また、冬がやってくる ①
今年の冬はアイスワンドにはいかないと家族で話し合って決まっている。
去年のことがあるから少しだけ行きにくいなというのもあるけれど、同じ場所に行ってばかりよりも色んな場所に行きたいと思うからというのもある。
「ユキア、今年は里帰り出来なくてごめんね?」
《大丈夫だよ。僕も毎年、アイスワンドに行きたいわけじゃないし。それに僕が孵ったのは此処だしね》
ユキアのことをアイスワンドに今年は連れていけないなというのは気がかりだったけれど、本人は気にしていないみたい。
「ユキアが気にしてないなら良かった。代わりに別の場所で遊ぼうね? ユキアは何処に行きたいとかある?」
わたしがそう言って問いかけると、ユキアは首を振る。
《僕は何処にどういう場所があるかって知らないよ。知識は引き継いでいても、アイスワンドの中だけのことが多いし》
「そっかー。じゃあ、一緒に本読もうよ」
わたしがそう言うとユキアは頷いてくれる。
わたしは書庫で本を探す。
やっぱり新しく行きたい場所について調べるのならば、わたしの本だけじゃ足りない。自分の本のエリアに並べられている本の冊数も増えているけれど、パパがずっと集めてきたものと比べるとくらべものにならないもん。
だからパパが沢山集めている本の中から、わたしの欲しい情報がのっているものを探す。
背が届かない部分にあったものは、魔法で自分の身体を浮かせて取る。
わたしのホムンクルスの身体は少しずつ身長も伸びている。だけれどもまだまだパパとママよりも小さい。
大人になったわたしはどんな姿だろう?
それを想像するとわたしはワクワクした気持ちでいっぱいになる。
だってね、今のわたしはとっても可愛いの。パパがくれたこの身体は可愛くて、どんな服でも似合うんだよ! 元がいいのも当然だけど、わたしも肌がきれいになるようにとかでちゃんと細かく手入れはしている。
大人になったら上の方に並べられている本も魔法を使わずに取れるようになるかな。
「えーと、あとは……」
わたしが本を探している間、ユキアもわたしの知りたい情報が書かれていそうな本を探してくれている。
精霊獣って頭がいいよね。
おしゃべりも出来るし、こうしてわたしのやりたいことを一緒にやってくれるし。
いくつかの本を取って、机の上に置く。
「やっぱり冬に行くなら、その季節だからこそ見ごたえがある場所にいきたいなぁ」
多分、楽しい場所ならどの時期に行ったとしても楽しいとは思う。けれど季節ならではの見れるものがあったり、見ごたえがある場所があったりするもん。
あとは魔物もそうだね。
冬の時期に、その場所だからこそ見れるものに出会いたいよね。
ああ、でも本には書かれていないものもきっと世の中には沢山あるだろうから、何処に行こうか悩むなぁ。
わたしは転移の魔法はまだ使えないから、パパとママの魔法で連れて行ってもらうことにはなるし、何処に行きたいかちゃんと考えておかないとなぁ。まぁ、二人ともわたしが行きたいっていったら全部連れて行ってくれそうだけどね。でも全部行くとちょっと疲れちゃいそうだもん。
「アイスワンドと似たような雰囲気の国も遠くにはあるんだね。ほぼ一緒な感じなのかなー。どうなんだろ?」
《アイスワンドと同じように雪に覆われた場所? 全て一緒ってことはないと思うけれど……。でも似たような暮らししてそうだよね》
「ね。私もそう思う。でも一緒に見えても違うんだろうなーって思うよ。文化とか、そこで暮らしている人とか。本当に沢山の国があるから、どこに行こうかって悩むよね。あとは国じゃなくて、集落とかに住んでいる異種族の人達とかもいるでしょ。パパと交流を持っている人たちには会ったことがあるけれど、それ以外の種族とは会ったことないもん」
わたしはパパとママと一緒にいるからこそ、普通では経験できないことを沢山出来て、それでなかなか会うことが叶わないようない種族の人達と交流があったりする。
だけどそれが全てじゃないんだなっていうのは知っている。
パパとママが交流を持っていない異種族は世の中には沢山いて、わたしが想像が出来ない暮らしをしていたりもきっとする。
うん、わたしはそういう人たちにも沢山あってみたいな。
冬にだけ会える人たちもいたりするのかな?
わたしはそんなことを考えるとワクワクしている。
「ユキアはどういう種族に会ってみたい?」
わたしは本に目を通しながら、ユキアに問いかける。
ユキアは一瞬考え込むような様子を見せる。
《んー。僕と同じような精霊獣とか?》
「精霊獣かぁ。わたしもユキアとユキアを産んだ子しか知らないなぁ。他の精霊獣ってどこで生きているんだろうね? 会えたら確かに会ってみたいかも」
ただ精霊獣は珍しいってパパが言っていた気がする。
わたしとユキアが出会えたのは偶然で、会おうとしてあったわけではない。
他の精霊獣たちは、どこでどんなふうに過ごしているんだろう?
わたしはそんなことを考えながら、精霊獣に関する本もないかと探してみることにする。




