お誕生日は、楽しく過ごす ⑦
「わたしね、パパとママのことや、わたしのこと、それを誰かに言う前にはちゃんとパパとママに相談するね? それにニコラドさんにも」
わたしは、多分誰かを好きになったら――その人に夢中になりそうな気はする。あとわたしは自分でも自覚しているけれど結構ちょろい方だとも思う。わたしを拾ってくれたパパのことをすぐに大好きになっちゃったし。
基本的に嫌いな人ってあんまり居ないけれど、パパとママとか、ニコラドさんとか……わたしにとって特別な人達って思えば数が少ないかも。
わたしが全てを話してもいいと思えて、一緒に居たいなとそう思える人――。そんな人に学園で出会えるかな。もし出会えたら、わたしはその人のことをうんと大切にするだろう。
わたしはパパやママ、それにニコラドさんのように長生きをしているわけじゃない。それでもわたしはそういう大切な人に出会う可能性がそこまで高くないことを知っている。
「ああ。そうしろ」
「そうする方がいいわ。私たちはベルレナの見る目を信頼しているけれども――それでもあなたがもし誰かに騙されたりしてしまったらと考えるだけで心配になるから」
パパとママはわたしの言葉に頷く。
わたしって、本当に愛されているなぁって、ちょっとにこにこしてしまう。
「うん。そうするね!! よしっ、難しい話は此処で終わり! もっとぶらぶらしよ?」
話し込んでしまっていたけれど、もっと楽しい気持ちでいっぱいになりたいと思った。
先のことは、その時にならないと分からない。
だから、一旦気持ちを切り替える。もし好きな人が出来たら、相談しよう。そしてどうしたらその人と一緒に居られるかを考えようと思う。
わたしはそんなことを考えながら、パパとママの手をひく。
秘密基地近くも通ったりする。今日は近くによるだけで、中に入ることはしないよ。
いつかこの秘密基地にも、パパとママ以外の人達のことを案内することがあるのかな。そう考えても楽しいね。
「見て、パパ、ママ!! あそこにいる魔物達、仲良しだね」
「ね、ほら、あそこの花綺麗!!」
わたしは山の中を歩き回りながら、パパとママに沢山話しかける。優しい表情で、頷いてくれて何だかそれも嬉しい気持ちになる。パパとママと話していると楽しいの!!
そして楽しい時間というのは、あっという間に過ぎてしまうから昼時になった。お昼の時間もご馳走だった。
なんだかすごいボーナスタイムみたい!! なんだか、誕生日って沢山お祝いしてもらえて嬉しさでいっぱいになるよね。
途中でニコラドさんもお祝いしに来てくれたよ。あとはアイスワンドの魔導師であるダニエメさんもプレゼントを送ってくれた。
去年はね、アイスワンドにはいかなかった。今年も多分行かないと思う。
だって学園への入学準備でバタバタしているだろうから。それにもっと別の場所にも行きたいもん。
一昨年の出来事ももちろん、影響しているけれどね。あ、でもダニエメさんとは会いに行きたいからどっかでは会いに行こうかな。なんてそんなことを考えたりする。
これまで出会った色んな人たち。わたしはパパと出会ってから、ベルラ・クイシュインとして生きていた頃からは考えられないほどに、多くの人達と交流を持ってきた。
そう言う人たちとは、時折会う。パパとママが転移魔法が使えるからすぐに会いにいけるんだ。わたしはまだ自力で転移魔法が使えない。
そのことがちょっとだけがっかりしてしまう。
学園卒業までに使えるようになれたら嬉しいかも。ただそれはあくまでわたしの希望でしかなくて、難しいかもね。その時はその時! でもいつかは転移魔法を使えるようにならないといけないなとは思っているの。というか、使えるようになりたい!!
わたしはそんな気持ちでいっぱいなの。
午後の時間帯にね、パパとママに転移魔法を使うコツを色々聞いたりした。ただ難しい魔法だから、下手に試そうとしないようにとは言われた。
「流石に転移魔法でベルレナの身体が保てなかったら、大変だ」
「そうね。その状態だと私達だってベルレナのことを取り戻せないかもしれないわ。そう言う現場に遭遇したことがないから分からないけれど」
パパとママは、わたしに向かってそう告げた。
うん、パパとママってね、本当にやってはいけないことはちゃんとこうして言ってくれるの。
子供の性格によっては「やるなと言われたらやりたくなる」とやってしまう人もいるらしいよ。わたしはやらないよ!! だってパパとママは冗談とか言わない性格をしているからやってしまったらそのままわたしって死んでしまう可能性だってあるんだろうな。
魔導師って、何でも出来る存在だって思ってしまう。そう言う勘違いしちゃうの。なんだって叶えられて、凄いんだって。確かに出来ることも多いけれど、そうじゃないんだよね。
そう言う風に出来ないこともあるってちゃんと口に出来るのがパパとママって感じがする。
わたしもパパとママみたいな大人になりたい。ずっとそう思っている。
――学園に入学して、卒業して、それから大人になれたら近づけるだろうか。
今日は誕生日で、わたしが一つ大人になった日だからかそんなことばかり考えてしまった。
そうして、その日一日は、とても楽しく過ぎていくのだった。




