春の日、学園に向かうための準備を色々進めている ①
「ベルレナ、今日は制服を作りに行くぞ」
ニコラドさんが目の前でそう言って微笑む。
ニコラドさんは楽しそうだ。ちなみにこれからわたしたちは制服を準備に行くの。まだ受験前だから、正直言って受かるかどうかって分からないのにね。
ただニコラドさん曰く、わたしが落ちることはよっぽどのことがないとないだろうなと言っていた。
「今日は王都に行くんだよね?」
「そうだぞ。ベルレナは行ったことあるんだっけ」
「んー。ライジャ王国のはないかも? もしかしたらわたしがベルレナになる前に、記憶がないぐらい小さな頃なら別だけど」
わたしがベルラ・クイシュインとしての身体を失ったのは六歳の頃。八歳の時にパパがわたしを見つけてくれて、それからはベルレナになった。
だから正直ライジャ王国の王都は全然記憶にない。
「でもニコラドさん、学園は学園都市にあるから王都にないよね? 王都で準備するの?」
「ああ。王都で制服を準備する生徒は多いぞ。それに王都にベルレナを連れて行ったら楽しそうだと思ったからな」
そう言ってニコラドさんはにこにこと笑った。
「ディオノレ達はどうする?」
「もちろん、行く」
「行くに決まっているじゃない」
制服の準備をするのはわたしだけなのだけど、パパとママもついてきてくれるみたい。即答していることに笑ってしまった。
「ふふっ、パパとママはわたしのことが大好きだね! わたしも、大好き!!」
わたしがそう言ってパパに抱き着けば、パパは優しい笑顔で抱きしめてくれた。
「ははっ、本当に相変わらずだな。ディオノレがこんな父親の顔をしているのを見たら昔の知り合いは目をむくだろうな。まぁ、こんなに可愛い娘が居たらそうだよなぁ」
ニコラドさんはわたしとパパが仲良しなのが嬉しいのか、ずっとにこにこしている。
ニコラドさんっていつも楽しそうだよね。
「ベルレナは可愛いから仕方ない」
「そうだよなぁ。ベルレナは可愛いから俺も弟子に見ておくように言っているからな。もし学園でベルレナに何かがあったら大変なことになるってな」
ニコラドさんはそう言って笑っている。うん、まぁ、わたしは出来るだけ自分の力で片づけるつもりではあるけれど、わたしだけでは解決できないことでもあったらパパとママがどれだけ取り乱すか分からない。
だからわたしはパパとママがそういうことにならないように頑張るつもりだけど。
それにしても制服かぁ。わたしが制服を着たら、きっと似合うんだろうなと自画自賛する。だって、わたし、パパに似て可愛いもん。
パパも学生時代、凄く似合っていたんだろうな。それを想像するだけで楽しい。
パパやニコラドさんにも学生時代があったんだもんなぁ。
「制服の後は他のものも買うの?」
「ああ。色々必要なものをな。直前で買っても問題ないのもあるが、先に準備出来たものはした方がいい。とはいっても杖はもう準備しているからそこまでないけどな」
ニコラドさんはわたしの言葉にそう言って答えた。
なんだかニコラドさんって、あんまり考えてないように見えて結構色々考えてくれているんだよな。
やっぱりそういうところはニコラドさんは先生にぴったりなのかも。弟子も沢山いるのが納得だよね。
「今すぐ行く?」
「ああ。泊まる場所ももう準備してある」
ニコラドさんはそんなことを言った。
「……泊まる場所って、お前の家か?」
「そうだぞ? ディオノレは覚えているか? 前に連れて行ったが」
「覚えてはいる」
どうやらニコラドさんの家の一つに連れて行ってもらえるみたい。ニコラドさんって魔導師だけど色んな人と関わって生きてきているから家も多いみたいなんだよね。どこにでもそういう拠点あるんだろうね。
ニコラドさんは王都の家にわたしを連れて行ってくれることも目的にしているのかもしれない。
学園都市と王都ってちょっと近いみたいだから。何か問題があった時に此処に来るようにって感じなのかも。
やっぱりニコラドさんってそういうところ、しっかりしているよなと思った。
「私は行ったことないわ」
「当たり前だろう。ジャクロナは家に連れて行く仲じゃなかったし」
……なんか相変わらずニコラドさんとママはそこまで仲良くないんだよなぁ。ただ仲良しってわけじゃないけれど、そんなに嫌いあっているとかでもないし、不思議な関係。
これからちょっとずつ仲良くなってくれたらその方が嬉しいな。長い時間をかければ仲良くなってくれるかな。
私はそんなことを思った。
なんにせよ、王都で制服見るの楽しみだなぁ! 男の人はどんな制服なんだろう? ちょっと改造とかしてもありなのかな? どこまでオシャレが自由なのかはちょっと確認してみたいかも。
簪に模した杖ももちろん、持っていくけれどもっと色んなおしゃれが出来たら楽しいよね。
やっぱり都会だとおしゃれな人とか多かったりするのかな。気が合う人に会えたら嬉しい。




