春の日、学園に向かうための準備を色々進めている ③
「ベルレナ様は六年間、学園に通う予定なのですよね。もし何か不便がありましたら何度でも私にご連絡ください」
「うん。ありがとう!」
店主の言葉にわたしは笑顔で頷く。
制服の調整を頼んだ後は、他の洋服も見せてもらうことにした。わたしがおしゃれをするのが好きだって言ったら、喜んでくれていた。
「ベルレナ様ぐらい可愛かったらなんでも似合いそうですよね。ぜひぜひ、うちの服を着ていただきたいですわ。ベルレナ様が着てくだされば、我が店の良い宣伝になりますわ」
「わたしは可愛いから、なんでも似合うよ! あ、でも基本的に家とか周辺にこもってばかりだから、宣伝にはならないかも? 時々お出かけはするけれど……」
わたしの住んでいるのは誰も来ない屋敷だもん。だから宣伝にはならないかもしれない。
わたしが転移魔法を使えるのならば別だけど、わたしは一人ではどこにもいけないもん!!
「そうなのですね。宣伝にならなくても大丈夫です。もしくは学園に入学後、休日にでも着ていただければ……!!」
「それなら宣伝出来るかも。学生の人達ってやっぱりお友達と一緒におでかけしたりとかするのかなぁ?」
「そうですね。すると思いますよ」
とはいってもわたしは帰れるタイミングには、屋敷にちょくちょく戻るつもりだからそんな風にお友達とお出かけするのがどのくらいの頻度か分からない。でもそうだよね、今みたいにパパとママに連れられて、違う場所に行くではなくて……入学したら学園都市で暮らすことになるんだ。
パパとママが居ない場所で。
そう考えると寂しい気持ちにはなる。だってね、今は朝から晩までパパとママと一緒なんだ。何かあればパパとママが話を聞いてくれて、その姿が見えないことなんて全然ない。
でも学園に入学したらそうではなくなる。
休日は、パパとママの元へ帰るか、お友達と遊ぶか、それとも学生らしく勉強するかとか、そういうことを自分の意思で選択していかなきゃならなくなるんだ。
あんまり帰らないとパパとママが寂しがるだろう。特にパパが。
わたしも寂しく思うからちょくちょく帰るとは思う。
「わたし、お友達とお出かけってそこまでしたことないの」
旅行に出かけた際とか、パパとママに連れて行ってもらって前に仲良くなった子達と遊んだりすることはある。
だけれども、パパとママの関与がない場所でおでかけって全くと言っていいほどない。わたしはそう言う環境で生きてきたから。
そう考えると、なんだか楽しみでもあり、不安でもある。もちろん、新しいことに挑戦するって意味合いで楽しみな気持ちの方が多いけれど。
「ディオノレもジャクロナも過保護だからなぁ。ベルレナ一人でどこかに行かせたりしねぇもんな。でも学園に入学したら、そろそろベルレナも独り立ちってところか」
「……ベルレナにはまだ早い。いつまでも独り立ちしなくていい」
「はははっ、ディオノレ、子供離れ出来ない父親はそのうち嫌がられるぜ? 確かに魔導師である俺達からしてみれば学園に入学する頃なんてまだ子供かもしれないけれどさ、お前だって早いうちから親との縁なんてなくなっていただろう? そういうもんだって」
ニコラドさんはそう言いながら楽しそうに笑っている。
うん、まぁ、確かにいつまでも子離れ出来ないままだと周りからしてみると思う所はあるかもしれないし、人によっては親から離れたいとかあるのかも。
ただわたしはパパのことが大好きだから、パパがショックを受けるぐらいならいつまでも子離れしなくていいと思う。わたしもパパがわたしのことをどうでもいいという態度とかしたら悲しいもん。
「ニコラドさん、パパのこと虐めちゃ駄目だよ!! わたしはパパとママのことが大好きだから、周りが何と言おうとパパたちが嫌がってもわたしの方こそ親離れ全然出来ないと思うの」
というか親離れって本人たちが良いと思っているなら別にいいんじゃないかなって思う。
もちろん、片方が居なくなったら生活できなくなるとか、互いに悪い影響を与え合っているとか……そういうのはどうかと思うよ。
でもそうじゃないのならば、特に誰かがどうのこうの言うことじゃないしね。
だからわたしはいつまで経ってもパパとママのことが大好きだし、仲良しだと思うの。親子仲が悪くなるところなんて想像出来ない。
あ、でも……人によってはそういうのが嫌だって思う人もいるのかな?
特にパパもママも魔導師だから年を取ったりしないし、大人になったわたしがパパにべったりしていたら思う所がある人もいたりする?
恋人を作るなら……そういうわたしがパパとママを大好きだって気持ちを受け入れてくれる人じゃないと駄目だね。
わたしが魔導師の娘で、ホムンクルスの身体を持っていて普通じゃなくて、神の悪戯によって身体が変わって、それでいてパパとママとべったりなことを受け入れてくれる人……。
うーん。もしかしたらそんな人は居ないかも。でもその時はその時考えよう。




