パパの問いかけとわたしのいきたい場所 ①
「ベルレナ、どこか行きたいところはあるか?」
「どうしたの、パパ、急に」
ニコラドさんが去ってしばらくしたある日、パパが急にそんなことを問いかけてきて、わたしは驚いた。
「ニコラドが言っていた。ベルレナぐらいの子供を屋敷にだけとどまらせておくのは可愛そうだと。もっといきたいところがあるはずだと。ベルレナは前よりも何をしたいと口にするようにはなったが、それでも我儘が少ないと言っていた」
またニコラドさんから話を聞いたらしい。
ニコラドさんは子供がいて、お父さんだからこそ、そんな風にパパにいっていたのかもしれない。
それにしても本当にパパはわたしのことを甘やかそうとする。そういう甘やかしをされるとわたしは昔みたいに我儘になってしまうのではないかと思うけれど、それでもパパに甘やかされるとわたしは嬉しい。
「パパ、わたしね、パパと一緒にいれるだけでも幸せで、満足しているから。パパと一緒ならどこでも楽しく思えちゃうだろうし」
そう言ったらパパに頭を撫でられる。
パパはわたしの頭を撫でるのが好きだなと思う。少しだけ口元を緩めているパパは何だか美しくて、なんだか見ているだけでも嬉しくなる。
「俺はベルレナがそう言ってくれることは嬉しい。だけど、ベルレナを色んな所に連れて行きたいとも思っているんだ。だから色んな場所の本でも一緒に見るか? 幸い、この屋敷には色んな場所についての本があるからな」
「見たい!!」
というわけでパパと一緒に書庫でそういう本を見ることにした。何だかパパと一緒に書庫で本を読めると思うだけでもそれだけでも楽しそうでワクワクしてしまう。
書庫の中に二人で入る。パパと一緒に本を選ぶ。パパが上の方にある本を取ってくれる。
「……俺は魔法の本ばかり買っていたからあまりそういう本はないけどな」
「魔法の本が沢山で嬉しいから全然!! ねぇ、パパ、そういう本も今度、買いたいね」
「そうだな。ちょっと今日、見て回ってベルレナの興味があるところがなかったら街に行くか」
「それもいいね!! わたし、パパとならどこでも行きたいもん!!」
なんだかパパがわたしのことを考えて、わたしが行きたい場所に行こうとしてくれていることが嬉しくて、パパと一緒にこうして書庫で本を読めることも嬉しくて……思わず興奮してしまう。
こんなに興奮していてパパはわたしに呆れたりしないだろうか。そう思いながらパパを見れば、パパは「どうした?」といいながらわたしのことを撫でてくれた。
「ねぇ、パパ、これは??」
「これは魔法の歴史についてその国それぞれのことが書かれているものだな。確かにこれだと、色んな国について分かるだろうな」
パパがそう言って、わたしに笑いかけてくれる。やっぱりパパの笑顔は素敵で見ていて嬉しい。
パパが椅子に腰かける。そして腰かけたかと思ったら、手をかざしてわたしを浮かせる。
「パパ?」
不思議な気持ちでパパを見れば、次の瞬間、パパの膝の上にわたしは乗せられていた。
「わっ、パパ、重くない?」
「重くない。こっちの方が見やすいだろう」
パパはそう言いながら、わたしに本を見せてくれる。
なんだか一人で本を読むのも楽しいけれど、こうして背中にパパの体温を感じて、何だか楽しい。パパと一緒に本を読むのは何だか今までと違う感覚。やっぱり、誰かと一緒に何かをすることは楽しいことなのだと実感する。
身体を奪われてわたしは誰かと何かをすることが出来なかったから、こうして誰かと触れて、誰かと一緒に何かをすることも楽しい。
「パパ、どういう場所がパパは好き?」
「俺か? 俺はまぁ、人がいない場所は結構好きだが。そうだなぁ……、シェアンドイ山の雪景色とかかな。あれは結構いいぞ。今の時期は見れないが、ああいう場所は精霊や希少な動物もいるからな。時期になったら行くか?」
「うん、もちろん!!」
パパの言う風景がどんなものなのか、わたしには分からない。パパと一緒に、パパが素敵だと思う景色を見ることが出来ればきっと素敵だろうなと思った。
24日の12時にももう一話予約投稿します。




