春の日、学園に向かうための準備を色々進めている ⑤
ニコラドさんが連れて行ってくれたのは、王都でも中心部にある二階建てのレストランだった。
このレストランは、少しだけ格式の高い場所……それなりにお金持ちじゃないと来れないタイプのお店みたい。あとは人気で、結構並んでた。
ただしニコラドさんは優遇されるカード的なものを持っているらしく、そのカードでさっさと中に入れた。
なんというか、人々と関わり続けているニコラドさんだからこそこうなんだろうな。パパとママはわたしを子供にするまでの間は人と全然関わってこなかったからそういう常識ってあまり持ってないし。
「何だか、凄く高級そうなお店。こんなところで食事を摂るの初めてかも!!」
公爵令嬢として生きていたベルラ・クイシュインだった頃は、高価なものには囲まれていた。ただ今よりもずっと幼い子供だったから高級なお店ってきたことなかった。
だからなんだか少しだけ緊張した。
私は普段着だし、大丈夫かなと少し思った。でもお店の人はニコラドさんの連れだからって何も気にしてなかったみたい。
それにしてもこれだけ特別扱いされているのは、何かしらの理由があるのかな。ニコラドさんって何だかんだ色んな人のことを助けていそうだもんね。
「パパとママはこういうお店、きたことある?」
「何度か」
「私もそうね」
二人は人生経験が長いので、こういった高級そうなお店にも行ったことがあるみたい。パパとママって、どんな場所でも似合うよね。
高貴な人達が居そうな場所でも全く引けを取らないし、人が全然居ない場所でもこう……輝いているというか。
パパとママって、何処でも凄く自分らしく生きていける感があるとは思っている。
わたしもそんな感じで、誰が相手でもどんな場所でもわたしらしく居られたら一番嬉しいなぁ。
「ベルレナ、何食べたい?」
「んー、どうしようかなぁ。結構高いね」
「何も気にしなくていい。お金はいくらでもある」
パパがさらっとそんなことを言った。
パパとママって基本的に人里離れて暮らしていて、自分の欲しいものは自分の手で手に入れる人だからそもそもお金ってあんまり使わないんだろうな。
「おいおい、俺が連れてきたんだから、俺が全部おごるぞ? だからディオノレ達もお金払わなくていいぞ」
パパと話していたらニコラドさんがそんなことを言い始めた。
どうやらニコラドさんが全て払ってくれるらしい。ニコラドさんもお金沢山もってそうだもんなぁ。
長い間生きているし、ニコラドさんはパパとママと違って人の街で沢山過ごしているからその分貯めているお金も多いのかもしれない。
「別に奢ってもらわなくてもいいが」
「そう言うなって。お前達とレストランで食事なんてなかなか出来ないからな! 折角だから俺が奢りたい」
そう言ってニコラドさんはにこっと微笑む。
確かにこんな風に四人でレストランで食事って珍しいかも。家族で出かける時は、ニコラドさんと一緒ってわけでもないし、大体ニコラドさんの方から私達の家に来るしなぁ。四人でおでかけって珍しいかも?
それにニコラドさんは何だかんだ気遣いをするタイプなので、家族の中に混ざるのを遠慮したりなどもしてそうだもんなぁ。別に私は家族旅行にニコラドさんが居ても全然嬉しいけれど!
結局ニコラドさんが奢ってくれるということになった。
そういうわけでメニューを見ながら確認する。うん、結構高い。多分高級な食材とか沢山使われているんだろうな。
でも食糧庫で見たことがあるお肉などが使われていたりするみたい。あんなに家にはあるのに、こんな高価なんだってびっくり。
わたしは当たり前みたいに軽く食べていたけれど、一般的にみればなかなか食べられないものなんだろうなと思った。
折角ならば、普段食べていないものの方がいいかなぁ。でもいつも食べているお肉とかでも、こういうお店だと調理法など違うだろうから新鮮な感覚で食べられるかな?
「うーん」
わたしはひたすら何を食べようか悩んでいた。
パパとママ、それにニコラドさんはすぐに決めていた。皆、決断力が速い。
わたしはなかなか決められなかったりする。パパたちと一緒に居る時ならば、幾ら悩んでも問題ないもんね。
ただ他の人と一緒に出掛ける時は、早めに決めた方が良さそうだよね。そうじゃないとなかなか決めないってイライラされたりするかもだもの。
そんなことを考えながら時間をかけて何を注文するか決めるのだった。
「はやく来ないかなぁ」
料理がくるのが楽しみで、わたしはにこにこしてしまう。
だって楽しみだもん! どんなに美味しいんだろうか? ってそんな気持ちでいっぱいなの。
「楽しそうに待っているベルレナは可愛いなぁ」
「えへへ、そう? でもこういうお店に来るの初めてだから余計に楽しみなの。それにね、パパとママとニコラドさんと一緒に居るから余計に楽しいの!!」
わたしがそう言ったらニコラドさんが、私の頭を撫でようとする。でもパパに手をはねのけられていた。




