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わたしの初めての魔法 ②

 魔法の練習はずっと続けている。



 屋敷の外――とはいっても屋敷からの距離は五メートルもない場所なのにパパは一人で外に出るのは危険だと、わたしの魔法の練習に付き合って一緒に外に出てくれている。



 この屋敷の周辺は魔物除けの魔法がかけられているらしいのだけど、パパはわたしを心配してくれているのだ。パパに心配されるとわたしは嬉しくてたまらない気持ちになった。




「ベルレナが命ずる。火の神の加護を持って、火球を形成せよ。《ファイヤーボール》」





 何度も何度も練習して――ようやく魔力が形になって、魔法として外に出ていく感覚が理解出来るようになってきた。

 指先から煙だけが出た。火球の形にはならなかった。少しずつ進歩している……とは思うのだけど、魔法が得意なパパのことを知っているから、わたしが全然魔法が出来ない気になってしまう。






「もうすぐ形になりそうだな」

「なるかなぁ……。難しいね。魔法」

「最初はそういうものだ」





 パパはそう言いながら、椅子に腰かけて本を読んでいる。わたしが魔法の練習をするのを見ながら、太陽の下で本を読むパパ。なんだかパパは綺麗な顔立ちをしているから本を読んでいるだけでも、まるで絵画か何かのようだ。

 わたしはパパが大好きだから、パパを見ているだけでも楽しくなる。だから魔法の練習中にたまにパパを見てしまうと、じーっとよく見てしまう。魔法の練習しなきゃだけど、パパと話したいなとかそういう気持ちも強いのだ。




 だけどパパの自慢の娘になりたいから、練習を頑張らないとと首を振ってまたわたしは魔法の練習をする。






 何度も何度も繰り返すと、小さな炎の球が出来た。

 パパが作ったものよりもずっと小さいし、わたしは中々その火球を動かすことは出来ないけれど、それでもわたしにとっての初めての魔法の完成だった。




「パパ!! 見て、出来た!!」




 そう口にしながらパパの方を向いたらパパは「よくやったな」と口にして笑ってくれた。

 パパの笑顔ってなんだか綺麗。笑っているパパを見ると嬉しくなった。

 魔法が使えたとはいえ、小さな火の球なのに、それでもわたしは嬉しかった。






「パパ、わたし、凄い??」

「凄い凄い」

「パパ、そんな風に笑って凄い凄いって言われるとわたし、本当に自分が凄いんだって調子に乗っちゃうよ!!」





 自慢じゃないけれどわたしはすぐに調子になりやすい人間なのだ。ベルラだった時もわたしの言うことを聞くのも当然だって、わたしが一番可愛いんだってそんな風に思ってたし。




「いいんだぞ。そうやってもっと調子に乗って。お前は実際に凄いからな。魔法は使えない人間はいつまでたっても使えないものだ。ベルレナは練習をしてもう使えるようになってるんだから」




 パパはそう言って、わたしに笑いかける。



 ああ、もうパパがそんな風に笑いかけてくれるとやっぱりわたしは、自分が凄いんだってそう思ってしまいそうだ。ちょっとぐらいなら調子に乗ってもいいかもしれないけれど、あまりにもそうならないようにしないと!!




 パパに嫌われたくないもん。

 それにこれから――わたしはベルレナとして誰かと出会っていくだろう。パパとこのままこの屋敷で二人っきりでも問題はないけれど、きっと誰かと出会っていくんだろうなとは思う。その時に嫌われるよりも好かれた方が嬉しいと思うから。






「パパにそう言ってもらえると嬉しい!! パパ、わたしもっと魔法を上手に使えるようになるから!!」

「おう。ベルレナが魔法が上手になるのを楽しみにしてる」

「ふふ、パパをぎゃふんって言わせるぐらい上手になるから。ちゃんと見ててね!!」




 パパに向かって、わたしは得意げに笑う。



 なんだか我儘だったころのわたしと同じ感じになっていないか心配だけど、パパが笑っているから大丈夫かなと思う。





 それにしても本当にいつか、パパがすごいって目を輝かせるぐらいに魔法が得意になりたいな。パパが驚くぐらいの腕になれたら、パパはわたしを自慢の娘だって笑ってくれるだろうか。

 パパがわたしの隣で笑ってくれて、わたしの魔法が上達するのをずっと見てくれるのならばわたしは頑張れると思う。




「ベルレナが命ずる。火の神の加護を持って、火球を形成せよ。《ファイヤーボール》」





 何度も何度も、それから一つの魔法だけを練習した。他の魔法に関しても興味はあるけれど、一つの魔法も上手に出来ないのに他の魔法を上手く使えるはずもない。

 パパに褒めてもらうために、わたしはコツコツ頑張るぞー!! と《ファイヤーボール》の練習を続けるのだった。



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