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パパの友達 ①

「出来た!!」



 パパに魔法を習うようになってからしばらくが経ち、わたしは《ファイヤーボール》の魔法を自在に操れるようになっていた。とはいえ、その動かせる火の球も一つだけで、パパと比べると全然なのだけど。

 それでもこうして出来ることが増えることが嬉しくて、わたしはパパにすぐに報告した。

 本を読みながらわたしが魔法を使う様子を見ていたパパは、わたしの頭を撫でてくれた。なんだかパパに頭を撫でられると、とても暖かい気持ちになる。




「じゃあ、次は違う魔法も練習してみるか」

「うん!!」




 もちろん、一つ《ファイヤーボール》を自在に動かせるようになったからとその練習を怠る気はないけれど、一区切りのところまで出来るようになったから他の魔法についても学ぶ。

 ただ火属性の魔法よりも他の適性の魔法は中々すぐに使えるようにはならなかった。これもわたしが火属性の魔法が一番得意な証だってパパが言っていた。




「それにしてもやっぱりベルレナは優秀だな」

「だってパパの娘だもん。もっと使えるようにならないと!!」




 パパに優秀だって言われるのが嬉しい。魔法が大得意なパパの娘として、もっと魔法を使えるようになりたい。見た目はわたしとパパは親子にしか見えないけれど、実際は親子暦も短いから。



 わたしはもっとパパの娘として相応しくなりたい。



 しばらく魔法の練習をした後は、わたしはパパと散歩に向かった。パパに忠告されている通り、屋敷から出る時はいつもパパと一緒だ。この山には不思議な植物や魔物が沢山いて、パパに教われば教わるほど、やっぱりこの場所は危険なんだなと実感した。




 こんな危険な場所でわたしが安全に暮らせるのは全てパパのおかげなのだと思うと、やっぱりパパは凄いなと思った。




「ねぇ、パパ。わたし、魔法をもっと使えるようになったら一人で散歩も行ける?」

「そうだな。俺が大丈夫だと思えるぐらいにベルレナが魔法を使えるようになったらな」

「そっか。じゃあ、わたし、それを目標にする!!」




 わたしはパパと一緒にお散歩するのは楽しい。パパが隣にいてくれるというだけで、何でも楽しく感じてしまう。だけど、わたしが外に行く度にパパの時間を奪ってしまうのは申し訳ない。



 それにこの広い山を色々と一人で見て見たい気もする。そしてパパの知らない一面を探して、それをパパに見せたり出来るようになったらきっと素敵ではないか。


 そんなことを考えてワクワクしてしまった。




「パパはわたしが魔法を使えるようになったら嬉しい?」

「そうだな。安心できるしな」

「ふふ、じゃあもっと頑張る!!」



 魔法を上達させることは自分のためでもあり、パパのためでもある。




 昔のわたしだったら、自分のことしか考えていなかっただろう。公爵家の娘が魔法を上手に使えないことは恥だからとそんな風に周りも言っていたし、わたしは公爵家の娘として、火属性が得意な家系に生まれた娘として――魔法を誰よりも上手くなろうとそれしか考えていなかった。



 そんなわたしが今は、パパのために――って誰かのために何かをしようとしている。そう考えると自分の変化が不思議だった。



 ふとした瞬間に、すぐにあの時の出来事を考えてしまう。そしてわたしの身体を奪って、わたしとして生活しているあの子のことも――。考えても仕方がない。もう事が起こる前には戻れないことは知っているけれど、ふとした瞬間に考えてしまうのは、それだけあの時の出来事がわたしにとって衝撃だったからといえるのかもしれない。



「あれ?」



 パパと一緒に散歩から戻り、屋敷へ向かっていると――屋敷の傍に人影があった。それにこの前、パパの元へ手紙を届けに来ていたトバイもいる。

 赤髪のその人は、パパとわたしに気づく。



「よう、ディオノレ」



 そしてそう言って声をかけるのだ。


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