレナ、眠いなら宿に戻るぞ」
「んー、まだみたい……」
「今すぐにでも寝そうだから帰るぞ。明日も見れるからな」
「……うん。分かった」
そうしてわたしはパパに手を引かれて宿へと向かう。眠たくてぼーっとしていたら人にぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさい」
「私こそ、ぶつかってごめん!!」
ぶつかったのはわたしと同じ年ごろの女の子だった。
綺麗な桃色の髪と瞳の少女。なんて可愛い色だろうと、わたしは目を輝かせてしまう。
わたしは綺麗なものも可愛いものも大好き。なんだか見惚れてしまっていたら、その可愛い色の女の子は、両親に連れられてその場からいなくなっていた。
「あ、可愛い女の子だったのに……」
「ベルレナ。初対面の少女に何で執着してるんだよ」
「だって可愛かった。パパも見た? あのかわいらしい桃色!! あまり見た事ない綺麗な色だったわ!! あ、もちろん、パパも負けないぐらい綺麗だから見ていて幸せだけど!!」
「なんだか一気に元気になったな」
「うん。眠かったの。吹き飛んじゃった!!」
「そうか。でももう遅いから宿に向かうからな?」
「うん!!」
「……宿で眠れなさそうなら明日もあるから魔法で眠らせるからな?」
「分かった!!」
でも不思議、さっきまで眠たかったのにこんなに気持ちが高まるなんて。一瞬だけだったけれど、素敵な色だったなぁ。
それに催しも楽しいし、夜の街のランプは素敵だった。まだまだ見れていないものがあるから明日も楽しみ!! と思うと、宿についてもわたしは眠れなくて、結局パパに魔法で眠らせてもらうのだった。




