幕間 悪役令嬢の取り巻きの兄 ⑧
見た目の変わらない存在。年を取らずに生きているものがいるのか否か。俺、アルバーノはその情報についてひたすら調べていた。ベルラ様への手がかりになるだろうと、そう思っているから。
少しずつだけれども、ベルラ様の手がかりが手に入りつつあるとそう実感すると近づけているような感覚になる。
いつか、どんなに時間がかかってもいいからベルラ様に近づけるようになれればいい。
俺が思っているのはそれだけなのだ。
「今度は何を熱心に調べているんだ? 相変わらず、探しているのか?」
ヨネダウス先生からそう問いかけられる。
ヨネダウス先生は俺がベルラ様を探しているのを相変わらず応援してくれている。喋ったことなどもなく、見かけただけの少女を探していると聞いてもヨネダウス先生はその行動を否定しなかった。
普通に考えれば眉を顰められてもおかしくないことなのに。俺はどうしてベルラ様を探しているのかをヨネダウス先生には語っていない。そしてヨネダウス先生もそれを俺に問いかけてくることはない。それが何処か心地よい。
「はい。ところで、ヨネダウス先生は……見た目が長い間変わらない人というものを知っていますか?」
先に自分で調べてはみた。だけれどもよく分からなかったので、ヨネダウス先生に聞いてみることにした。
もしかしたら、教師という立場の人間ならば知っているからもしれなかったから。
……ヨネダウス先生は怪訝そうな顔をする。聞いてはいけないことだっただろうかと、一瞬心配になる。
「……知ってはいるが、何処でそのことを?」
「前に俺が探している女の子が居ると言いましたよね。その子が……男性と一緒に居ました。学園の図書館で卒業生の記録を読んだ際に見かけた男性の絵が……一致していました。だから長い時間生きている存在が居るのではないかと思ったので調べてました」
他人の空似には見えなかった。もしかしたら子孫とかそういうことかもしれないが、何だか同一人物な予感がしていた。あんなにもそっくりなのだ。何かしらあの卒業生の情報を集めることが出来ればベルラ様に繋がるのではないか……とそう思っている。
「……そう、なのか」
「はい。……俺の探している女の子は、おそらく普通の状況ではないです。だからそういう人ならざるもののような存在が関わっている可能性も十分にあり得るので」
ネネデリアと同じような状況に陥り、戻ってこられなくなったであろうベルラ様が別の身体で生きている。それは人に言っても信じられないような事実。
当時はもっと幼かったはずのベルラ様が自分で身体を求めて探し回ったとか、手に入れたとかそんな風には思えない。第一、あのベルラ様が意図的に誰かの身体を奪うなんてことはあり得ないだろう。
そもそもそんな思考をしていたら、もっと魂はよどんだものになっていたはず……。
だから何かしらの事情などがあって、ベルラ様は新しい身体で生きているだろうから。
「なるほどな……。アルバーノの探している女の子は、特別な事情を持っているということだな? それでいてもしかしたら見た目の変わらない人間が関わっているかもしれないと?」
「そうですね。だから……もしその情報を知れたら、あの子に近づけるのではないかとそう思っています」
魔法師としても年を取らない人間のことを気にならないわけじゃない。それでも一番の目的はベルラ様に会うことなのだ。
それ以上に望んでいることなど、俺にはない。というかベルラ様に会えるのならば、何かを差し出したってかまわないぐらいには……、リスクを背負ってもいいとは思っているのだ。
「そう、か。結論から言うと私はそう言う存在について少しだけは知っている」
「なら――!」
「ただ、私程度のものが勝手に情報を話すわけにはいかない」
ヨネダウス先生は、真剣な表情でそう言った。
この学園の教師は、それなりに身分が高いというか発言力がある。それは広い範囲で活躍している魔法師組合への影響力もそれなりにあるはず。それほどの人物が「私程度」というのならば、それだけ危険な存在ということだろうか。
だけれども見かけた時や所有する絵の中では、ベルラ様はあの男性を信頼している様子に見えた。そもそもあんなに綺麗な魂のままでいられるのは、幸せだからだと思う。
あの男性だってベルラ様のような方が傍に居るのならば、大切に思うはずだ。……過去のベルラ様は少し自我が強かったり、意思が強すぎる部分を嫌がる者も当然いたけれど……俺やネネデリアのようにその真っすぐさに惹かれる人は当然居たから。
そもそもベルラ様に慕われておきながらそれを無下にできる存在なんて想像がつかないので、あの男性はベルラ様を可愛がっているに違いない。
なら、ベルラ様を同じく大切に思っている俺とネネデリアに本気で怒ったりはしないのでは? と思うのは楽観的だろうか。
「そうですか。……分かりました。なら自力で調べます」
ただヨネダウス様が喋れないというのならばそれは仕方がないことではある。ならばそれはそれだ。
「……私の方でも確認はしておこう。それ次第では話せるかもしれない」
そう言われて、俺は頷くのだった。




