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幕間 悪役令嬢の取り巻きの兄 ⑦

1/1 二話目


 今日は図書館で本を読んでいる。




 ベルラ様を見つけるために役立つ情報がないか、それでいて魔法を上達させるために重要な情報はないか。

 そればかりを考えてそういう本をよく読んでいる。




 相変わらず俺に近寄ってこようとする存在は多い。どれだけ拒否しても、近づいてくるのはどういう神経をしているかはさっぱり分からない。





 どれもこれも――興味を持てるような魂は居ない。

 やっぱりベルラ様の――あの綺麗な色を、俺はずっと追い求めてしまう。ずっと見ていたくて、会いたいとそればかり考えている。

 前に見かけた時も変わらず綺麗な魂だった。ベルラ様はどんな風に喋るのだろうか。どんな声をしているのだろうか。どんな暮らしをしているのだろうか。そういうことをいつも考えている。






 ベルラ様を見つけるには長期戦になるだろうことは覚悟している。それでも会えるなら、早く会いたいとそう思う。

 だから……俺は無意識に焦っていたのかもしれない。





 そんな俺がその本を手に取ったのはたまたまだった。




 この学園を卒業した生徒達の記録がまとめられている本。国内外にもその名を轟かす優秀な魔法学園の卒業生たちの進路などもまとめられているものだ。





 ……学園というのは慈善事業ではない。

 卒業生たちが活躍していくことが、学園の名声を高めることにつながる。俺も、そういうことを求められているだろう。




 最も俺は卒業後はベルラ様を探しに行く気しかないので、学園や教師たちが期待しているような進路を歩むことはないだろう。だってわざわざ就職しながら休みの日にだけベルラ様を探すよりも、常に探している方が効率がよく、会える確率が高まる。

 ヨネダウス先生は俺が歩もうとしている進路を聞いて、呆れては居たが止めるつもりはないようだった。それは俺がその道を歩むことを決めていると分かったからだろう。





 ――ある意味、アルバーノのその子への思いは執着だね。名前も知らず、一度見かけただけでそうとは。会ってみて想像と違ったらどうするんだ?






 そんな風に問いかけられたが、俺はベルラ様がベルラ様であればそれでいいのだ。

 きっとそれは妹であるネネデリアも一緒だろう。

 寧ろ折角会えたならば、思っていたのと違うなどと思うはずがない。想像と違うのならば、それはそれで「これがベルラ様か」と感心するだけだ。俺とネネデリアは正直言って、昔のベルラ・クイシュインの身体にいたベルラ様としか接したことはないのだ。寧ろ今は別の姿になっているベルラ様がそのままであることの方が驚きだろう。あの頃のベルラ様とは違う点もきっとあって、だけど同じ部分もあるだろう。

 そういうのをいつか、俺は知りたい。






 そんなことを考えながら、記録の本をめくる。





 学園からは今や魔法師組合で名を轟かせている存在や王城に仕えている存在など様々な卒業生が居る。

 優秀な生徒たちは、卒業後も輝かしい進路を歩んでいる存在は多い。ただし全員とは言わないが。

 この記録には残されていないけれど、悲惨な目にあった人を噂として知っている。

 例えば平民の優秀な少女が王城仕えになり、貴族達の嫌がらせを受け、精神を病んで田舎に帰ったとか。優秀さ故に驕って、その結果、魔物に殺されてしまっただとか。

 ……そういう結果に至ったとしても、一度進路としてその職についたら学園側では卒業生がついた職として記録には残せる。




 良い教師にあたれば例えばその職に就いた時にどういうことになるかというのまで考えてくれるだろうが……、この学園にもろくでもない教師はいるからな。

 貴族も多く通う学園であるので、貴族当主になっている者も多い。

 基本的に優れた進路以外は大々的に発表はされていないだろう。とはいえ、この記録にはそれ以外の生徒達の記録も沢山残っている。絵姿から進路まで細かく記録してある。

 とある貴族家当主の弟だったり、平民から学園に入学したものだったり――それらのこともあますことなくすべてだ。





 学園の歴史は長く、それはもう膨大な量だが……興味本位で見た。

 たまたま、それを確認したい気分だった。





「……っ」



 そしてページを巡っていた最中に……、俺は一か所の絵姿を見て固まった。





 そこに描かれているのは、真っ白な髪に黄色い瞳の男性。ずっと昔にこの学園を卒業したとされるその男性を……俺は知っていた。





 前に見かけた……ベルラ様と一緒にいた男性だった。

 新しい姿のベルラ様の父親のように見えた男性。




 見かけた姿と差異がない。




 ベルラ様と一緒にいた男性とこの記録本にのっている男性は同一人物なのだろうか? それとも親族? 本人じゃなければここまでそっくりなことがあるのだろうか? 仮に同一人物として年を取っていないということか?

 ベルラ様と一緒にいたからというのもあるが、魔法師としての俺も興味を抱いていた。

 どういうことなのか分からない。






 だけれども――この男性、ディオノレという名が記録されている存在はきっとベルラ様につながる手がかりとなる。



 そう思って俺はそういう年を取らない存在がまずはいるかを調べてみることにするのだった。


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― 新着の感想 ―
おおぉ~お兄さんだんだん近づいていってる
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