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春の日、学園に向かうための準備を色々進めている ⑩


「ベルレナ、起きろ」



 声が聞こえてぱちりっと目を開く。一瞬ここが何処だか分からなかった。だけどすぐに頭がすっきりして、そういえばライジャ王国の王都に来ていたのだと思い出した。

 ニコラドさんの所有する家に来ていたんだった。



「うぅん……もう夕食の時間?」


 目をこすりながらそう言ったら優しい笑みを浮かべているパパの姿が映る。



「ああ。もう準備出来ている」

「じゃあ、起きる!」




 そう言いながらもなかなか立ち上がれない。少しだけ眠っていたけれど、なんだかまだまだ眠い。ぼーっとしていたらパパがわたしのことを抱っこしてくれた。



 ……わたし、もう十二歳なのに。

 でもパパにだっこされるの大好きだからいいけれど。重くないのかな? とは気になる。




「ベルレナ、来たか。ディオノレに抱っこされているんだな」

「まだ眠そうだったからな。多分、半分寝てるぞ」



 ニコラドさんとパパの声が聞こえてくる。やっぱりわたしは眠気からぼーっとしてしまっていた。




「起きてるぅ……」

「あはははっ、まだ声が寝てんじゃねぇか。ベルレナは可愛いなぁ。夕食食べるの後でにするか?」



 ニコラドさんは軽快な笑い声をあげている。



「ううん、起きて食べる。せっかく作ってくれているんだもん」


 そう、暖かいうちにご飯は食べたい。それに眠たいからといって、作ってもらったものを食べられないというのもなんだか嫌だ。

 そう思って席について食事をはじめる。

 一口目に口に含んだスープが美味しくて、目が覚める。




「おいしいっ!!」



 わたしがそう口にすると、屋敷内に仕えている使用人達がにこにこと笑っていた。これだけ微笑まし気な視線を向けられると、少しだけ恥ずかしさも感じてしまった。でも美味しくて幸せだからいいけれど。




「ニコラドさんって、此処にはよくくるの?」

「たまになぁ。今回来たのは数年……いや、十年ぶりか?」

「ええ?? ニコラドさん、駄目だよ。もっと自分を慕ってくれる人を大切にしなきゃって……ごめんね? 私が口にすることじゃなかったかも!」





 思わずニコラドさんにもっと来た方がいいなんて口にしたけれども、忙しいし、互いがよければそれでいいだろうからそれ以上にわたしがなにか口にするのって違う気がした。だから慌てて謝ったのだけれども、ニコラドさんは気にした様子はなく笑っていた。




「気にしてなくていい! でもあれなんだよなぁ。俺、色んなところに拠点置いているし、魔導師だからこそ気づいたら十年経っていたりとかよくあるんだ」



 ニコラドさんが気にしていないのにはほっとする。



 考えてみるとわたしとパパやママの関係性も、周りからしたらびっくりされるようなものだしね。わたしはホムンクルスの身体で、パパはわたしを有効活用するっていって娘にした。パパはわたしのことを今は凄く大切にしてくれているけれど、最初はそうだった。

 だからわたしたち家族の関係性も周りからしてみたらおかしな関係だって言われてしまう可能性もあるんだよね。わたしからしたらパパは自慢で、大好きな父親。でもそれを認めないなんて言う人がいたら困るもん。




 それにしても使用人の人達は話を聞きながらこくこくと大きく頷いている。寧ろ十年に一度とかでも、忘れずに此処に来てくれることが嬉しいとかなのかも? パパが此処に来たのってそれよりもっと前なのかなぁ。




 魔導師になったら、それだけ普通の人よりも時間の感覚が全く違うんだろうな。わたしとは見ているものが全く異なるんだろう。

 わたしもっと、視野を広くしたいっていうか深く物事を考えられるようにはなりたいなぁ。



 そんなことを考えながら食事をした。

 夕食を食べた後は、目がすっきりしていた。これはすぐには寝れないな。だってご飯前に眠っていたし。




「ねーねー。パパ、ママ。わたし、すぐには眠れなさそうなの!!」



 部屋に戻ってからそう言えば、パパとママが仕方がないなぁとでもいうような優しい笑みを浮かべていた。



 変な寝方をしたわたしのことをもっと叱ってもいいのにね? 少しだけ悪いことをしてしまっても、パパとママってわたしの味方をしてくれるんだろうな。間違いを犯したとしても、パパたちにとっては人の枠組みは関係ないから。

 わたしはパパとママが何があってもわたしの味方で居てくれるとそう知っているから、わたしはなんでも出来るんだと改めてそう思う。うん、学園に入学しても、わたしがもっと大人になっても――わたしがパパとママの子供として生きている事には変わりがない。



「いつまでも付き合うぞ」

「ええ。少しぐらい寝不足しても問題ないもの」



 にっこりと微笑んで、二人は笑う。まだまだ眠れないわたしはパパとママと夜遅くまで夜更かしをしたの!



 そうやって王都で過ごす一日は過ぎて行った。


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