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精霊獣に会ったその後のこと ⑧

 シミーレを契約を交わした後は、その場をどうするかという話になった。



「私を捕らえた人間が後々ここにやってくる」



 そんな風に言われて、わたしもどうするのが一番いいのだろうかとそんな気持ちになる。



 本人が望んでいないにも関わらず、そういう状況を作ってしまうのは嫌なことだ。今回は精霊がそういう状況を作っていたけれど、人にも同じような状況が起こったりすることってあるとは思う。

 例えば人を攫って、売ってしまうような悪い人も世の中には居たりもする。わたしの周りには優しい人がとても多い。それでいて、わたしによくしてくれる人ばかりだ。

 だけれども話し合っても結局どうにもならない人って、少なからずいるんだ。



 ……うん、わたしもそのくらいは知っている。

 だからきっと……精霊に対してこんなにひどいことを行うような人はそのまま悪いことをし続けるんだろう。いや、ただ後から改めて、自分のやってしまったことが悪かったと実感することはあるだろうけれど。




 ただすぐには精霊たちに謝ったりはしないだろうし、それでいてこのまま此処にいてもきっと大変だろう。戦ったりしなきゃかも。それは嫌だな。

 うん。ただこういう酷いことをしている存在に対してわたしが何かしなければならない理由はない。



「パパ、ママ。一旦、しばらく悪いことが出来ないように壊してから去るとかするのもあり?」



 誰かの物を壊したりとかは正直言って好きじゃない。

 なるべくしたくはないことだしね。だけれどもわたしはこのまま悪い事……というか、わたしがやってほしくないことをずっとし続ける環境を残しておくのも嫌だなってそんな気持ちでいっぱいなのだ。

 そんな風に考えているのは自分勝手な面も強いかも。

 ただわたしは、そうしたいって思った。




「ああ。それでいい」

「犯人をどうにかしてもいいけれど、ベルレナはそうするつもりはないのでしょ?」



 パパとママはそう言って、わたしのやりたいことを肯定してくれる。

 二人ともわたしが止めた方がいいことやれば、全力で諭してくれると思う。けれども二人はこういう行動をしても構わないと思っているのだと思う。



 パパとママって、魔導師という立場だからこそ人と考え方が違うのもあるけれど、達観している。うん、かっこいい。行動に迷いがなくて、わたしもそうやって迷いなく行動出来るようになりたいな。

 だってね、行動を躊躇していたら自分にとって大切にしているものを守れなかったり、取り返しのつかないことになったり――なんていうのを、本とかで読んだことがあるしね。




「案外、君は過激だね?」



 契約したばかりのシミーレにそんなことを言われる。



 どうなんだろう? わたしは過激な方なのかな? 案外、精霊に酷いことをした人に対してわたしは怒っているのかも。





 シミーレのことは契約することが出来たし、助けることは出来た。でもね、おそらく……他にも精霊が犠牲になったりしたのではないか。そんなことも思うから。

 精霊は、強い力を持っている。

 だから人に好き勝手されるなんてことはなかなかないはず。



 それでもこういうことが起こり得てしまったりするんだから、本当に不思議。その力をもっと他のものに使えばいいのになんて思ったりはする。

 そんなことを考えながらパパとママに聞いて、色んなものを壊した。思いっきり魔法を使うのは高揚した気持ちになった。




「よし、これぐらいでいいかなー?」




 そしてパパとママに確認して、ある程度行動を起こしたらそのままその場を去ることにする。



 あまりにも長居しすぎて、遭遇するのも困るしね。

 外に出る時も気をつける。だって周りに知られて騒ぎになったら本当に困るからね!

 地下から出て、わたしたちは元の状態へと戻す。これでしばらくの間はばれないんじゃないかな。




「そろそろ戻るか」

「あまり街に残ったままだと面倒なことになるものね」



 パパとママからそう言われて、わたしは頷く。シミーレは不思議そうな顔をしている。わたしたちがどこからきて、どこで暮らしているかなんて……シミーレは知らないもんね。

 というか、精霊って……魔導師と関わっている子もいれば、きっとそうでない子もいると思う。

 だからきっとシミーレからしてみたらこれから楽しいことがいっぱいだろうなって勝手に思っている。




 そうであってほしいし、折角契約をしたのだから幸せになって欲しいなって。

 パパとママがわたしに感じている感情ってこんな感じなのかな。わたしはユキアのことも、シミーレのこともわたしと契約して良かったって思えるぐらいには幸せでいてほしい。

 どうやったらシミーレは喜んでくれるかな? 何が好きなんだろう? どういうことを好む子なんだろう?



 家に戻ってから、シミーレと色々やってみよう。あ、でもあんまり話しかけると嫌がるタイプもいるだろうから、慎重にね。





 そんなことを考えながら、わたしはパパたちと一緒に帰宅したのだった。


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