精霊獣に会いに行こう ④
精霊獣は他にどんな子がいるんだろう。全員がこの子みたいなタイプなのか、どうなのか。凄く気になるね。
「ねぇ、あなたの姿を描いてもいい?」
わたしがそう問いかけるとうとうとしていた精霊獣は頷いてくれる。
「パパ、ママ、わたし、ちょっと絵を描くね」
眠たそうにしている精霊獣の眠りを妨げたくなくて、パパとママに小声で告げる。
そうすればパパとママは頷いてくれる。二人とも精霊獣が眠ろうとしているのを邪魔しないようにしてくれているみたい。
わたしが収納庫から絵を描く道具を取り出して、精霊獣の姿を描くのをパパとママも、ユキアも見守ってくれている。わたしが絵を書いている間、別のことをしていてもいいよと言ったのだけどわたしの傍に居てくれるみたい。
とはいってもパパとママはそれぞれ自由にしていたけれどね。
本を取り出して読んだり、紙に何かを書いていたり――。幾らでも二人はこういう時に時間を潰せるのだ。ユキアは少し離れたところでいつの間にか眠っていた。静かにしなければと大人しくしていたらいつの間にか眠くなったのかな?
本当に精霊獣の住んでいる場所にお邪魔している状況なのに、わたしも含めて皆自由だなと思った。
わたしがこういう所でも気を張らずに絵を描けるのは、パパとママが居てくれるからだ。うん、二人に育ててもらっているからこそわたしはこうなんだろうなと自分でそう思う。
そんなことを考えながら、わたしは絵を描き進める。
何回か失敗して描き直した。
なんだろう、目の前の精霊獣がとても可愛くて。
だからその姿をきちんと描きたいってそう思うのに、なかなかうまく出来なかったりするの。
わたしはこれまで、絵をそこまで描いてきたわけではない。描きたいときになんとなく描いてきたりはしたけれど、絵を描くことを仕事にしている人と比べると全然だと言えるだろう。
そのことが少し残念に思えた。もっと絵を描く練習をしていたら、こんな風に何度も描き直すことがなかったのに! ってそんな気持ち。
でも今、それを嘆いても仕方ないので一生懸命、目の前の精霊獣のことを描く。
あまりにも時間をかけすぎると、眠っている精霊獣も目を覚まして、別のことをし始めるかもしれないもん。こうやって大人しくしてくれている間に描かないとね。
わたしはそんなことを考えながら、集中して絵を描いた。
結局、満足のいく出来になるまでにはかなりの時間がかかった。だけど有難いことにその間、ずっと精霊獣はじっとしてくれていたので描きやすかった。途中で目を覚ますこともほとんどなかったしね。
それにしても目を覚ますまでの間、どうしようか?
なんて思いながら、わたしはパパとママに近づく。
「ねぇ、パパ、ママ、絵は描き終えたんだけど、どうしよう? あの子もユキアもぐっすりしているみたい」
わたしがパパとママに小声で告げると、二人とも小さな声で返してくれる。
「起きるまで待っていればいい」
「そうね。あの精霊獣が起きてから出て行けばいいと思うわ」
そんな風に軽く答えられる。
パパとママにはそう言われたけれど、どうしようか? と一瞬考えて、この場でユキアのことも描いてしまおうと思った。
そういうわけでわたしは眠っているユキアのことも絵で描くことにした。
正直ユキアとは契約をしているから、いつでも描くことは出来るけれど……今、絵を描く気分だから描こうってなったの。
その時にパパに「今度、俺のことも描いてくれ」と言われたので、「うん、屋敷に戻ってからね」と答えた。
パパはわたしが兎の精霊獣とユキアのことを描くのを見て、描いてほしいってなったみたい。そういうところ、パパはわたしのこと、大好きだよねって実感してにこにこしてしまった。
ママもね、一緒に描いてほしいって言ってたから、上手く描けるかは分からないけれど描いてみようと思った。
そうやってわたしはその場でユキアを描いて過ごした。
ちなみに描いている途中でユキアは目覚めたけれど、わたしがユキアのことを描いているのを見て大人しくじっとしてくれていたの。
そうしてユキアを描き終えた時に、いつの間にか兎の精霊獣も目を覚ましていた。
わたしの描いたユキアの絵を見て、楽しそうに鳴き声をあげていた。そんな精霊獣に、その子の絵を見せる。
そうしたら嬉しそうにふわふわとその絵の周りを飛び回っていた。その可愛い姿に思わず笑ってしまった。
その後はその精霊獣の住処でご飯を食べた。
ご飯は《空間魔法》からパパとママが出してくれたものなの。精霊獣も食べたがっていたからあげたら、嬉しそうにしてた。
その後は精霊獣にいくつかの質問をして、ユキア経由で教えてもらって――そのままその住処を後にした。
また来てもいいか聞いたら頷いてくれたから、また来ようと思うの。




